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第五十三話 絶体絶命?
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マイネが悪魔と呼んだ存在は、蝙蝠の翼と角を除けば人間と変わらない姿をしていた。
彼? はカズキ達の姿を認めると、煩わしそうに腕を一振りする。
まるで、纏わりつく虫を払うような仕草だった。
ただそれだけの仕草だったのだが、そこから不可視の衝撃波が発生。
彼の周囲に散らばっていた物を一部破壊しながら、カズキ達へと殺到する。
それをカズキは察知し、瞬時に障壁を張ることで皆を護った。
ラクト達が攻撃を受けた事に気付いたのは、カズキが防いだ後の事である。
「ほう、今のを完全に防ぐか。さっきの二人と違い、少しはやるようだな」
悪魔に声を掛けられたカズキは、答えずに三人を振り返った。
「扉に凭れ掛かっている戦士を頼む。辛うじて死んでいないようだから」
三人は恐怖の所為で見落としていたようだが、カズキは気付いていた。
その言葉に我に返った三人は、慌てて戦士の様子を確認する。
戦士が持っている剣は半ばから折れており、左手に装備していたのであろう金属製の盾は、腕ごと砕けて使い物にならなくなっていた。
身に着けているプレートメイルもあちこち変形していて、その身に受けた衝撃の大きさを物語っている。
「さっきの攻撃をまともに喰らうと、彼等のようになる訳ですか・・・。カズキさんがいてくれて助かりましたね」
なんとか恐怖を抑えたマイネが、戦士の様子を見て言った。
「はい。フローネさんの使う【ホーリーシェル】ならば防げるでしょうが・・・」
【ホーリーシェル】とは、高位の司祭にしか使えない、極めて強固な神聖魔法である。
「確かに防げるでしょうが、それだけでは勝てません。魔力が尽きれば終わりですから」
戦士の治療をしながら、フローネがラクトの言葉を引き継ぐ。
悪魔の口振りから、本気を出していないのは明白だからだ。
そんな話をしている間にも、フローネは治療を続ける。
そして、命に別条がない程に持ち直したところで、ラクトとマイネに声を掛けた。
「お待たせしました。もう動かしても大丈夫です。ラクトさん、マイネさん、運ぶのを手伝って下さい」
何故か動かない悪魔の様子を窺いながら、三人は協力して戦士を運ぼうとした。
だが、それをしようとした時に、三人は異変に気付く。
先程まで出入り出来た筈の扉が、いつの間にか通行出来なくなっていたのだ。
カズキがそんな事をする理由はないので、自ずと答えは一つ。
間違いなく悪魔の仕業だろう。
「不味いですね。このままだと、カズキさんの足枷になってしまいます」
「とは言え、カズキが警戒するような相手の攻撃を、僕たちで防ぐのも難しい。・・・フローネさん、魔力はどれ位残っていますか?」
ラクトの問いに、フローネは正直に答えた。
「ほとんど残っていません。簡単な治癒魔法を一回使っただけで、魔力切れで倒れると思います」
それも無理はないと、ラクトは思った。
瀕死の重傷を負った人間を、立て続けに二人癒したのだ。
フローネでなければ、一人も助けられなかったに違いないのだから。
「こうなったら、外に応援を頼みましょう。学院長やソフィア様、エルザさんとクリスさんに連絡して、誰か一人でも来てくれれば・・・」
それまでは一か所に集まって、カズキに悪魔の攻撃を防いでもらう。
四人の内の誰か一人でも来てくれれば、状況を打開出来る筈だとラクトは語った。
問題は、次元ポストでの連絡がこの場所から可能なのか? という事だが、これはもう賭けだった。
それに、一緒に買い物に来ていたカリムが異変に気付き、誰かに連絡してくれる可能性もある。
ラクトの考えにフローネとマイネも賛成し、まずはカズキと合流しようと三人が考えたところで、肝心のカズキの様子がおかしい事に気付く。
悪魔と対峙していたカズキは、その場にしゃがみ込んでいたのだ。
「まさか、既に何らかの攻撃を受けた・・・?」
後ろ姿なので定かではないが、カズキは肩で息をしているように見えた。
三人は意を決して、カズキの傍へ向かうことにした。
もしカズキが戦闘不能状態に陥っていたならば、自分たちが助かる可能性は無い。
ならば、カズキが動ける事に期待して、近くにいた方が良いと判断したのだ。
戦士を三人で抱えて、悪魔を警戒しながらカズキの元へと辿り着くと、カズキがしゃがみ込んでいた理由が分かった。
彼は、ナンシーとクレアにチOオちゅーるを与えていたのである。
肩で息をしているように見えたのは、ペーストを絞り出す作業を錯覚しただけだった。
「「「「・・・・・・」」」
三人は目の前の光景に、抱えている戦士を取り落としそうになる。
そんな様子を気にも留めないカズキは、優しい表情で二匹にチOオちゅーるを与えていた。
「「ミャー」」
程なくチOオちゅーるを完食した二匹は、物欲しげな顔? をして追加を催促する。
応じるのかと思われたカズキは、しかし心苦しい表情で首を振った。
「ごめんな。もっとあげたいのは山々だけど、おやつを食べ過ぎると晩御飯が食べられなくなっちゃうだろ?」
子供を持つ親のような顔でそう言って、カズキは二匹を撫でる。
そして立ち上がり、漸くラクト達三人に目を向けた。
彼? はカズキ達の姿を認めると、煩わしそうに腕を一振りする。
まるで、纏わりつく虫を払うような仕草だった。
ただそれだけの仕草だったのだが、そこから不可視の衝撃波が発生。
彼の周囲に散らばっていた物を一部破壊しながら、カズキ達へと殺到する。
それをカズキは察知し、瞬時に障壁を張ることで皆を護った。
ラクト達が攻撃を受けた事に気付いたのは、カズキが防いだ後の事である。
「ほう、今のを完全に防ぐか。さっきの二人と違い、少しはやるようだな」
悪魔に声を掛けられたカズキは、答えずに三人を振り返った。
「扉に凭れ掛かっている戦士を頼む。辛うじて死んでいないようだから」
三人は恐怖の所為で見落としていたようだが、カズキは気付いていた。
その言葉に我に返った三人は、慌てて戦士の様子を確認する。
戦士が持っている剣は半ばから折れており、左手に装備していたのであろう金属製の盾は、腕ごと砕けて使い物にならなくなっていた。
身に着けているプレートメイルもあちこち変形していて、その身に受けた衝撃の大きさを物語っている。
「さっきの攻撃をまともに喰らうと、彼等のようになる訳ですか・・・。カズキさんがいてくれて助かりましたね」
なんとか恐怖を抑えたマイネが、戦士の様子を見て言った。
「はい。フローネさんの使う【ホーリーシェル】ならば防げるでしょうが・・・」
【ホーリーシェル】とは、高位の司祭にしか使えない、極めて強固な神聖魔法である。
「確かに防げるでしょうが、それだけでは勝てません。魔力が尽きれば終わりですから」
戦士の治療をしながら、フローネがラクトの言葉を引き継ぐ。
悪魔の口振りから、本気を出していないのは明白だからだ。
そんな話をしている間にも、フローネは治療を続ける。
そして、命に別条がない程に持ち直したところで、ラクトとマイネに声を掛けた。
「お待たせしました。もう動かしても大丈夫です。ラクトさん、マイネさん、運ぶのを手伝って下さい」
何故か動かない悪魔の様子を窺いながら、三人は協力して戦士を運ぼうとした。
だが、それをしようとした時に、三人は異変に気付く。
先程まで出入り出来た筈の扉が、いつの間にか通行出来なくなっていたのだ。
カズキがそんな事をする理由はないので、自ずと答えは一つ。
間違いなく悪魔の仕業だろう。
「不味いですね。このままだと、カズキさんの足枷になってしまいます」
「とは言え、カズキが警戒するような相手の攻撃を、僕たちで防ぐのも難しい。・・・フローネさん、魔力はどれ位残っていますか?」
ラクトの問いに、フローネは正直に答えた。
「ほとんど残っていません。簡単な治癒魔法を一回使っただけで、魔力切れで倒れると思います」
それも無理はないと、ラクトは思った。
瀕死の重傷を負った人間を、立て続けに二人癒したのだ。
フローネでなければ、一人も助けられなかったに違いないのだから。
「こうなったら、外に応援を頼みましょう。学院長やソフィア様、エルザさんとクリスさんに連絡して、誰か一人でも来てくれれば・・・」
それまでは一か所に集まって、カズキに悪魔の攻撃を防いでもらう。
四人の内の誰か一人でも来てくれれば、状況を打開出来る筈だとラクトは語った。
問題は、次元ポストでの連絡がこの場所から可能なのか? という事だが、これはもう賭けだった。
それに、一緒に買い物に来ていたカリムが異変に気付き、誰かに連絡してくれる可能性もある。
ラクトの考えにフローネとマイネも賛成し、まずはカズキと合流しようと三人が考えたところで、肝心のカズキの様子がおかしい事に気付く。
悪魔と対峙していたカズキは、その場にしゃがみ込んでいたのだ。
「まさか、既に何らかの攻撃を受けた・・・?」
後ろ姿なので定かではないが、カズキは肩で息をしているように見えた。
三人は意を決して、カズキの傍へ向かうことにした。
もしカズキが戦闘不能状態に陥っていたならば、自分たちが助かる可能性は無い。
ならば、カズキが動ける事に期待して、近くにいた方が良いと判断したのだ。
戦士を三人で抱えて、悪魔を警戒しながらカズキの元へと辿り着くと、カズキがしゃがみ込んでいた理由が分かった。
彼は、ナンシーとクレアにチOオちゅーるを与えていたのである。
肩で息をしているように見えたのは、ペーストを絞り出す作業を錯覚しただけだった。
「「「「・・・・・・」」」
三人は目の前の光景に、抱えている戦士を取り落としそうになる。
そんな様子を気にも留めないカズキは、優しい表情で二匹にチOオちゅーるを与えていた。
「「ミャー」」
程なくチOオちゅーるを完食した二匹は、物欲しげな顔? をして追加を催促する。
応じるのかと思われたカズキは、しかし心苦しい表情で首を振った。
「ごめんな。もっとあげたいのは山々だけど、おやつを食べ過ぎると晩御飯が食べられなくなっちゃうだろ?」
子供を持つ親のような顔でそう言って、カズキは二匹を撫でる。
そして立ち上がり、漸くラクト達三人に目を向けた。
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