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第二部
かがみのなか
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⚠︎閲覧自己責任・性的描写あり
ーーゆきがまた、我が家に泊まりに来た。
今日は、よしのさんのお気に入り、高級洋菓子店のチョコレートケーキを手土産に持って。
よしのさんは、それを見て目を輝かせて喜んだ。
以前よりも、ゆきが我が家に来訪する数が増えた気がする。
あからさまな打算に、ぼくの中で何かが冷める感覚がした。
大人って、皆、こうなのかな? って、思う。
よしのさんが薬を飲むと、副作用で記憶が飛ぶ事は、予め、ゆきには伝えた。
よしのさんの睡眠障害の件を話したら、ゆきは珍しく顔色を変えて、よしのさんを心配していた。
そして、寝付いて、深夜頃の二人のひそひそと話す声によって、目が覚めるぼく。
♡
「ぁ……ゆきちゃん……キス、したい」
「どう……したの? ……よしのねえさん?」
若干、戸惑うゆき。よしのさんは、ゆきに顔を近付ける。ゆきは目を丸くした。薄暗い部屋で、一連の二人の動作は全身鏡に映っている。
「……んっ……ふっ……んンっ……」
「……はっ……本当、どうしたの……? よしのねえさんからキスして来るなんて、珍しいね……」
「……私……ゆきちゃんと……えっち、したい」
「ーー今から?」
「……ぅん」
恥ずかしそうなよしのさんの声が聞こえて来る。ゆきは、きょとんとしている。それはそうだ。ーー薬服用時のよしのさんを見るのは初めてなのだから。
「今日は、何で、そんなに素直なの……?」
「お願いぃ……お願いっ……ゆきちゃんっ……ふっんっ」
何度も強請るよしのさんに、ゆきは優しい深い深い口付けをした。ぼくは、息を殺して、冷めた目で二人を静観する。鏡越しから。
「はっ……お薬を飲むと、えっちな気持ちになるのかな?」
「分かんないのっ……ただ、私、寂しくて……いつも、台所で一人で、シても、つ、辛くて」
「ーー何で台所なの?」
「ゆきちゃんといつも、そこで、えっち、するから……。ーーいつも、鮮明に、思い出せるから……」
「ーーかすかが帰って来たら、驚くと思うよ?」
「大、丈夫……お仕事が早帰りの時の昼間に……シてるから」
「ふうん……。いけない事をするのが好きですね。……よしのねえさんは、えっちですね」
「……ご、ごめんなさいっ……」
数十分後、二人は睦み合い、ゆきが衣服を乱すと、仰向けのよしのさんの上に覆い被さった。布擦れの音と水音と艶かしい吐息の音が聞こえて来る。ーーそして、ゆきは、よしのさんの足の間に、そそり立つ自分の男性器を。ーー勢い良く、さした。
「あっ……ゆきちゃっ……んぁぁぁっ」
「……はっ……よしのねえさん、体温、高い……」
「あっ……気持ちイイよぉ……」
「だから、何で今日はそんなに素直なの……っ?」
「だ、だって……ゆきちゃんのっ……一週間振りなんだもんっ……」
我が家に来る度に、ぼくが寝静まると、いつも、二人は睦み合う。この狭いボロアパートで。お互いの愛を確かめ合うみたいに、互いの体を求め合って、ひたすらに、ただただ、貪る。貪り続ける。
ーー大人は、皆、こういう事をするのが、普通で。当たり前なのだろうか? と思う。
だけど、今日はよしのさんの理性のストッパーが外れているからなのか、いつもよりも行為は過激な方で、ぼくの情欲は煽られた。
何かの本で読んだ事があるのだけれど、女性はシチュエーションで性的に興奮を覚え、男性は視覚で性的興奮を覚えるらしい。そんなどうでもいい事を頭の片隅で思い出すぼく。
ぼくは、とうの昔に、下半身は反応していて、じんじんと熱くて、苦しくて、痛かった。ーーだけど、下半身には触れなかった。
気が付けば、夜明けになっていて、窓のカーテンの隙間からは朝の光が入って来る。
♡
「ーーあ、ゴミ出し忘れてたっ! ちょっとゴミ出しに行って来るね。二人共、先に食べててっ」
「はーい」
朝の食卓。今日は和食だった。定番の献立で。よしのさんは、パタパタとスリッパの足音を立てて、玄関の扉を閉めて、ゴミステーションへと去って行った。
唐突にゆきと二人きりになる。寡黙なぼくに、ゆきは「ーー先に食べてよっか。かすか」と微笑む。ーー昨晩の事なんて何もなかったかのようにゆきは涼しい顔で平然としていた。
「ーー頂きます」
「頂きまーす……。ーーかすかはいいね。いつも、お母さんの手料理が食べられて。お母さん、料理上手だろう?」
「はい」
「一通り、何でも作れるものね。よしのねえさん。本当に、家庭的な人だなあと思うよ。僕。……ふふ」
「……はい」
ぼくは、手を合わした後、味噌汁のお椀を啜って俯く。何となく、やっぱり、気不味くて、ゆきと話すのが。いたたまれない気持ちになってしまう、ぼく。
そうして、唐突にぽつりと呟くように淡々と言ったゆきの次の言葉に、ぼくは、顔を真っ赤にさせられる事になる。
「ーー昨晩は、うるさかったろう?」
「ーーっ!!?」
「ごめんね。ーー寝られなかったかな? と思って」
「い、いえ……」
羞恥心で一杯となり、やっと言えたのは、その言葉だけだった。ぼくは、目を伏せて、心の中である事を呟く。ゆきとどうしても目を合わせる事が出来なかった。
ーーやっぱり、ゆきって、変態だ……っ。
心の底から、そうツッコミを入れながら、黙々と朝ごはんを食べるけど、味はしなかった。数分後、綺麗さっぱり忘れているであろう、よしのさんが変わらずの笑顔で戻って来た。
ーーゆきがまた、我が家に泊まりに来た。
今日は、よしのさんのお気に入り、高級洋菓子店のチョコレートケーキを手土産に持って。
よしのさんは、それを見て目を輝かせて喜んだ。
以前よりも、ゆきが我が家に来訪する数が増えた気がする。
あからさまな打算に、ぼくの中で何かが冷める感覚がした。
大人って、皆、こうなのかな? って、思う。
よしのさんが薬を飲むと、副作用で記憶が飛ぶ事は、予め、ゆきには伝えた。
よしのさんの睡眠障害の件を話したら、ゆきは珍しく顔色を変えて、よしのさんを心配していた。
そして、寝付いて、深夜頃の二人のひそひそと話す声によって、目が覚めるぼく。
♡
「ぁ……ゆきちゃん……キス、したい」
「どう……したの? ……よしのねえさん?」
若干、戸惑うゆき。よしのさんは、ゆきに顔を近付ける。ゆきは目を丸くした。薄暗い部屋で、一連の二人の動作は全身鏡に映っている。
「……んっ……ふっ……んンっ……」
「……はっ……本当、どうしたの……? よしのねえさんからキスして来るなんて、珍しいね……」
「……私……ゆきちゃんと……えっち、したい」
「ーー今から?」
「……ぅん」
恥ずかしそうなよしのさんの声が聞こえて来る。ゆきは、きょとんとしている。それはそうだ。ーー薬服用時のよしのさんを見るのは初めてなのだから。
「今日は、何で、そんなに素直なの……?」
「お願いぃ……お願いっ……ゆきちゃんっ……ふっんっ」
何度も強請るよしのさんに、ゆきは優しい深い深い口付けをした。ぼくは、息を殺して、冷めた目で二人を静観する。鏡越しから。
「はっ……お薬を飲むと、えっちな気持ちになるのかな?」
「分かんないのっ……ただ、私、寂しくて……いつも、台所で一人で、シても、つ、辛くて」
「ーー何で台所なの?」
「ゆきちゃんといつも、そこで、えっち、するから……。ーーいつも、鮮明に、思い出せるから……」
「ーーかすかが帰って来たら、驚くと思うよ?」
「大、丈夫……お仕事が早帰りの時の昼間に……シてるから」
「ふうん……。いけない事をするのが好きですね。……よしのねえさんは、えっちですね」
「……ご、ごめんなさいっ……」
数十分後、二人は睦み合い、ゆきが衣服を乱すと、仰向けのよしのさんの上に覆い被さった。布擦れの音と水音と艶かしい吐息の音が聞こえて来る。ーーそして、ゆきは、よしのさんの足の間に、そそり立つ自分の男性器を。ーー勢い良く、さした。
「あっ……ゆきちゃっ……んぁぁぁっ」
「……はっ……よしのねえさん、体温、高い……」
「あっ……気持ちイイよぉ……」
「だから、何で今日はそんなに素直なの……っ?」
「だ、だって……ゆきちゃんのっ……一週間振りなんだもんっ……」
我が家に来る度に、ぼくが寝静まると、いつも、二人は睦み合う。この狭いボロアパートで。お互いの愛を確かめ合うみたいに、互いの体を求め合って、ひたすらに、ただただ、貪る。貪り続ける。
ーー大人は、皆、こういう事をするのが、普通で。当たり前なのだろうか? と思う。
だけど、今日はよしのさんの理性のストッパーが外れているからなのか、いつもよりも行為は過激な方で、ぼくの情欲は煽られた。
何かの本で読んだ事があるのだけれど、女性はシチュエーションで性的に興奮を覚え、男性は視覚で性的興奮を覚えるらしい。そんなどうでもいい事を頭の片隅で思い出すぼく。
ぼくは、とうの昔に、下半身は反応していて、じんじんと熱くて、苦しくて、痛かった。ーーだけど、下半身には触れなかった。
気が付けば、夜明けになっていて、窓のカーテンの隙間からは朝の光が入って来る。
♡
「ーーあ、ゴミ出し忘れてたっ! ちょっとゴミ出しに行って来るね。二人共、先に食べててっ」
「はーい」
朝の食卓。今日は和食だった。定番の献立で。よしのさんは、パタパタとスリッパの足音を立てて、玄関の扉を閉めて、ゴミステーションへと去って行った。
唐突にゆきと二人きりになる。寡黙なぼくに、ゆきは「ーー先に食べてよっか。かすか」と微笑む。ーー昨晩の事なんて何もなかったかのようにゆきは涼しい顔で平然としていた。
「ーー頂きます」
「頂きまーす……。ーーかすかはいいね。いつも、お母さんの手料理が食べられて。お母さん、料理上手だろう?」
「はい」
「一通り、何でも作れるものね。よしのねえさん。本当に、家庭的な人だなあと思うよ。僕。……ふふ」
「……はい」
ぼくは、手を合わした後、味噌汁のお椀を啜って俯く。何となく、やっぱり、気不味くて、ゆきと話すのが。いたたまれない気持ちになってしまう、ぼく。
そうして、唐突にぽつりと呟くように淡々と言ったゆきの次の言葉に、ぼくは、顔を真っ赤にさせられる事になる。
「ーー昨晩は、うるさかったろう?」
「ーーっ!!?」
「ごめんね。ーー寝られなかったかな? と思って」
「い、いえ……」
羞恥心で一杯となり、やっと言えたのは、その言葉だけだった。ぼくは、目を伏せて、心の中である事を呟く。ゆきとどうしても目を合わせる事が出来なかった。
ーーやっぱり、ゆきって、変態だ……っ。
心の底から、そうツッコミを入れながら、黙々と朝ごはんを食べるけど、味はしなかった。数分後、綺麗さっぱり忘れているであろう、よしのさんが変わらずの笑顔で戻って来た。
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