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第四部
たばことこころ
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⚠︎閲覧自己責任・性的描写あり
「ーー乗馬したら、女に乗りたくなっちゃったー」
仕事の付き合いである、乗馬から帰宅した主人、ゆき。いつも通りの爽やかな笑みを浮かべて淡々と語る。ゆきの提案で、ゆきが女と寝る前に皆で唐突に会食をする事となった。ちなみに、この広い屋敷には、和室もあるのだ。
ぼくとあおなは、ゆきに和室へと呼び出しを食らったのだった。
♡
遅れて和室に着いたぼく。室内は、津軽三味線の静かな音楽が流れていた。広いテーブル一杯には、もう豪華な中華料理が並べられている。座敷には、ゆきの他に、ゆきの友人であるジャムとルキが座っている。ゆきの隣に座るあおなは、何故かアイマスクで目隠しをされていた。
「ーーあ、かすか。もう料理、運ばせたから。好きに食べてて。お酒は飲むかい?」
「ぼくは、烏龍茶でいいです」
ゆきから手渡された烏龍茶を飲む。あおなも烏龍茶を飲んでいた事から、自分のコップには特に何も怪しい物は入ってはいないだろうと判断した。ジャムとルキは、仕事の話をしながら酒を飲んでいる。
「ーーマリア。これ何か分かるかい?」
「えっと……麻婆豆腐、ですか?」
「正解」
どうやらゆきの気紛れであおなは、中華料理の名前を当てるクイズに付き合わされているようだった。ルキは、子機の無線で使用人に追加の酒を頼む。
ぼくは、無言で手近にある中華料理を箸で口に運んだ。
♡
「ーーお、さんきゅ。追加の酒か?」
「あ、ルキ。俺にも酒、ついでくれ」
「は? 自分でやれよ」
ルキとジャムが話す中、ぼくは、黙って烏龍茶のコップを持ちながら窓の外をぼんやりと眺めていた。夜空には綺麗な星と月が散りばめられている。今日の月は綺麗な三日月だった。
「ーーあ、かすか。そこにある、小皿取ってくれないかい?」
「……はい」
ぼくは、ゆきの問い掛けに返事をして、烏龍茶を口に含みながら、手元にある小皿をゆきに手渡そうとした。
そしてーー振り返った先には、胸元がざっくりと開いた露出の激しいチャイナドレス姿のえりかが恥ずかしそうに立っていた。
どうやら、ルキの注文した追加の酒を運びに来たようで。
チャイナドレスの短いスリットから覗く白い太腿を見て、明らかにえりかは、何も下に履かされていない事に気付く、ぼく。
気付けば、反射的に、窓硝子に向かって、盛大に口に含んでいた烏龍茶を吹き出してしまった。
「ーーな、何……!?」
器官に入り掛けた烏龍茶に噎せる中、何も見えていないあおなの動揺する声が聞こえて来る。ゆきは、微笑んでいて、ジャムは目を丸くし、ルキは涼しい顔で酒を飲んでいた。
「ーー大丈夫かい? かすか。どうしたの?」
「…………い、いえ。特に。な……何でもありません……っ」
えりかは、恥じらいながら、ぼくに対して気遣うような視線を投げ掛けていたが、もうぼくはえりかに目を合わせようとはしなかった。
♡
会食が終わり、ゆきはルキとジャムと一緒に夜の女遊びへと繰り出して行った。今日のゆきはあおなの気分じゃなくて、別の女の上に乗りたい気分だったらしく、ぼくとあおなは早々に珍しく解放された。
ぼくは、バルコニーに出て、煙草を吸っていた。普段は吸わないが、何となく、むしゃくしゃしたので煙草を吸いたくなったのだ。煙草の煙を深く深く吸い込み、ゆっくりと吐くと煙は、空へと溶け込み、消えて行く。
「ーーあれ? ノルン。珍しいね。バルコニーにいるの」
振り返ると、あおなが意外そうな顔をして立っていた。あおなの手元には、星座の本がある。バルコニーで星空を見に来たのだろうと思った。ぼくは、煙草を吸いながらあおなの呼び掛けを無視した。そんなあおなは、ぼくの顔を伺って来る。
「ねね。ノルン」
「ーー何ですか……?」
気安く話し掛けて来るあおなに対して、学習しない、しつこい女だなと思った。内心、あおなに苛立ちを覚えながら、平静を装って返答するぼく。
「……ノルンってさ。ーー好きな人いるの?」
「ーーは?」
あおなの脈絡のない話題に意味が分からなくて、素っ気なく答えた。あおなは、ぼくを見上げて、世間話をする。機嫌が悪いぼくに対して、必死に話題を探しているようだった。
「いや、ノルンからそういう類いの話、聞かないから。そもそも女の子に興味あるのかな? って」
ーー心の底から余計なお世話だ。ぼくは、ノンケだ。男になど、これっぽっちも興味はない。
ぼくは、吸い終わった煙草の火を携帯灰皿で消して、吸殻を仕舞う。黙って踵を返してバルコニーから去ろうとする。あおなは、そんなぼくを見て、追い掛けるように声を掛けて来た。
「……もう行っちゃうの? ノルン、ねえ。ーーあのさ」
「……だから、何ですか?」
「何で、さっき、食事中に烏龍茶吹き出したの?」
「ーー別に。……思い出し笑いしただけです」
あおなの純粋な疑問に、ぼくは、適当に取ってつけた返答をして、バルコニーから去った。
「ーー乗馬したら、女に乗りたくなっちゃったー」
仕事の付き合いである、乗馬から帰宅した主人、ゆき。いつも通りの爽やかな笑みを浮かべて淡々と語る。ゆきの提案で、ゆきが女と寝る前に皆で唐突に会食をする事となった。ちなみに、この広い屋敷には、和室もあるのだ。
ぼくとあおなは、ゆきに和室へと呼び出しを食らったのだった。
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遅れて和室に着いたぼく。室内は、津軽三味線の静かな音楽が流れていた。広いテーブル一杯には、もう豪華な中華料理が並べられている。座敷には、ゆきの他に、ゆきの友人であるジャムとルキが座っている。ゆきの隣に座るあおなは、何故かアイマスクで目隠しをされていた。
「ーーあ、かすか。もう料理、運ばせたから。好きに食べてて。お酒は飲むかい?」
「ぼくは、烏龍茶でいいです」
ゆきから手渡された烏龍茶を飲む。あおなも烏龍茶を飲んでいた事から、自分のコップには特に何も怪しい物は入ってはいないだろうと判断した。ジャムとルキは、仕事の話をしながら酒を飲んでいる。
「ーーマリア。これ何か分かるかい?」
「えっと……麻婆豆腐、ですか?」
「正解」
どうやらゆきの気紛れであおなは、中華料理の名前を当てるクイズに付き合わされているようだった。ルキは、子機の無線で使用人に追加の酒を頼む。
ぼくは、無言で手近にある中華料理を箸で口に運んだ。
♡
「ーーお、さんきゅ。追加の酒か?」
「あ、ルキ。俺にも酒、ついでくれ」
「は? 自分でやれよ」
ルキとジャムが話す中、ぼくは、黙って烏龍茶のコップを持ちながら窓の外をぼんやりと眺めていた。夜空には綺麗な星と月が散りばめられている。今日の月は綺麗な三日月だった。
「ーーあ、かすか。そこにある、小皿取ってくれないかい?」
「……はい」
ぼくは、ゆきの問い掛けに返事をして、烏龍茶を口に含みながら、手元にある小皿をゆきに手渡そうとした。
そしてーー振り返った先には、胸元がざっくりと開いた露出の激しいチャイナドレス姿のえりかが恥ずかしそうに立っていた。
どうやら、ルキの注文した追加の酒を運びに来たようで。
チャイナドレスの短いスリットから覗く白い太腿を見て、明らかにえりかは、何も下に履かされていない事に気付く、ぼく。
気付けば、反射的に、窓硝子に向かって、盛大に口に含んでいた烏龍茶を吹き出してしまった。
「ーーな、何……!?」
器官に入り掛けた烏龍茶に噎せる中、何も見えていないあおなの動揺する声が聞こえて来る。ゆきは、微笑んでいて、ジャムは目を丸くし、ルキは涼しい顔で酒を飲んでいた。
「ーー大丈夫かい? かすか。どうしたの?」
「…………い、いえ。特に。な……何でもありません……っ」
えりかは、恥じらいながら、ぼくに対して気遣うような視線を投げ掛けていたが、もうぼくはえりかに目を合わせようとはしなかった。
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会食が終わり、ゆきはルキとジャムと一緒に夜の女遊びへと繰り出して行った。今日のゆきはあおなの気分じゃなくて、別の女の上に乗りたい気分だったらしく、ぼくとあおなは早々に珍しく解放された。
ぼくは、バルコニーに出て、煙草を吸っていた。普段は吸わないが、何となく、むしゃくしゃしたので煙草を吸いたくなったのだ。煙草の煙を深く深く吸い込み、ゆっくりと吐くと煙は、空へと溶け込み、消えて行く。
「ーーあれ? ノルン。珍しいね。バルコニーにいるの」
振り返ると、あおなが意外そうな顔をして立っていた。あおなの手元には、星座の本がある。バルコニーで星空を見に来たのだろうと思った。ぼくは、煙草を吸いながらあおなの呼び掛けを無視した。そんなあおなは、ぼくの顔を伺って来る。
「ねね。ノルン」
「ーー何ですか……?」
気安く話し掛けて来るあおなに対して、学習しない、しつこい女だなと思った。内心、あおなに苛立ちを覚えながら、平静を装って返答するぼく。
「……ノルンってさ。ーー好きな人いるの?」
「ーーは?」
あおなの脈絡のない話題に意味が分からなくて、素っ気なく答えた。あおなは、ぼくを見上げて、世間話をする。機嫌が悪いぼくに対して、必死に話題を探しているようだった。
「いや、ノルンからそういう類いの話、聞かないから。そもそも女の子に興味あるのかな? って」
ーー心の底から余計なお世話だ。ぼくは、ノンケだ。男になど、これっぽっちも興味はない。
ぼくは、吸い終わった煙草の火を携帯灰皿で消して、吸殻を仕舞う。黙って踵を返してバルコニーから去ろうとする。あおなは、そんなぼくを見て、追い掛けるように声を掛けて来た。
「……もう行っちゃうの? ノルン、ねえ。ーーあのさ」
「……だから、何ですか?」
「何で、さっき、食事中に烏龍茶吹き出したの?」
「ーー別に。……思い出し笑いしただけです」
あおなの純粋な疑問に、ぼくは、適当に取ってつけた返答をして、バルコニーから去った。
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