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第四部
なのかかん
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⚠︎閲覧自己責任・性的描写あり
時々、私は、お客様のゆき様に買われる。
お仕事の付き合いで此処へ訪れるゆき様。だけど、ゆき様は気紛れな人で、「ーーお酒を注いで、話相手になってくれないかい?」と言い、私を抱く事はなかった。
そして、ある日。和室の一室でゆき様と布団で添い寝をしていると、思い付いた風にゆき様は、こう提案した。
「ーーアゲハ。ちょっとお願いがあるんだ。頼まれてくれないかな?」
「ーー何でしょう? ゆき様」
ゆき様からの頼み事なんてとても珍しいと思った。
「ーー出張で仕事って出来るかい?」
「はい」
「一週間、ちょっと家に仕事で来てくれないかな? 夜のお世話をして欲しい子がいるんだけど」
♡
そう言われて訪れた先、ゆき様の実家は豪邸だった。ついつい、滅多に外へ出ない私は、そのお屋敷を見上げてしまう。
そして、私はゆき様にある人を紹介される。
「この子は、かすかと言うんだ。ーーかすか、アゲハさんにご挨拶して」
「……かすかと言います。はじめ、まして」
たどたどしく挨拶をして会釈する身なりのいい男の子、かすか様は無感情な瞳でぼんやりと私を見上げる。
ーーえ……? ーー夜のお世話をして欲しい子って、この子の事?
私は面を食らってしまった。年齢は十歳だと聞く。事情があり、小学校には行けてないらしい。
「かすか。ーー今日から一週間。別室で彼女と暮らしてごらん?」
「分かりました……」
「よ、よろしくお願いします。かすか様」
「はい……」
かすか様は、綺麗な可愛いらしい男の子だった。ゆき様の後を付いて行く仕草も、アヒルの子みたいで可愛いと純粋に思った。ゆき様はどういう意図でこの子を私に預けたのだろうと思う。
♡
かすか様は、常にぼーっとしていた。何処か疲れている様子で何もせず、食欲もないのか、余り食べる事もせず、眠っても、夢で魘される事が多いみたいで、何度も目が覚めている様子だった。
「かすか様。お湯、熱くないですか……?」
「大丈夫です……」
二人で温泉に浸かっていると、寝不足のかすか様は、うとうとと船を漕いでいる。私は、かすか様の肩に手でお湯をかけてあげた。私に凭れるように、湯船に浸かっている。
「……かすか様? あれ? 寝ちゃったかな……?」
私は、かすか様の頭を優しく撫でた。汗で張り付いた前髪を払ってあげる。規則正しい寝息が聞こえて来た。どうやら、お風呂が気持ち良くて眠ってしまったらしい。寝不足だろうし、もう少し寝かしてから、かすか様を抱き上げてそっとお風呂から出ようと思った。
「お……さん」
「……え?」
「……おかあ……さん」
ぽつりとした寝言だった。私は、かすか様を抱っこすると、お風呂場を出てタオルでかすか様の体を拭き、パジャマに着替えさせて、ベッドへそっと寝かした。
同じベッドで添い寝をしながら、かすか様の寝顔を眺める。今日は、余り起きないなと思う。すると、かすか様は、顔を歪めた。
「うっ……ひっ……ひっく……ううううううぅっ」
「よしよし。……大丈夫ですよ。……かすか様」
また夢で魘されているなと思った。一定のリズムでぽんぽんとかすか様の胸を軽く叩く。暫くすると、また規則正しい寝息が聞こえて来た。
♡
翌日の夜。かすか様は憂いを帯びている表情でベッドの上に座って窓の外を眺めていた。私は、ベッドの上に座ると服を自然な所作で脱いだ。私を見るなり、かすか様もパジャマを静かに脱いで行く。
ベッドの中で裸同士で添い寝をする。かすか様は、私と寝る事に気が乗らないようだった。何だか全てを諦めているようで、辛そうだった。
「……今日はしないんですか?」
「かすか様はしたいですか?」
「………………はい」
「……無理を為さらなくていいんですよ? かすか様」
「しないと、アゲハさんがあの人に叱られてしまいますから。……します」
「……」
そのかすか様の言葉に言葉を失ってしまう。プライベートの事情を深く聞くつもりはないが。ーー可笑しいと思う私。だけど、雇われている立場上、ゆき様にかすか様の事を追求する事は出来ない。
♡
「……ふっ……んっ……んっ」
舌を絡める水音が響く音が辺りに響く。私からかすか様に口付けると、かすか様は大人しく私の入れた舌に自分の舌を絡めて来た。かすか様は、キスをすると感じるようで、唇を離すと、かすか様は、気まずそうで赤面しながら俯く。
「あの……」
「はい?」
「キスは……しなくて、いいです」
♡
かすか様を仰向けにベッドに寝かせて、騎乗位の体制で私はかすか様のものをいれた。一つになって、私が腰を動かした。かすか様は、何も言わずに吐息を漏らして天井を見上げている。
「ーーかすか様? 気持ちいいですか? 痛かったら言って下さいね」
「……んっ……はい……」
涙混じりの声で体を揺すぶられているかすか様。私も私で吐息が乱れて来る。
「……気持ち……良く、ないですか? かすか様?」
「……んっ……んっ……はっ……ぽかぽかします」
「……え?」
ぽろぽろと涙を零しながら、かすか様は、ぽつりと呟いた。私は目を丸くしてしまう。
「あっ……アゲハさっ……抜いて下さ……っ」
「かすか様、果てそうですか?」
「……は、い」
そう言うと、数秒後、かすか様は私の中で静かに果てた。
♡
「ありがとう。アゲハ。ーー報酬は弾んでおくよ」
「はい。お世話になりました」
あっという間の七日間だった。ゆき様に微笑みながらお礼を言われ、私は頭を深々と下げる。
「ーー送迎車を呼ぶから、ちょっと客間で待っててくれるかい?」
「はい」
かすか様は、まだお部屋で眠っている頃合だろう。起こすのも悪かったので黙って出て来た。
数十分後、かたおかさんに呼ばれて、私は客間を後にし、送迎車に乗った。
いつもいつも、寂しそうなかすか様が気掛かりだった。私には何もしてあげられる事は出来ないけど。
たったの七日間だったけれど、かすか様は、大人しくていい子な男の子だった。
未だにゆき様が、何故、あの子の世話を私に任せたのかが分からない。
もうかすか様とは会えないだろうと漠然的に思う。
私は、かすか様の憂いを取り除いてあげられる事は出来ない。ーーだから、彼の幸せを願う事しか出来なかった。
そう思いながら、窓の外の景色を静かに眺めた。
時々、私は、お客様のゆき様に買われる。
お仕事の付き合いで此処へ訪れるゆき様。だけど、ゆき様は気紛れな人で、「ーーお酒を注いで、話相手になってくれないかい?」と言い、私を抱く事はなかった。
そして、ある日。和室の一室でゆき様と布団で添い寝をしていると、思い付いた風にゆき様は、こう提案した。
「ーーアゲハ。ちょっとお願いがあるんだ。頼まれてくれないかな?」
「ーー何でしょう? ゆき様」
ゆき様からの頼み事なんてとても珍しいと思った。
「ーー出張で仕事って出来るかい?」
「はい」
「一週間、ちょっと家に仕事で来てくれないかな? 夜のお世話をして欲しい子がいるんだけど」
♡
そう言われて訪れた先、ゆき様の実家は豪邸だった。ついつい、滅多に外へ出ない私は、そのお屋敷を見上げてしまう。
そして、私はゆき様にある人を紹介される。
「この子は、かすかと言うんだ。ーーかすか、アゲハさんにご挨拶して」
「……かすかと言います。はじめ、まして」
たどたどしく挨拶をして会釈する身なりのいい男の子、かすか様は無感情な瞳でぼんやりと私を見上げる。
ーーえ……? ーー夜のお世話をして欲しい子って、この子の事?
私は面を食らってしまった。年齢は十歳だと聞く。事情があり、小学校には行けてないらしい。
「かすか。ーー今日から一週間。別室で彼女と暮らしてごらん?」
「分かりました……」
「よ、よろしくお願いします。かすか様」
「はい……」
かすか様は、綺麗な可愛いらしい男の子だった。ゆき様の後を付いて行く仕草も、アヒルの子みたいで可愛いと純粋に思った。ゆき様はどういう意図でこの子を私に預けたのだろうと思う。
♡
かすか様は、常にぼーっとしていた。何処か疲れている様子で何もせず、食欲もないのか、余り食べる事もせず、眠っても、夢で魘される事が多いみたいで、何度も目が覚めている様子だった。
「かすか様。お湯、熱くないですか……?」
「大丈夫です……」
二人で温泉に浸かっていると、寝不足のかすか様は、うとうとと船を漕いでいる。私は、かすか様の肩に手でお湯をかけてあげた。私に凭れるように、湯船に浸かっている。
「……かすか様? あれ? 寝ちゃったかな……?」
私は、かすか様の頭を優しく撫でた。汗で張り付いた前髪を払ってあげる。規則正しい寝息が聞こえて来た。どうやら、お風呂が気持ち良くて眠ってしまったらしい。寝不足だろうし、もう少し寝かしてから、かすか様を抱き上げてそっとお風呂から出ようと思った。
「お……さん」
「……え?」
「……おかあ……さん」
ぽつりとした寝言だった。私は、かすか様を抱っこすると、お風呂場を出てタオルでかすか様の体を拭き、パジャマに着替えさせて、ベッドへそっと寝かした。
同じベッドで添い寝をしながら、かすか様の寝顔を眺める。今日は、余り起きないなと思う。すると、かすか様は、顔を歪めた。
「うっ……ひっ……ひっく……ううううううぅっ」
「よしよし。……大丈夫ですよ。……かすか様」
また夢で魘されているなと思った。一定のリズムでぽんぽんとかすか様の胸を軽く叩く。暫くすると、また規則正しい寝息が聞こえて来た。
♡
翌日の夜。かすか様は憂いを帯びている表情でベッドの上に座って窓の外を眺めていた。私は、ベッドの上に座ると服を自然な所作で脱いだ。私を見るなり、かすか様もパジャマを静かに脱いで行く。
ベッドの中で裸同士で添い寝をする。かすか様は、私と寝る事に気が乗らないようだった。何だか全てを諦めているようで、辛そうだった。
「……今日はしないんですか?」
「かすか様はしたいですか?」
「………………はい」
「……無理を為さらなくていいんですよ? かすか様」
「しないと、アゲハさんがあの人に叱られてしまいますから。……します」
「……」
そのかすか様の言葉に言葉を失ってしまう。プライベートの事情を深く聞くつもりはないが。ーー可笑しいと思う私。だけど、雇われている立場上、ゆき様にかすか様の事を追求する事は出来ない。
♡
「……ふっ……んっ……んっ」
舌を絡める水音が響く音が辺りに響く。私からかすか様に口付けると、かすか様は大人しく私の入れた舌に自分の舌を絡めて来た。かすか様は、キスをすると感じるようで、唇を離すと、かすか様は、気まずそうで赤面しながら俯く。
「あの……」
「はい?」
「キスは……しなくて、いいです」
♡
かすか様を仰向けにベッドに寝かせて、騎乗位の体制で私はかすか様のものをいれた。一つになって、私が腰を動かした。かすか様は、何も言わずに吐息を漏らして天井を見上げている。
「ーーかすか様? 気持ちいいですか? 痛かったら言って下さいね」
「……んっ……はい……」
涙混じりの声で体を揺すぶられているかすか様。私も私で吐息が乱れて来る。
「……気持ち……良く、ないですか? かすか様?」
「……んっ……んっ……はっ……ぽかぽかします」
「……え?」
ぽろぽろと涙を零しながら、かすか様は、ぽつりと呟いた。私は目を丸くしてしまう。
「あっ……アゲハさっ……抜いて下さ……っ」
「かすか様、果てそうですか?」
「……は、い」
そう言うと、数秒後、かすか様は私の中で静かに果てた。
♡
「ありがとう。アゲハ。ーー報酬は弾んでおくよ」
「はい。お世話になりました」
あっという間の七日間だった。ゆき様に微笑みながらお礼を言われ、私は頭を深々と下げる。
「ーー送迎車を呼ぶから、ちょっと客間で待っててくれるかい?」
「はい」
かすか様は、まだお部屋で眠っている頃合だろう。起こすのも悪かったので黙って出て来た。
数十分後、かたおかさんに呼ばれて、私は客間を後にし、送迎車に乗った。
いつもいつも、寂しそうなかすか様が気掛かりだった。私には何もしてあげられる事は出来ないけど。
たったの七日間だったけれど、かすか様は、大人しくていい子な男の子だった。
未だにゆき様が、何故、あの子の世話を私に任せたのかが分からない。
もうかすか様とは会えないだろうと漠然的に思う。
私は、かすか様の憂いを取り除いてあげられる事は出来ない。ーーだから、彼の幸せを願う事しか出来なかった。
そう思いながら、窓の外の景色を静かに眺めた。
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