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第四部
がらすのふうけい
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⚠︎閲覧自己責任
目が覚めると、翌日の朝だった。ぼくは、自室のベッドの中で目が覚める。
発熱は一晩、寝た事で下がっていた。
朝の挨拶で来室した、かすみに心配されたが、「ーーもう問題ない」と答えた。
♡
「ーーノルン。……体調大丈夫?」
食堂であおなと朝の食事をしていると、心配そうな顔をするあおなから気遣いの言葉を投げ掛けられる。今日、ゆきは不在で、使用人のちとせとかすみが食べ終わった皿を下げ、お茶の用意をしていた。
「ーーは? 淫乱の貴方に、心配されたかないですよ」
ぼくのその唐突な物言いに、あおなはぴきっと反応する。明らかに癇に障ったようだった。口元を引き攣らせて、ぼくを睨む。
「……何? 淫乱って?」
「ーーそのままの意味です。貴方という人物を表した言葉ですよ」
「……はあ? 何でそんな事言う訳? ーーすけべで変態なノルンに言われたくないんだけどっ」
「……は? すけべの何が悪いんですか? ーー男は皆、すけべです」
苛ついたぼくの発言によって、あおなとの言葉の押収が始まった。
「あー……そうですか。……この屋敷には、言い逃れないの出来ない変態共が集う巣ですねっ!」
「それ、主人の耳に入ったら、即刻、貴方の首が飛びますよ?」
「あーっ! そう! 言い逃れの出来ない変態が誰も、ゆきだって言ってないし!」
「……仲が良ろしくて、微笑ましいですね」
「……本当に」
かすみの呑気な言葉と共につられて笑う、ちとせ。あおなは、「ーーどこが!?」と驚いて二人にツッコミを入れている。
あおなはまだ何か言い募ってたが、ぼくはもうまともに相手にはしなかった。
♡
食事を終えて、ぼくは、自室でベッドの上に座り、読書をしていた。ノアの冒険シリーズの新刊が出たので、ゆきに頼んで買って貰ったのだ。
「はい」
ノック音に返事すると、かすみが部屋に入って来た。
「ーー失礼します。ノルン様。三時のお茶とお菓子をお持ちしました」
「……ありがとうございます」
かすみは、テーブルにティーセットを広げてお茶とお菓子の準備をする。
「ノルン様は、マリア様と……どういったご関係なのですか? とても仲がよろしいですよね」
唐突にかすみが振って来た世間話にぼくは言葉を詰まらせる。かすみなりの気遣いなのだろうが。ぼくは、黙っていると、かすみは、慌てたように言う。
「あ……もしかして、聞いてはいけないご質問でしたか?」
「いえ、そんな事は……」
「……も、申し訳御座いません。ノルン様」
「ーー大丈夫ですよ」
「……使用人の立場なのに、出過ぎた真似をしてしまって。……本当に申し訳ないです」
本当に申し訳なさそうにする、かすみに、何だかぼくも申し訳なく思ってしまう。ぼくは、かすみを安心させるように微笑した。
「ーーいえ、気にしないで下さい」
「はい……。ありがとうございます」
ぼくの態度を見て、かすみは安堵し、笑い返した。
♡
大浴場へ向かう廊下を歩いていると、使用人の話し声が聞こえて来た。ちとせとひるこの声だ。
「……あの子も苦労しているようだから、ひるこさん。かすみさんには、良くしてあげてね」
「はい」
「ーー本当に不憫でならないわ」
ーー不憫? 苦労? 何の事だ?
ぼくは足を止める。立ち聞きになるだろうと思ったが、黙って耳を澄ました。ちとせの悲しそうな声に、ひるこは淡々と事務的に返している。
「去年の春に、お母様を事故で亡くして、お父様はそれを切っ掛けに心のご病気になって……もうお父様も状態が悪くて、退院出来ないそうよ」
「……そう、なのですか」
ひるこの口調が普段よりも固くなる。ひるこにとっても、かすみに対して何か思う事があるらしい。
「それでも、お父様の入院費を工面する為に、あんなに沢山沢山、働いて……。とても辛い筈なのに、あの子の泣いた所を私は一度も見た事がないわ」
「いつも、笑顔ですよね。……かすみさん」
「そうね」
ぼくは聞いてはいけない事を聞いてしまった感覚となり、いたたまれない気持ちの中、来た道を戻った。
♡
「ーーあ、ノルン様。……あれ? 忘れ物ですか?」
「……はい」
着替えを手に持つぼくに、廊下ですれ違う、かすみが微笑む。ぼくは淡々と返事をして自室へと戻った。何とも言えない複雑な心境に駆られる。
時間を置いてから、また大浴場へと向かった。
目が覚めると、翌日の朝だった。ぼくは、自室のベッドの中で目が覚める。
発熱は一晩、寝た事で下がっていた。
朝の挨拶で来室した、かすみに心配されたが、「ーーもう問題ない」と答えた。
♡
「ーーノルン。……体調大丈夫?」
食堂であおなと朝の食事をしていると、心配そうな顔をするあおなから気遣いの言葉を投げ掛けられる。今日、ゆきは不在で、使用人のちとせとかすみが食べ終わった皿を下げ、お茶の用意をしていた。
「ーーは? 淫乱の貴方に、心配されたかないですよ」
ぼくのその唐突な物言いに、あおなはぴきっと反応する。明らかに癇に障ったようだった。口元を引き攣らせて、ぼくを睨む。
「……何? 淫乱って?」
「ーーそのままの意味です。貴方という人物を表した言葉ですよ」
「……はあ? 何でそんな事言う訳? ーーすけべで変態なノルンに言われたくないんだけどっ」
「……は? すけべの何が悪いんですか? ーー男は皆、すけべです」
苛ついたぼくの発言によって、あおなとの言葉の押収が始まった。
「あー……そうですか。……この屋敷には、言い逃れないの出来ない変態共が集う巣ですねっ!」
「それ、主人の耳に入ったら、即刻、貴方の首が飛びますよ?」
「あーっ! そう! 言い逃れの出来ない変態が誰も、ゆきだって言ってないし!」
「……仲が良ろしくて、微笑ましいですね」
「……本当に」
かすみの呑気な言葉と共につられて笑う、ちとせ。あおなは、「ーーどこが!?」と驚いて二人にツッコミを入れている。
あおなはまだ何か言い募ってたが、ぼくはもうまともに相手にはしなかった。
♡
食事を終えて、ぼくは、自室でベッドの上に座り、読書をしていた。ノアの冒険シリーズの新刊が出たので、ゆきに頼んで買って貰ったのだ。
「はい」
ノック音に返事すると、かすみが部屋に入って来た。
「ーー失礼します。ノルン様。三時のお茶とお菓子をお持ちしました」
「……ありがとうございます」
かすみは、テーブルにティーセットを広げてお茶とお菓子の準備をする。
「ノルン様は、マリア様と……どういったご関係なのですか? とても仲がよろしいですよね」
唐突にかすみが振って来た世間話にぼくは言葉を詰まらせる。かすみなりの気遣いなのだろうが。ぼくは、黙っていると、かすみは、慌てたように言う。
「あ……もしかして、聞いてはいけないご質問でしたか?」
「いえ、そんな事は……」
「……も、申し訳御座いません。ノルン様」
「ーー大丈夫ですよ」
「……使用人の立場なのに、出過ぎた真似をしてしまって。……本当に申し訳ないです」
本当に申し訳なさそうにする、かすみに、何だかぼくも申し訳なく思ってしまう。ぼくは、かすみを安心させるように微笑した。
「ーーいえ、気にしないで下さい」
「はい……。ありがとうございます」
ぼくの態度を見て、かすみは安堵し、笑い返した。
♡
大浴場へ向かう廊下を歩いていると、使用人の話し声が聞こえて来た。ちとせとひるこの声だ。
「……あの子も苦労しているようだから、ひるこさん。かすみさんには、良くしてあげてね」
「はい」
「ーー本当に不憫でならないわ」
ーー不憫? 苦労? 何の事だ?
ぼくは足を止める。立ち聞きになるだろうと思ったが、黙って耳を澄ました。ちとせの悲しそうな声に、ひるこは淡々と事務的に返している。
「去年の春に、お母様を事故で亡くして、お父様はそれを切っ掛けに心のご病気になって……もうお父様も状態が悪くて、退院出来ないそうよ」
「……そう、なのですか」
ひるこの口調が普段よりも固くなる。ひるこにとっても、かすみに対して何か思う事があるらしい。
「それでも、お父様の入院費を工面する為に、あんなに沢山沢山、働いて……。とても辛い筈なのに、あの子の泣いた所を私は一度も見た事がないわ」
「いつも、笑顔ですよね。……かすみさん」
「そうね」
ぼくは聞いてはいけない事を聞いてしまった感覚となり、いたたまれない気持ちの中、来た道を戻った。
♡
「ーーあ、ノルン様。……あれ? 忘れ物ですか?」
「……はい」
着替えを手に持つぼくに、廊下ですれ違う、かすみが微笑む。ぼくは淡々と返事をして自室へと戻った。何とも言えない複雑な心境に駆られる。
時間を置いてから、また大浴場へと向かった。
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