惡魔の序章

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おとなりさん

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 ーー私は、今年の春で中学一年生になった。

 ーー季節は春爛漫。

 ーー私はとある兄弟のお隣さんだ。

   ♡

 私が六歳の時に両親が一軒家を建てた。お引越しした日の初日に、とある家族と出会う。お隣にする住む綺麗なお家、さいおんじ家。ーーその家の息子二人、私と同い年の長男、いつきと私と三個年下の次男、かすかと。

 近所付き合いだったが、お隣同士で母親が仲がいい事から、必然的に子供同士である私ら三人はとても仲のいい幼馴染になった。私は一人っ子だったから。当時、三歳のかすかが可愛くて、弟が出来た気分で可愛がっていた記憶がある。いつもかすかは、私といつきの後を追い掛けて来た。ーーカルガモのように。

 そうして、数年が経ち、現在、私は十二歳なのだが。とある悩みに頭を抱えていた。ーーそれは、思春期を迎えた事で徐々に男の子である、いつきとかすかと疎遠になりつつある事。

 いつきは明るくて社交的。かすかはいつきとは正反対で物静かで内向的な男の子だった。特に、かすかの方が小学生だったけれど、早熟な男の子で賢いという事から、口数は明らかに少なくなって行った。

 ちなみにかすかの方は養子でさいおんじ家とは、血縁関係はない。その事を知ったのは、私が小学生の時だ。だからなのか、かすかは、癖で誰とでも敬語口調で淡々と話す。もしかしたら、自分だけ養子でいる事で家庭でいたたまれない思いをしていたのかもしれない。

   ♡

「よく~。次いでに、ゴミ出ししてくれるー?」

「はーい」

 とある平日の朝。制服姿の私は、靴を履くと母に可燃ごみを手渡されて、見送る母へと振り返り「ーー行って来ます」と言って家を出た。「ーー行ってらっしゃい~」という母の間延びした声を聞きながら、ゴミステーションに向かう。

 ゴミを出し終わると、隣の家からかすかが出て来た。茶色のランドセルを背負って。私はかすかに気付くと、かすかもかすかで私に気付いたようで目と目が合った。

「あ、かすか。おはよ」

「おはようございます」

 それだけ言って、かすかはさっさと行ってしまった。相変わらず、無表情で淡々としていると思った。

 私は、本当だったら、もう少しかすかと会話をしたかった。だけど、何となくかすかに避けられているような気がした。私の気の所為だとは思うのだけれど。

 さいおんじ家とは中学に上がってからというもの。本当に疎遠になってしまった。母親同志は仲がいいが。

 だけど、とある切っ掛けから、また私は、さいおんじ兄弟と関わる事が増えて行くのだ。
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