3 / 15
ゴンタ
妻からの電話3
しおりを挟む
ああ、あなた? なかなか出ないからもう! 今何処? もう帰っているのね?
ねえあなた、来月までの単身赴任、早めに切り上げて帰って来られない? ええ、勿論、無茶な事を言っているのはわかっているわ。
……は? どうしたんだって?
そんなの決まってるじゃない! 大翔とあのタコの事よ!
き、昨日の夜よ。
二階に行ったら、またいつものようにあの子の話し声が聞こえて……そのうちあの子が部屋を出てトイレに行ったから、その隙にドアをちょっとだけ開けて、隙間から部屋の中を覗いてみたのよ。
そ、そうしたら、あ、あのタコ……あのタコが! 水槽から出て、大翔のベッドの上にいて! 何かぶつぶつ言っていたの!!
しかもあの大きさ! 間違いなく一メートル超えていたのよ!! この間送った写真、返信はなかったけれど、ちゃんと見てくれたわよね? あれよりもずっと大きくなっていて!!
あのタコ、何もかもが異常よ! というか絶対にタコじゃないわよ、あれ!
……え? その後どうしたのかって?
そのままよ。特に何もしていない。
だって怖いじゃない! タコだけじゃないわ、大翔も怖いのよ! あの子の様子だって明らかにおかしいんだもの! む、無表情でほとんど喋らないだけじゃなくて、顔色も悪くて……そ、それだけじゃなくて、時々妙な動きもするようになって……
大翔? まだ学校よ。今、五時間目の授業あたりじゃないかしら。
だから今あなたに電話しているのよ。あの子には聞かれたくなかったから。
この間、あなたと電話している時に、あの子が無表情でわたしを見ていたって言ったでしょ?
あれ以来、あの子はわたしがスマホを持っていたり固定電話の近くに立っているだけで、じーっと見てくるようになったのよ! 無表情で! 暗い目で!!
ねえあなたお願い、切り上げられないのは仕方ないとして、せめて一日だけでもいいから帰って来て! わたし怖いのよ! 本当に怖いの!
……今のくしゃみ、誰?
すっとぼけるんじゃないわよ!!
今確かに聞こえたわよ! くしゃみが! 女のくしゃみが!!
やっぱりあなた、女がいたのね!
前々から怪しいとは思っていたのよ! それでもあなたを信じて……はあ? 部下? 部下があなたの部屋にまで来るっていうの? しかもあなた最初は、くしゃみなんて聞こえなかったって素振りだったわよね?
いい……もういいわよ!
もうあなたなんかに頼らないから。わたし一人で解決します。
だいたい、昔からそうだったわよね! わたしに家事も育児も押し付けて! わたしが困った時、体調崩して辛い時、全っ然助けてくれなくて!
はいはい、言い訳はもう結構。聞きたくありません。
それじゃあ残り一箇月ちょっと、頑張ってお金稼いで来てくださいな!
まあ、何て事ないわよね? 若い女の子がいてくれるんだものね!
わたしの隣には誰もいてくれない……ううん、いたわね。不気味なあの子と、もっと不気味なタコみたいな化け物が。
うるさいわね! 聞きたくないって言ってんでしょ!!
もう切るから!!
ねえあなた、来月までの単身赴任、早めに切り上げて帰って来られない? ええ、勿論、無茶な事を言っているのはわかっているわ。
……は? どうしたんだって?
そんなの決まってるじゃない! 大翔とあのタコの事よ!
き、昨日の夜よ。
二階に行ったら、またいつものようにあの子の話し声が聞こえて……そのうちあの子が部屋を出てトイレに行ったから、その隙にドアをちょっとだけ開けて、隙間から部屋の中を覗いてみたのよ。
そ、そうしたら、あ、あのタコ……あのタコが! 水槽から出て、大翔のベッドの上にいて! 何かぶつぶつ言っていたの!!
しかもあの大きさ! 間違いなく一メートル超えていたのよ!! この間送った写真、返信はなかったけれど、ちゃんと見てくれたわよね? あれよりもずっと大きくなっていて!!
あのタコ、何もかもが異常よ! というか絶対にタコじゃないわよ、あれ!
……え? その後どうしたのかって?
そのままよ。特に何もしていない。
だって怖いじゃない! タコだけじゃないわ、大翔も怖いのよ! あの子の様子だって明らかにおかしいんだもの! む、無表情でほとんど喋らないだけじゃなくて、顔色も悪くて……そ、それだけじゃなくて、時々妙な動きもするようになって……
大翔? まだ学校よ。今、五時間目の授業あたりじゃないかしら。
だから今あなたに電話しているのよ。あの子には聞かれたくなかったから。
この間、あなたと電話している時に、あの子が無表情でわたしを見ていたって言ったでしょ?
あれ以来、あの子はわたしがスマホを持っていたり固定電話の近くに立っているだけで、じーっと見てくるようになったのよ! 無表情で! 暗い目で!!
ねえあなたお願い、切り上げられないのは仕方ないとして、せめて一日だけでもいいから帰って来て! わたし怖いのよ! 本当に怖いの!
……今のくしゃみ、誰?
すっとぼけるんじゃないわよ!!
今確かに聞こえたわよ! くしゃみが! 女のくしゃみが!!
やっぱりあなた、女がいたのね!
前々から怪しいとは思っていたのよ! それでもあなたを信じて……はあ? 部下? 部下があなたの部屋にまで来るっていうの? しかもあなた最初は、くしゃみなんて聞こえなかったって素振りだったわよね?
いい……もういいわよ!
もうあなたなんかに頼らないから。わたし一人で解決します。
だいたい、昔からそうだったわよね! わたしに家事も育児も押し付けて! わたしが困った時、体調崩して辛い時、全っ然助けてくれなくて!
はいはい、言い訳はもう結構。聞きたくありません。
それじゃあ残り一箇月ちょっと、頑張ってお金稼いで来てくださいな!
まあ、何て事ないわよね? 若い女の子がいてくれるんだものね!
わたしの隣には誰もいてくれない……ううん、いたわね。不気味なあの子と、もっと不気味なタコみたいな化け物が。
うるさいわね! 聞きたくないって言ってんでしょ!!
もう切るから!!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる