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それから約二箇月後。
わたしと真央と桜花の三人は、前回利用したファミレスで夕食を取っていた。
「セリ、今日はあたしたちの奢りだからね!」
「そう、遠慮しなくていいからさ」
「二人共、有難う。そして大変ご心配をお掛けしました」
わたしが頭を下げると、桜花は小さく拍手し、真央は「本当にお疲れ様」と労ってくれた。
「しかしまさか、こんな意外な結末になるとはね」
真央がしみじみ言うと、桜花も「だね」と同意した。
「うん、まさかだったよ……」
謹慎明けに社長室でわたしが言い渡されたのは、解雇通告ではなく、厳重注意と、一箇月間の女子トイレ清掃だった。
更に驚くべき事に、その一週間後にお局が解雇された。原因はわたしとのトラブルではなく、横領だった。数年前から、会社の金で仕事に関係ない商品を買い漁っては、ネットオークションで転売していたらしい。
職場には無事に戻って来られたけれど、結局わたしは退職した。気まずかったしやる気も失せていた。そして何よりも──
「セリ、イラストレーター目指すんだって?」桜花がこちらに身を乗り出した。
「うん。何年掛かってでも本業にするって決めた。当然それまでの食い扶持は稼がなきゃいけないから、もう少し休んだら、バイトでも構わないから再就職先を探すんだ」
「高校時代になりたいって言ってたもんね。やっぱ諦めてなかったんだ」
「ううん、本当はとっくに諦めてたんだよ。でも真央がね、退職を決めたって連絡した時に、背中を押してくれたの」
「マジ?」
わたしと桜花の視線を同時に受け、真央は照れ臭そうに微笑んだ。
ミランダ川中の占いは的中し、お局は会社を去った。という事は、もう一つの占いの結果の方も期待出来るかもしれない。
そして過去世。遠き星に異星人は実在していて、遠き過去にはピミカもその一人だったのかもしれない。
リリニはどうだろう。彼はこの青い星の住人に生まれ変わっているだろうか。
運命の出会いまたは再会──これが彼との事ならいいのだけれど。
数日後の夜。久し振りに[Pixy]にログインしたわたしは、息をするのを忘れそうな程驚いた。
真央のユーザー名が変更されていた。
リリニ。
『名前変えたんだね』
わたしは急いでメッセージを送信した。
『うん、何か急に変えたくなった』
『名前の由来は?』
『笑わずに聞いてくれるって約束するなら話す』
『絶対に笑わないよ』
心臓がバクバクしている。お局を殴ってしまったあの時や、謹慎明けに社長室に向かった時以上に緊張していた。
すぐに返信が届かなくて、わたしはずっとそわそわしていた。
真央から直接電話が掛かってきたのは、約一時間後だった。
「今まで黙ってたけど、実は芹香に過去世の話を聞いた日の夜から、度々不思議な夢を見るようになったんだ。わたしと芹香がどっちも異星人で、わたしは男で名前がリリニ、芹香は女でピミカ」
わたしは笑い出したいような泣き出したいような踊り出したいような、変な気分になった。
でも本当は、少し前から気付きかけていたのかもしれない。
「正直だいぶ混乱してる。ねえ芹香、今度二人だけで色々と話したい事があるんだけど! ネットじゃなくて直接会ってさ」
「わたしも同じだよ。いつにする?」
真央とわたしは、次の日曜日に会う約束をした。
待ち遠しくって仕方がない。本当なら今すぐに飛んで行きたいくらいだ──それこそ、空飛ぶ車に乗って。
わたしと真央と桜花の三人は、前回利用したファミレスで夕食を取っていた。
「セリ、今日はあたしたちの奢りだからね!」
「そう、遠慮しなくていいからさ」
「二人共、有難う。そして大変ご心配をお掛けしました」
わたしが頭を下げると、桜花は小さく拍手し、真央は「本当にお疲れ様」と労ってくれた。
「しかしまさか、こんな意外な結末になるとはね」
真央がしみじみ言うと、桜花も「だね」と同意した。
「うん、まさかだったよ……」
謹慎明けに社長室でわたしが言い渡されたのは、解雇通告ではなく、厳重注意と、一箇月間の女子トイレ清掃だった。
更に驚くべき事に、その一週間後にお局が解雇された。原因はわたしとのトラブルではなく、横領だった。数年前から、会社の金で仕事に関係ない商品を買い漁っては、ネットオークションで転売していたらしい。
職場には無事に戻って来られたけれど、結局わたしは退職した。気まずかったしやる気も失せていた。そして何よりも──
「セリ、イラストレーター目指すんだって?」桜花がこちらに身を乗り出した。
「うん。何年掛かってでも本業にするって決めた。当然それまでの食い扶持は稼がなきゃいけないから、もう少し休んだら、バイトでも構わないから再就職先を探すんだ」
「高校時代になりたいって言ってたもんね。やっぱ諦めてなかったんだ」
「ううん、本当はとっくに諦めてたんだよ。でも真央がね、退職を決めたって連絡した時に、背中を押してくれたの」
「マジ?」
わたしと桜花の視線を同時に受け、真央は照れ臭そうに微笑んだ。
ミランダ川中の占いは的中し、お局は会社を去った。という事は、もう一つの占いの結果の方も期待出来るかもしれない。
そして過去世。遠き星に異星人は実在していて、遠き過去にはピミカもその一人だったのかもしれない。
リリニはどうだろう。彼はこの青い星の住人に生まれ変わっているだろうか。
運命の出会いまたは再会──これが彼との事ならいいのだけれど。
数日後の夜。久し振りに[Pixy]にログインしたわたしは、息をするのを忘れそうな程驚いた。
真央のユーザー名が変更されていた。
リリニ。
『名前変えたんだね』
わたしは急いでメッセージを送信した。
『うん、何か急に変えたくなった』
『名前の由来は?』
『笑わずに聞いてくれるって約束するなら話す』
『絶対に笑わないよ』
心臓がバクバクしている。お局を殴ってしまったあの時や、謹慎明けに社長室に向かった時以上に緊張していた。
すぐに返信が届かなくて、わたしはずっとそわそわしていた。
真央から直接電話が掛かってきたのは、約一時間後だった。
「今まで黙ってたけど、実は芹香に過去世の話を聞いた日の夜から、度々不思議な夢を見るようになったんだ。わたしと芹香がどっちも異星人で、わたしは男で名前がリリニ、芹香は女でピミカ」
わたしは笑い出したいような泣き出したいような踊り出したいような、変な気分になった。
でも本当は、少し前から気付きかけていたのかもしれない。
「正直だいぶ混乱してる。ねえ芹香、今度二人だけで色々と話したい事があるんだけど! ネットじゃなくて直接会ってさ」
「わたしも同じだよ。いつにする?」
真央とわたしは、次の日曜日に会う約束をした。
待ち遠しくって仕方がない。本当なら今すぐに飛んで行きたいくらいだ──それこそ、空飛ぶ車に乗って。
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