美女とチワワ

園村マリノ

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 気が済むまで、というか飽きるまで海を眺めた。時間は測っていないが、三〇分以上はそうしていただろう。俺の記録では過去最長だ。
 俺の他にも座って眺めていた人間は複数いたが、皆短時間で何処かに行ってしまうため、入れ替わりが激しかった。俺より長く同じ場所にいたのは、釣りのおっさんくらいだろう。

 立ち上がって伸びをして、さて、この後どうしようかと考えていたら、そこそこ腹が減っている事に気付いたので、俺は出口の一つである北口を目指した。
 回れ右して真っ直ぐ進んでゆき、幅が広いというか、大きくゆったりした感じの階段を登る。階段脇の木の下では、小さい子連れのお母さんグループがシートを広げて弁当を食べながら喋くっている。

 北口から外に出て、左手のパシフィコ横浜ノースと右手のホテルの間の歩道を進む。この辺に植えられている木の周辺には蜂が出る事もあるらしく、イラスト付きの注意喚起の看板がある。
 少し進むと、パシフィコ横浜ノース内の〈ドドンドンコーヒー〉の店舗が見えた。ガラス越しに店内を見やると、珍しく空いていた。一三時を過ぎているから、近隣オフィスのサラリーマンは仕事に戻ったのかもしれない。
 俺は迷わず店に入り、イタリアンサンドCをホットコーヒーとセットで注文した。



 え、チワワと美女はどうしたのかって?

 大丈夫大丈夫、これから話すから。
 本題はこの後、〈ドドンドンコーヒー〉を出てからなんだ。
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