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運命の輪
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あんたが落ち込んでいるって聞いたから来たわ。長年付き合っていた恋人と別れたんですって?
そんな、この世の終わりみたいな顔しちゃって……まあ、円満な別れ方じゃなかったみたいだし、すぐに立ち直れる方が不思議か。
え? このところずっと嫌な事ばっかり?
例えばどんな?
仕事でミスが相次いでもの凄く怒られた、せっかくチケットが取れたコンサートに風邪ひいて行けなかった、タンスの角に小指をぶつけた、犬のウンコ踏んだ、頭にカラスのウンコ落とされた……あらら、運気が低迷しているわね。ご愁傷様。
でもね、運気の低迷が永遠に続くって事はないはずよ。何年も何十年も不運なままだって嘆く人間もいるけど、小さな幸運には目もくれていないだけだったりするの。
運気ってのはね、下がればいずれ上がるもの。その逆も然り。運命の車輪の回転は、誰であっても止められない。
今から楽しみにしていなさいよ、いずれ訪れる幸運を。たとえそれが、ささやかなものであったとしてもね。
え? 幸運が訪れたら、いずれまた不幸が降り掛かるんだろうって?
ネガティブね、あんた。慎重なだけだって? そりゃ悪かったわね。
そう思うんだったら、幸運が訪れた後、いつまでも浮かれてばかりいなければいい。調子に乗らないで、次に降り掛かるであろう不運を最小限に喰い止められるよう、慎重になればいい。
……とまあ、色々と偉そうに言っちゃったけど、これ全部、占い師さんの受け売りなんだよね。
これでもあたし、あんたの事を本気で心配しているの。早く立ち直って、また笑顔を見せてほしいな。あの太陽みたいに輝く素敵な……って、あたし何言ってんだろ。えへへ。ごめん今の忘れ──って、あれ、電話中? いつの間に……あ、終わった。誰だったの?
え? ああ、あの眼鏡の小柄な女の子? あの子がどうしたって?
……告白された? 前から好きでしたって?
……で、あんたは何て……あ、OKしたんだ? ふーんそう。
じゃあもう大丈夫そうね! 運気少しずつ上昇してきたんじゃない? きっとそうよ、うん。いえいえそんな、礼には及ばないわ。じゃあ、あたし帰るから。うん、じゃあね。
「ええい、クソが!」
あたしは電柱に拳を叩き付けた。
「心配して損したっつーの!」
別に、彼が弱っているところに付け入ろうとしたわけじゃないのよ。そうじゃないんだけど……はあ。
「ずっと好きだったのに……」
ブロック塀の上から、サバトラ柄の可愛らしい野良猫ちゃんがじっとこちらを見ている。
「いや~ん、猫たあ~ん!」
あたしが癒しを求めて小走りで近付くと、憎たらしい野良猫のヤツめはゴミを見るような目でこちらを睨んだ後、一目散に逃げて行った。おまけにあたしは、ちょっと大きなサイズの石を変な風に踏ん付けてしまい、足首を捻る始末。
「痛え!」
何だか最近、運悪いなあ……。
あーあ、早く何かいい事起きないかな!
空からお金が降って来るとか、土掘ったら石油が湧いたりとかしないかしら。
そんな、この世の終わりみたいな顔しちゃって……まあ、円満な別れ方じゃなかったみたいだし、すぐに立ち直れる方が不思議か。
え? このところずっと嫌な事ばっかり?
例えばどんな?
仕事でミスが相次いでもの凄く怒られた、せっかくチケットが取れたコンサートに風邪ひいて行けなかった、タンスの角に小指をぶつけた、犬のウンコ踏んだ、頭にカラスのウンコ落とされた……あらら、運気が低迷しているわね。ご愁傷様。
でもね、運気の低迷が永遠に続くって事はないはずよ。何年も何十年も不運なままだって嘆く人間もいるけど、小さな幸運には目もくれていないだけだったりするの。
運気ってのはね、下がればいずれ上がるもの。その逆も然り。運命の車輪の回転は、誰であっても止められない。
今から楽しみにしていなさいよ、いずれ訪れる幸運を。たとえそれが、ささやかなものであったとしてもね。
え? 幸運が訪れたら、いずれまた不幸が降り掛かるんだろうって?
ネガティブね、あんた。慎重なだけだって? そりゃ悪かったわね。
そう思うんだったら、幸運が訪れた後、いつまでも浮かれてばかりいなければいい。調子に乗らないで、次に降り掛かるであろう不運を最小限に喰い止められるよう、慎重になればいい。
……とまあ、色々と偉そうに言っちゃったけど、これ全部、占い師さんの受け売りなんだよね。
これでもあたし、あんたの事を本気で心配しているの。早く立ち直って、また笑顔を見せてほしいな。あの太陽みたいに輝く素敵な……って、あたし何言ってんだろ。えへへ。ごめん今の忘れ──って、あれ、電話中? いつの間に……あ、終わった。誰だったの?
え? ああ、あの眼鏡の小柄な女の子? あの子がどうしたって?
……告白された? 前から好きでしたって?
……で、あんたは何て……あ、OKしたんだ? ふーんそう。
じゃあもう大丈夫そうね! 運気少しずつ上昇してきたんじゃない? きっとそうよ、うん。いえいえそんな、礼には及ばないわ。じゃあ、あたし帰るから。うん、じゃあね。
「ええい、クソが!」
あたしは電柱に拳を叩き付けた。
「心配して損したっつーの!」
別に、彼が弱っているところに付け入ろうとしたわけじゃないのよ。そうじゃないんだけど……はあ。
「ずっと好きだったのに……」
ブロック塀の上から、サバトラ柄の可愛らしい野良猫ちゃんがじっとこちらを見ている。
「いや~ん、猫たあ~ん!」
あたしが癒しを求めて小走りで近付くと、憎たらしい野良猫のヤツめはゴミを見るような目でこちらを睨んだ後、一目散に逃げて行った。おまけにあたしは、ちょっと大きなサイズの石を変な風に踏ん付けてしまい、足首を捻る始末。
「痛え!」
何だか最近、運悪いなあ……。
あーあ、早く何かいい事起きないかな!
空からお金が降って来るとか、土掘ったら石油が湧いたりとかしないかしら。
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