22の愉快なリーディング

園村マリノ

文字の大きさ
上 下
11 / 22

運命の輪

しおりを挟む
 あんたが落ち込んでいるって聞いたから来たわ。長年付き合っていた恋人と別れたんですって?
 そんな、この世の終わりみたいな顔しちゃって……まあ、円満な別れ方じゃなかったみたいだし、すぐに立ち直れる方が不思議か。

 え? このところずっと嫌な事ばっかり?
 例えばどんな?
 仕事でミスが相次いでもの凄く怒られた、せっかくチケットが取れたコンサートに風邪ひいて行けなかった、タンスの角に小指をぶつけた、犬のウンコ踏んだ、頭にカラスのウンコ落とされた……あらら、運気が低迷しているわね。ご愁傷様。

 でもね、運気の低迷が永遠に続くって事はないはずよ。何年も何十年も不運なままだって嘆く人間もいるけど、小さな幸運には目もくれていないだけだったりするの。
 運気ってのはね、下がればいずれ上がるもの。その逆も然り。運命の車輪の回転は、誰であっても止められない。
 今から楽しみにしていなさいよ、いずれ訪れる幸運を。たとえそれが、ささやかなものであったとしてもね。

 え? 幸運が訪れたら、いずれまた不幸が降り掛かるんだろうって?
 ネガティブね、あんた。慎重なだけだって? そりゃ悪かったわね。
 そう思うんだったら、幸運が訪れた後、いつまでも浮かれてばかりいなければいい。調子に乗らないで、次に降り掛かるであろう不運を最小限に喰い止められるよう、慎重になればいい。

 ……とまあ、色々と偉そうに言っちゃったけど、これ全部、占い師さんの受け売りなんだよね。
 これでもあたし、あんたの事を本気で心配しているの。早く立ち直って、また笑顔を見せてほしいな。あの太陽みたいに輝く素敵な……って、あたし何言ってんだろ。えへへ。ごめん今の忘れ──って、あれ、電話中? いつの間に……あ、終わった。誰だったの?

 え? ああ、あの眼鏡の小柄な女の子? あの子がどうしたって?
 ……告白された? 前から好きでしたって?
 ……で、あんたは何て……あ、OKしたんだ? ふーんそう。
 じゃあもう大丈夫そうね! 運気少しずつ上昇してきたんじゃない? きっとそうよ、うん。いえいえそんな、礼には及ばないわ。じゃあ、あたし帰るから。うん、じゃあね。


「ええい、クソが!」
 あたしは電柱に拳を叩き付けた。
「心配して損したっつーの!」
 別に、彼が弱っているところに付け入ろうとしたわけじゃないのよ。そうじゃないんだけど……はあ。
「ずっと好きだったのに……」
 
 ブロック塀の上から、サバトラ柄の可愛らしい野良猫ちゃんがじっとこちらを見ている。
「いや~ん、猫たあ~ん!」
 あたしが癒しを求めて小走りで近付くと、憎たらしい野良猫のヤツめはゴミを見るような目でこちらを睨んだ後、一目散に逃げて行った。おまけにあたしは、ちょっと大きなサイズの石を変な風に踏ん付けてしまい、足首を捻る始末。
いってえ!」
 何だか最近、運悪いなあ……。

 あーあ、早く何かいい事起きないかな!
 
 空からお金が降って来るとか、土掘ったら石油が湧いたりとかしないかしら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

処理中です...