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第2話 イワザワさん
08 復讐
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理世は焦り、急いでいた。
──ヤバイ! 絶対怒られる……!
うっかり小学校に通い忘れたまま、気付けばもう一九歳だ。どうしてこんな大切な事を、何年もの間忘れていたのだろうか。
見知らぬ住宅街の中を走り続けていると、見知らぬ学校に辿り着いた。閉じている正門をよじ登り、楽しそうに遊ぶ中高生や大人だらけの狭い校庭を突っ切ると、やたらと重いガラス扉を引き開けて校舎内へ。
──教室は確か四階だったよね……。
すぐ近くの階段を一段飛ばしで駆け上るうちに、あっという間に一三階までやって来た。校庭とは打って変わって人の気配がなく、静まり返っている。
やたらと長い廊下を進むと、一年一組の教室が見えてきた。壁にぽっかり開いた大穴から中を確認すると、大半は見覚えのないクラスメートたちの姿がちらほら。
「すみません、遅れました!」
前方のドアから中に入ると、数人が振り向いたが、それ以上気にする様子は見せなかった。
「まだ先生来てないよ」ドアに近い席のモカが言った。「ちなみに、この後は数学ね」
「あ、宿題忘れた!」
「今日、体育ある事覚えてた?」
「いけない、体操服も忘れた!」
「そもそも何の荷物も持ってないじゃん」
「ああっ、何もかも忘れた!」
「まあいいから、席に着いたら?」
理世はそれもそうだと思い、ドア側から二列目、前から四番目の席に座った。
「先生、わたしがずっと来てなかった事を怒ってなかった?」
左隣に座る人気お笑い芸人に尋ねてみたが、肩を竦めただけだった。
「仕方ないじゃない? わたしだって大学生活忙しかったんだし。それに学校からだって、何年も何の連絡も──」
言い訳の途中で、理世ははたと気付いた。
──あ……これ夢だ。
小学校なんてとっくに卒業している。それどころか、中学校と高校も。よくよく思い返してみれば、最初から色々とおかしかった。わかってしまえば怖いものなんてないし、このまま架空の学校にいる意味もない。
──一度起きよっと。
理世は両目をギュッと瞑り、体全体が空気に溶け込むようイメージした。自分が唯一知っている夢から現実世界に戻る方法であり、それこそ小学生の頃から使っていた。
「……あれ?」
しばらく経過してから目を開くと、まだ教室の中にいた。
──何で? 今まで失敗した事なんてなかったのに!
理世は席を立った。目が覚めないのなら、せめて夢の内容に変化をもたらしたかった。
──この後授業なんて嫌だもんね。
教室後方のドアから外に出ようとした時だった。
「理世ちゃん」
何処かで聞いた事のあるような声に振り向いた理世は、思わず眉をひそめた。小学校入学から間もない頃、嫌がらせされた挙句、謝罪までさせられたあの二人が、当時の姿のままで横並びに立っていた。
「理世ちゃん、学校終わったら三人で一緒に遊ぼうよ」
「……嫌よ」理世は自分でも驚く程冷たい声で答えた。「習い事も何もないけど、あなたたちと遊ぶのは嫌」
「えー、酷い!」
「友達なのに遊べないんだー? 最低!」
「あなたたちなんて、友達じゃない」
エリとリエは顔を見合わせると、クスクスと笑った。
「……何? 言いたい事があるならはっきり言って!」
二人は答えず、クスクス笑いを続けるだけだった。カッとなった理世は、思わずエリを突き飛ばした。小さな体はすぐ近くの椅子と机にぶつかり、床に倒れ込んだ。いつの間にか他の生徒たちはいなくなっていた。
「……あなたもよ」
棒立ちになり無言のままこちらを見ているリエも突き飛ばすと、エリと同じように椅子と机にぶつかったが、倒れなかった。
「あー、いけないんだー」いつの間にか立ち上がっていたエリが、ニヤニヤ笑いながら言った。「先生に言ってやろーっ」
「言ってやろーっ」リエもエリと一緒になって笑った。
理世は我に返り、教室を飛び出した。廊下を走り、途中で窓から外に飛び降りて華麗に着地を決めると、知らない道を再び走り出した。とにかく遠くへ逃げなくては。しばらく隠れていれば、きっと向こうも諦めるだろう。
知っているようで知らない道を脇目も振らずに走り続け、気付くと理世は、偽イワザワさんが現れた空き家の前までやって来ていた。
「ここは怖いんだよなあ……」
そう言いながらも理世は、当たり前のように玄関引き戸を開けた。真っ暗闇が出迎えたが、数秒後には勝手に明かりが点き、モカの家だと判明して安心した。
「お邪魔しまーす」
誰も出て来なかったが、理世は遠慮なく土足のまま上がると、迷う事なく階段を上り、モカの部屋へと入った。
──!!
室内は、先程までいた一年一組の教室になっていた。
「やだ……せっかく逃げて来たのに!」
生徒も教師も見当たらないが、いつ誰が来るかわからない。外に出ようとした理世だったが、教室後方の窓側に誰かが二人倒れている事に気付くと、列の乱れた机の間を縫って近寄った。
「あ……」
倒れているのはエリとリエだった。二人共、口に何重ものガムテープが雑に貼られ、両手両足をロープで縛られている。理世に気付くと必死に体を動かし、モゴモゴと言葉にならない言葉を発した。
「な、何でこんな──」
「殺せ」
何処からともなく男の声が聞こえた。
「そいつらを殺せ」
「だ、誰?」
周囲を見回した理世は、壁際のランドセルロッカーに、柄の長い斧や鉄パイプが立て掛けられている事に気付いた。
──さっきまであったっけ……?
更にロッカーの中には、一マスごとに一つずつ、拳銃や折り畳みナイフ、髑髏マークのラベルが貼られた何らかの液体が入った透明な小瓶など、様々な武器が入っている。
「これは……」
「殺せ。憎いんだろ。殺しちまえ」
戸惑いながらもロッカーを見やっていた理世は、ほぼ無意識のうちに武器の一つ──肉切り包丁を手に取った。それからゆっくりとエリとリエの方を向くと、二人は必死の形相で何かを訴え始めた。
──ああ、命乞いしてるんだ。
理世はゆっくりと二人に近付き、足元まで来ると止まった。
「さあ殺せ」男の声からは、この状況を楽しんでいるのが感じられた。「ブチ殺せ。生意気なガキ共に復讐しろ」
「……あなた、わたしに取り憑いている人だよね?」
理世は返事を待ったが、男は答えなかった。
「病院の時と、偽のイワザワさんの時に、助けてくれたよね。有難う」
再び待ってみたが、やはり返事はないので構わず続ける。
「あのね、もしかしたら今のこの状況も、わたしのためを思ってくれたのかもしれないけど……でも……」
理世はかぶりを振ると、肉切り包丁を二人から離れた方へ投げ捨てた。
「駄目だよ、こんな事。さっきはあまりに頭にきて突き飛ばしちゃったけど……相手が誰であっても、どんなに頭にくる人であっても、やっぱり傷付けちゃ駄目だよ。ましてや殺すなんて。わたしには殺せない。殺さない」
数秒の間の後に、舌打ちと声が後ろから聞こえた。
「善人ぶってんじゃねえぞ、グズ女」
振り向いた瞬間、理世は目を覚ました。状況を呑み込むのに少々時間が掛かったが、上体を起こして暗い部屋を見回すと、安堵の溜め息を吐いた。
残念ながら男の姿を目にする事は出来なかった。声を聞いた限りではまだ若いように思えたが、それ以外は何もわからないままだ。
「だからさ……グズ女は酷くなーい?」
──ヤバイ! 絶対怒られる……!
うっかり小学校に通い忘れたまま、気付けばもう一九歳だ。どうしてこんな大切な事を、何年もの間忘れていたのだろうか。
見知らぬ住宅街の中を走り続けていると、見知らぬ学校に辿り着いた。閉じている正門をよじ登り、楽しそうに遊ぶ中高生や大人だらけの狭い校庭を突っ切ると、やたらと重いガラス扉を引き開けて校舎内へ。
──教室は確か四階だったよね……。
すぐ近くの階段を一段飛ばしで駆け上るうちに、あっという間に一三階までやって来た。校庭とは打って変わって人の気配がなく、静まり返っている。
やたらと長い廊下を進むと、一年一組の教室が見えてきた。壁にぽっかり開いた大穴から中を確認すると、大半は見覚えのないクラスメートたちの姿がちらほら。
「すみません、遅れました!」
前方のドアから中に入ると、数人が振り向いたが、それ以上気にする様子は見せなかった。
「まだ先生来てないよ」ドアに近い席のモカが言った。「ちなみに、この後は数学ね」
「あ、宿題忘れた!」
「今日、体育ある事覚えてた?」
「いけない、体操服も忘れた!」
「そもそも何の荷物も持ってないじゃん」
「ああっ、何もかも忘れた!」
「まあいいから、席に着いたら?」
理世はそれもそうだと思い、ドア側から二列目、前から四番目の席に座った。
「先生、わたしがずっと来てなかった事を怒ってなかった?」
左隣に座る人気お笑い芸人に尋ねてみたが、肩を竦めただけだった。
「仕方ないじゃない? わたしだって大学生活忙しかったんだし。それに学校からだって、何年も何の連絡も──」
言い訳の途中で、理世ははたと気付いた。
──あ……これ夢だ。
小学校なんてとっくに卒業している。それどころか、中学校と高校も。よくよく思い返してみれば、最初から色々とおかしかった。わかってしまえば怖いものなんてないし、このまま架空の学校にいる意味もない。
──一度起きよっと。
理世は両目をギュッと瞑り、体全体が空気に溶け込むようイメージした。自分が唯一知っている夢から現実世界に戻る方法であり、それこそ小学生の頃から使っていた。
「……あれ?」
しばらく経過してから目を開くと、まだ教室の中にいた。
──何で? 今まで失敗した事なんてなかったのに!
理世は席を立った。目が覚めないのなら、せめて夢の内容に変化をもたらしたかった。
──この後授業なんて嫌だもんね。
教室後方のドアから外に出ようとした時だった。
「理世ちゃん」
何処かで聞いた事のあるような声に振り向いた理世は、思わず眉をひそめた。小学校入学から間もない頃、嫌がらせされた挙句、謝罪までさせられたあの二人が、当時の姿のままで横並びに立っていた。
「理世ちゃん、学校終わったら三人で一緒に遊ぼうよ」
「……嫌よ」理世は自分でも驚く程冷たい声で答えた。「習い事も何もないけど、あなたたちと遊ぶのは嫌」
「えー、酷い!」
「友達なのに遊べないんだー? 最低!」
「あなたたちなんて、友達じゃない」
エリとリエは顔を見合わせると、クスクスと笑った。
「……何? 言いたい事があるならはっきり言って!」
二人は答えず、クスクス笑いを続けるだけだった。カッとなった理世は、思わずエリを突き飛ばした。小さな体はすぐ近くの椅子と机にぶつかり、床に倒れ込んだ。いつの間にか他の生徒たちはいなくなっていた。
「……あなたもよ」
棒立ちになり無言のままこちらを見ているリエも突き飛ばすと、エリと同じように椅子と机にぶつかったが、倒れなかった。
「あー、いけないんだー」いつの間にか立ち上がっていたエリが、ニヤニヤ笑いながら言った。「先生に言ってやろーっ」
「言ってやろーっ」リエもエリと一緒になって笑った。
理世は我に返り、教室を飛び出した。廊下を走り、途中で窓から外に飛び降りて華麗に着地を決めると、知らない道を再び走り出した。とにかく遠くへ逃げなくては。しばらく隠れていれば、きっと向こうも諦めるだろう。
知っているようで知らない道を脇目も振らずに走り続け、気付くと理世は、偽イワザワさんが現れた空き家の前までやって来ていた。
「ここは怖いんだよなあ……」
そう言いながらも理世は、当たり前のように玄関引き戸を開けた。真っ暗闇が出迎えたが、数秒後には勝手に明かりが点き、モカの家だと判明して安心した。
「お邪魔しまーす」
誰も出て来なかったが、理世は遠慮なく土足のまま上がると、迷う事なく階段を上り、モカの部屋へと入った。
──!!
室内は、先程までいた一年一組の教室になっていた。
「やだ……せっかく逃げて来たのに!」
生徒も教師も見当たらないが、いつ誰が来るかわからない。外に出ようとした理世だったが、教室後方の窓側に誰かが二人倒れている事に気付くと、列の乱れた机の間を縫って近寄った。
「あ……」
倒れているのはエリとリエだった。二人共、口に何重ものガムテープが雑に貼られ、両手両足をロープで縛られている。理世に気付くと必死に体を動かし、モゴモゴと言葉にならない言葉を発した。
「な、何でこんな──」
「殺せ」
何処からともなく男の声が聞こえた。
「そいつらを殺せ」
「だ、誰?」
周囲を見回した理世は、壁際のランドセルロッカーに、柄の長い斧や鉄パイプが立て掛けられている事に気付いた。
──さっきまであったっけ……?
更にロッカーの中には、一マスごとに一つずつ、拳銃や折り畳みナイフ、髑髏マークのラベルが貼られた何らかの液体が入った透明な小瓶など、様々な武器が入っている。
「これは……」
「殺せ。憎いんだろ。殺しちまえ」
戸惑いながらもロッカーを見やっていた理世は、ほぼ無意識のうちに武器の一つ──肉切り包丁を手に取った。それからゆっくりとエリとリエの方を向くと、二人は必死の形相で何かを訴え始めた。
──ああ、命乞いしてるんだ。
理世はゆっくりと二人に近付き、足元まで来ると止まった。
「さあ殺せ」男の声からは、この状況を楽しんでいるのが感じられた。「ブチ殺せ。生意気なガキ共に復讐しろ」
「……あなた、わたしに取り憑いている人だよね?」
理世は返事を待ったが、男は答えなかった。
「病院の時と、偽のイワザワさんの時に、助けてくれたよね。有難う」
再び待ってみたが、やはり返事はないので構わず続ける。
「あのね、もしかしたら今のこの状況も、わたしのためを思ってくれたのかもしれないけど……でも……」
理世はかぶりを振ると、肉切り包丁を二人から離れた方へ投げ捨てた。
「駄目だよ、こんな事。さっきはあまりに頭にきて突き飛ばしちゃったけど……相手が誰であっても、どんなに頭にくる人であっても、やっぱり傷付けちゃ駄目だよ。ましてや殺すなんて。わたしには殺せない。殺さない」
数秒の間の後に、舌打ちと声が後ろから聞こえた。
「善人ぶってんじゃねえぞ、グズ女」
振り向いた瞬間、理世は目を覚ました。状況を呑み込むのに少々時間が掛かったが、上体を起こして暗い部屋を見回すと、安堵の溜め息を吐いた。
残念ながら男の姿を目にする事は出来なかった。声を聞いた限りではまだ若いように思えたが、それ以外は何もわからないままだ。
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