料理人がいく!

八神

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番外編『魔法使いがいく!』

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「ふん…枢機卿か…宗教じゃあるまいし…まあいい、俺は『枢機卿』だ」


ソレを確認した彼はボソッと呟くと気をとり直したように自分の地位を紹介する。


「枢機卿…!?教皇に次ぐ最高権力者の一人じゃないですか!!」

「職業は伏せる条件だ…俺の事はこれから『枢機卿』と呼んでくれ、それより地下室へと案内してくれないか?」

「は、はい!ただいま!」


驚く受付嬢に彼はボソッと呟き、お願いするように言うと緊張した様子で動いた。


「こ、こちらです…」


受付嬢に案内された地下室は広いではあるものの、流石に十数人も居ると狭く感じる。


「む、誰だ?」


簡易ベットやテーブル、イスにテレビに冷蔵庫…といった簡素な空間の中で一人の少女が彼に気がつく。


「俺は魔導協会から派遣された者だ、最高指揮官はどいつだ?」

「最高指揮官?」

「…この場合は国王となります。お嬢様」

「父上ならあそこに…」


彼の言葉に首を傾げた少女に側近らしき青年が説明して奥で会議している人達を指差す。


「そうか、ありがとう」

「あ…」


彼は通り過ぎざまに少女の頭を撫でてお礼を言う。


「話は通ってると思うが、今から俺が最高指揮官だ。異論があるなら聞いてやる」

「な、なんだね!君は!」


彼は教皇と交わした『戦場での全指揮権の譲渡』という条件を盾に、傍若無人な態度で振る舞った。


すると彼のその物言いを聞いてテーブルを囲んでいる中の一人のおじさんが立ち上がる。


「魔導協会から派遣された『枢機卿』だ…現在の戦況は概ね理解している」

「枢機卿だと…?」
「馬鹿な!早すぎる…!」
「連絡が来て昨日の今日で…!」
「陛下!本当に全指揮権を委ねるおつもりですか!?」


彼が魔導協会の証であるペンダントを見せながら言うと大人達がザワつき始めた。


「作戦は既に考えている。この戦争が終わるまでの間、俺に一時的とはいえ全権を委ねるのならば明日の朝から始めようと思うが」

「…我々にはもう打つ手は無い…魔導協会に希望を託すほかあるまい…」

「陛下…」

「陛下が、そう仰るのなら…」


自分の考えだけを告げた彼に王様は意気消沈したように呟き、周りの側近らしき人達も渋々ではあるが従うような素振りを見せる。


「話は決まったな、ならばこれから作戦を説明する」


部下達にも情報を共有するのを忘れるなよ…と、彼は釘を刺して王様の隣に移動した。
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