97 / 113
番外編『魔法使いがいく!』
5
しおりを挟む
「幸い協会不文律である不可侵協定が守られ、王族や政府関係者等は癒しの協会や魔導協会の支部がある街に避難して事なきを得ていますが…ソレもいつまで続くか…」
「それで?俺はソコで何をすれば良い?」
受付嬢の歯切れ悪く状況説明を終えると彼が問う。
「魔導協会からは街の防衛を任務としています。けど…」
「けど?」
受付嬢が資料を見てまた歯切れ悪い説明をするので彼は不思議そうに聞き返す。
「き、教皇から直々に指示が来てまして…『可能であれば防衛だけにとどまらず攻略に出て他の街を奪還して欲しい』…との事です」
「教皇からだって…!?」
「凄い…!魔導師でも滅多にない事なのに…!」
「…ふん、魔導協会の戦力増強を誇示しようって腹か…」
受付嬢の読み上げに周りがザワザワと騒がしくなる中、教皇の考えを読み取ったのか彼が面白くなさそうに呟いた。
「…まあいい、了承だ…俺はどこの担当になる?」
「A国の南側に位置する港町ですね…政府関係者や要人が数多く避難している街で、周辺にB国の軍がかなりの規模で集まっているという情報も…」
「最重要地点で最前線、最終防衛線の上に危険地帯か…初陣としては少々役不足感が否めないが、まだ所属したばかりの新人だからそこは我慢しないといけないな…」
「…お気をつけて」
受付嬢がトーンを落とした暗めな感じでの説明に彼は納得いかないのか、愚痴るように呟くも踵を返して出入り口へと歩いて行く。
「…召喚スキル『シュリオ』『ライド』」
彼は支部から出ると建物の裏の方に移動してスキルを使う。
そして上空に出現した召喚獣に乗り目的地へと向かった。
「……ほう、コレは…」
…本来ならどんなに早くても二、三日はかかるような場所に半日も経たずに着いた彼は上空から地上の様子を見ながら呟く。
地上では港町を包囲するように人が大量に集まっており、大規模なテントによるキャンプや木材で作られた急ごしらえの砦みたいな建物も複数存在している。
上空からはB国が南側に戦力を結集してる様子が一目瞭然だった。
「随分と大規模な展開だな…あの港町だけではなく、周りの街や村を睨んでいる…」
もしや…あそこに王族がいるのか?と、彼は上空から戦況を見ながら予想を立てる。
「…いや、東側にも少数ながら部隊が展開している…なるほど、協会があるのは東と南の一部の街や村…というわけか」
召喚獣でA国をグルリと周りながら現在の戦況を確認すると、人が大量に集まっている南側へと戻って来た。
「…今のところ無事なのは東側の街が一つ、そして南側に街二つで村一つ…さて…」
彼は港町の上空で待機しながらブツブツと呟き、どう動こうか…と考える。
「おそらく協会員や兵士の数も限られている…」
手薄な所から攻めるべきか…などと作戦を考えている間に太陽が沈み、辺りは真っ暗になっていた。
「それで?俺はソコで何をすれば良い?」
受付嬢の歯切れ悪く状況説明を終えると彼が問う。
「魔導協会からは街の防衛を任務としています。けど…」
「けど?」
受付嬢が資料を見てまた歯切れ悪い説明をするので彼は不思議そうに聞き返す。
「き、教皇から直々に指示が来てまして…『可能であれば防衛だけにとどまらず攻略に出て他の街を奪還して欲しい』…との事です」
「教皇からだって…!?」
「凄い…!魔導師でも滅多にない事なのに…!」
「…ふん、魔導協会の戦力増強を誇示しようって腹か…」
受付嬢の読み上げに周りがザワザワと騒がしくなる中、教皇の考えを読み取ったのか彼が面白くなさそうに呟いた。
「…まあいい、了承だ…俺はどこの担当になる?」
「A国の南側に位置する港町ですね…政府関係者や要人が数多く避難している街で、周辺にB国の軍がかなりの規模で集まっているという情報も…」
「最重要地点で最前線、最終防衛線の上に危険地帯か…初陣としては少々役不足感が否めないが、まだ所属したばかりの新人だからそこは我慢しないといけないな…」
「…お気をつけて」
受付嬢がトーンを落とした暗めな感じでの説明に彼は納得いかないのか、愚痴るように呟くも踵を返して出入り口へと歩いて行く。
「…召喚スキル『シュリオ』『ライド』」
彼は支部から出ると建物の裏の方に移動してスキルを使う。
そして上空に出現した召喚獣に乗り目的地へと向かった。
「……ほう、コレは…」
…本来ならどんなに早くても二、三日はかかるような場所に半日も経たずに着いた彼は上空から地上の様子を見ながら呟く。
地上では港町を包囲するように人が大量に集まっており、大規模なテントによるキャンプや木材で作られた急ごしらえの砦みたいな建物も複数存在している。
上空からはB国が南側に戦力を結集してる様子が一目瞭然だった。
「随分と大規模な展開だな…あの港町だけではなく、周りの街や村を睨んでいる…」
もしや…あそこに王族がいるのか?と、彼は上空から戦況を見ながら予想を立てる。
「…いや、東側にも少数ながら部隊が展開している…なるほど、協会があるのは東と南の一部の街や村…というわけか」
召喚獣でA国をグルリと周りながら現在の戦況を確認すると、人が大量に集まっている南側へと戻って来た。
「…今のところ無事なのは東側の街が一つ、そして南側に街二つで村一つ…さて…」
彼は港町の上空で待機しながらブツブツと呟き、どう動こうか…と考える。
「おそらく協会員や兵士の数も限られている…」
手薄な所から攻めるべきか…などと作戦を考えている間に太陽が沈み、辺りは真っ暗になっていた。
0
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜
山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。
息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。
壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。
茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。
そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。
明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。
しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。
仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。
そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です
びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
告知となりますが、2022年8月下旬に『転異世界のアウトサイダー』の3巻が発売となります。
それに伴い、第三巻収録部分を改稿しました。
高校生の佐藤悠斗は、ある日、カツアゲしてきた不良二人とともに異世界に転移してしまう。彼らを召喚したマデイラ王国の王や宰相によると、転移者は高いステータスや強力なユニークスキルを持っているとのことだったが……悠斗のステータスはほとんど一般人以下で、スキルも影を動かすだけだと判明する。後日、迷宮に不良達と潜った際、無能だからという理由で囮として捨てられてしまった悠斗。しかし、密かに自身の能力を進化させていた彼は、そのスキル『影魔法』を駆使して、ピンチを乗り切る。さらには、道中で偶然『召喚』スキルをゲットすると、なんと大天使や神様を仲間にしていくのだった――規格外の仲間と能力で、どんな迷宮も手軽に攻略!? お騒がせ影使いの異世界放浪記、開幕!
いつも応援やご感想ありがとうございます!!
誤字脱字指摘やコメントを頂き本当に感謝しております。
更新につきましては、更新頻度は落とさず今まで通り朝7時更新のままでいこうと思っています。
書籍化に伴い、タイトルを微変更。ペンネームも変更しております。
ここまで辿り着けたのも、みなさんの応援のおかげと思っております。
イラストについても本作には勿体ない程の素敵なイラストもご用意頂きました。
引き続き本作をよろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる