料理人がいく!

八神

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「…ふあ~…ぁ…」


女の人と青年がいなくなると彼女が眠そうにあくびをしながら出てくる。


「…今日はなんだか気が乗らないし…保管庫の食材だけで済ますかな…」


珍しく彼女は雲があまり無い晴天の空を見上げてやる気なさ気に呟いた。


そして外に出た意味も無く家の中に戻って行く。


「あー…保管庫にいっぱいあるじゃん、今日はコレで済まそう…っと」


彼女は食材保管庫として使ってる部屋から食材を取り出すと早くも昼食の準備に取り掛かる。


「昼は肉野菜炒めで、夜は山菜の天ぷらにでもしようかな」


彼女は野菜を水で洗いながら簡単に出来るメニューに決めた。


「…うーん…生理でも無いのにやる気が出ないってのも不思議だなぁ…」


倦怠感や脱力感があるわけでも無いのに…と独り言を零しながら、洗った野菜の皮を剥いていく。


「睡眠、休憩不足とか…?…とりあえず食材を切ったら昼前まで寝よ…」


不思議そうに首を傾げた彼女は予定を立てつつ作業を進める。


「ふあ~……もう少し…」


皮を剥いた野菜を切る、という作業中に彼女が眠そうにあくびをした。


「…ねむ……よし、終わり…」


彼女はボソッと呟くと作業を終わらせて片付けに入る。


「…さて、少し寝る…」

「…はあ…はあ…家に、居たのか…」


彼女が寝ようとして寝室に向かうと青年が慌てた様子でドアを開け、切れた息を整えずに呟く。


「…なに…?」

「…コレを、見てくれ」


彼女が鬱陶しそうな目を向けると青年が袋から何かを取り出す。


「…このキノコ…珍しいやつでは、ないか?」


青年はキノコを見せて息を整えながら彼女に問う。


「えー?ちょっと見せて」


青年が差し出しているキノコを彼女が疑わしそうに受け取った。


「……ホントだ…コレ、この山で年に一回採れるかどうかの珍しいやつじゃん」


彼女はキノコをマジマジと調べるように見ると驚いたように言う。


「やっぱりそうか!よし」


青年は喜ぶと袋からケータイを取り出す。


「…なにしてんの?」

「あのキノコが生えてた場所にあの子を待たせているんだ」


もし珍しかった場合に直ぐ採れるように…と青年は彼女に説明して電話で女の人にキノコを採るよう指示する。


「へぇ…何本ぐらいあった?」

「結構密集してて、大きいのは9本ぐらいだったか…とりあえず7本だけ採るよう指示した」


彼女の問いに青年は思い出すようにして返した。


「…良くもまあ、こんな珍しいキノコを見つけられたもんだ…」


彼女はキノコを掲げるように上に上げてマジマジと見ながら呟く。


「ランニングのコースを少しだけ険しい場所に変えてみたんだ、そしたら…」

「あー…まあ私はあんまり危なそうな所には行かないから…」


盲点だったかぁ…と彼女が青年の説明を聞いて少しだけ悔しそうに唸る。


「…とりあえずありがとう、と言っておこう…今日の夕飯はキノコの土瓶蒸しにしようかなー」


彼女は青年にお礼を言うと夕飯のメニューを変え、女の人がキノコを持ってくるのを嬉しそうに待つ。
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