料理人がいく!

八神

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 食後。


女の子と男は人でごった返す食堂から出て一旦応接室へ。


女の子は時間までやる事があるらしく部屋から出て行き、男が1人取り残されるという状況に。


だが男は袋から本を取り出して読み始めたのでそんな状況でも特に気にはしていない。


「…そろそろ時間だ」


ソファに背を預けて本を読んでる男に戻って来た女の子がドアを開けて告げる。


「ふん…随分と待たせてくれたものだな」


男は本を袋に入れると皮肉を言いながら立ち上がった。


女の子は男の皮肉を無視して教皇の居る部屋まで案内する。


「…失礼します」


女の子がドアをノックすると直ぐにドアが開き、頭を下げながら入室して行った。


「おお、魔導の巫女よ…良くぞ無事に戻られましたね…そしてそちらの男が報告にあった…」


部屋の奥に居た丸メガネのおじさんが女の子に話しかけると目を細めながら何も言わずに入室した男に視線を向ける。


「…貴方が魔導協会の総帥である教皇か…何度か姿は見た事はあるが、まさか会う事になるとはな」

「…口を慎め」


男が品定めするように見て言うと女の子が険しい顔で窘めた。


「よいよい、態度や言葉遣いぐらいは大目に見てあげなさい…実力が伴っているのなら」


おじさんは人当たりのよさそうな笑顔で言う。


「それで…実力の方はどうなのです?」

「…実際に戦っている所は見ていないので分かりかねますが…力の方はとてつもないです」


表情を変えずに問うおじさんに女の子は前半は困ったように言い、後半はキッパリと言い切る。


「ふん…どうやら教皇とやらの目も節穴らしいな、コレを見ろ」


女の子の報告が終わると男がつまらなそうにがっかりした感じで表示を大きくした。


「なるほど…報告にあった『魔導召喚師』というのは本当だった、というわけですか…」


男の表示を見ておじさんは笑顔だった表情を驚きに変える。


「…コレは是非とも魔導協会に欲しい人材ですね」

「…条件次第では魔導協会に属してやってもいい」


おじさんの呟きに男が投げやりな感じで言った。


「分かりました、魔導協会側を脅かす内容以外であればいかなる条件でも呑みましょう」


男の言葉におじさんは内容も聞かずに笑顔で即答する。


「教皇!内容も聞かずにそんな…!」

「魔導協会を脅かす内容以外は…だと?その脅かすとやらの解釈次第では俺の条件が呑めないとか言う気ではないだろうな?」


女の子が焦ったように言うと男が怪訝そうに問う。


「…やはり条件の内容を聞いてみない事には判断が出来ませんか…どのような条件ですか?」


男の問いにおじさんは少し考えて聞き返した。


「…本来なら俺は恩人の側から離れたくない、だから魔導協会側が何かする場合には俺の都合に合わせろ」

「分かりました」

「次に俺が行く戦場での指揮権は全て俺に委ねろ」

「…何故です?」


一つ目の条件は即答したおじさんだったが二つ目の条件には理由を聞く。


「俺はもう人も魔物も殺さない…そのやり方が阻まれないように、だ」

「…そのやり方は味方にも適用されますか?」

「いや、あくまで俺のやり方だ…だが、戦闘が終わっている地域での殺しには人や魔物を問わず厳重に罰する」

「分かりました、その条件を受け入れましょう」


男の説明におじさんは納得できたのか条件を受け入れる。
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