料理人がいく!

八神

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「…ふん、褒めて俺のご機嫌取りをしようってワケか?」

「…どう思おうとご自由に」


面白くなさそうに鼻を鳴らして聞く男に女の子はさながら営業スマイルのように笑いながら返す。


「…本題に入りましょう、貴方には是非魔導協会に入っ…いえ、戻っていただきたい」

「戻る…?戻るも何も俺は魔導協会に所属などしていないのだが?」


女の子の言葉に男は怪訝そうな顔で聞いた。


「…魔導協会のやり方では魔導師になれない…と悟ったから入らなかったものを、望みが叶わなかった…かのような言い方にしないでもらおう」


男は続けて女の子の表現への訂正を求める。


「…ソレは失礼、貴方をそこらの有象無象と一緒にしていた事は謝りましょう」


女の子は本音を隠しもせずに軽く頭を下げた。


「…見え透いた事を…そうまでして俺の気を引きたいのか?」


女の子の心の内を分かっているかのように男が不快そうな表情で問う。


「…やりづらい相手だ…」

「…どうやらまだ俺をそこらの有象無象と一緒だと思ってるようだな…」


聞こえるようにボソッと呟いた女の子に男はヤレヤレ…と呆れたようにため息混じりに呟く。


「興味は湧くでしょう?」

「…彼女と出会う前の俺なら、な…だが冷たい態度や蔑まれた程度では二番煎じもいいとこだ」


営業スマイルのような笑顔で聞いてきた女の子に男は大して効果が無い事を告げる。


「なるほど…ではコレならどうでしょう?」


女の子は遂に最終手段を取る事にしたのか上着を脱ぎ始めた。


「あー…なんというか、その…だな…」

「ふふ…貴方が望むなら、この身体…好きにしても…」


言い淀む男にチャンスを見出したのか女の子はブラに手をかける。


「…残念ながら、その年頃の女の子の裸には見慣れてしまったんだ」

「なっ…!?」


男が悩んだ末に告げた言葉は、ブラを外そうとフックに手をかけた女の子には思わぬ一言だった。


「ソレに、俺はロリコンじゃないから好きにと言われても…」


見慣れてなければ興奮状態で頷いていたかもしれないが…と男はバツが悪そうに頭を掻きながら言う。


「……う、う…ぐすっ…」


その言葉に女の子は泣きそうになりながらも涙を堪えて鼻を啜る。


「…覚悟を台無しにして悪いと思うが…」


女の子の行動は男にとって犯罪者or悪者扱いというバッドな結果の選択肢しか無い。


ソレでも男は泣きそうになっている女の子に一応謝罪の言葉をかけた。


「や、優しく…しないで…うっ…ぐすっ…うう…」

「いや、別に優しくしたつもりは…」


溢れる涙を拭いながら突っぱねるように言った女の子に男は否定するように言いかける。


「まあ、なんだ…その、貞操を守れて?良かったじゃないか」

「…うっ…うわーん…全然良くないよぉぉ…私、もう直ぐで26なのにまだ処女なんだよぉぉ…」


男が困惑したように声をかけると遂に女の子は泣き始めた。


「巫女だから、って誰も抱いてくれないしぃ~…この外見の所為でロリコンじゃない、犯罪だから、って敬遠されるしぃ~…私だって人並みに行為への興味や性欲だってあるのにぃ~…!」

「…そ、そんなに本音を言わなくても…」


泣き崩れるように号泣して不満を零す女の子に男は演技なのか本性なのか分からず更に困惑する。


「うわーん…周りは彼氏と何回やった、だの気持ち良かったとか話してるのに…私なんてまだバ○ブだよぉ~…」

「…これは困ったな…」


ボロボロ泣きながらボソボソ呟く女の子に男は慰めるか否かを迷う。
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