60 / 113
60
しおりを挟む「??」
「畑を増設したんだけど…増やした分何を作ろうか考えててね」
不思議そうな顔をする男に彼女が話し始めた。
「…なるほど、確かに俺たちには関係の無さそうな話だな」
手伝おうにもやり方が分からず君の手を煩わせるだけだし…と男は沈んだような表情になる。
「ソレで…既存の物を増やすか、新しい物を増やすか、既存の物を組み合わせて新種を作るか、新しい物を組み合わせて新種を作るか…で迷ってる」
「…お、おお…」
一気に複雑化した話に男はパチパチと瞬きをするもなんとかついて行こうとした。
「その新しい物…と言うのはその畑に無い物で、種から育てるやつ…だよな?」
「ん」
男の確認に彼女は短く肯定する。
「既存の物を組み合わせる、新しい物を組み合わせる…で出来る新種とはそう簡単に成功するのか?」
「さあ?ソレばっかりはやってみないと分からないけど…成功させるのは難しいんじゃない?何が出来るか、組み合うのかも分からないし?」
男が疑問を聞くと彼女は適当に疑問系で返した。
「…ソレなら既存の物か新しい物を……いや、だがあえて攻めてチャレンジするのも…」
男は自分の意見として何かを言いかけて考え込む。
「…うーむ…」
「な?迷うだろ?」
腕を組んで考え込む男に彼女が珍しく笑いながら聞く。
「…そうだな、悩みというほどでは無いが…」
微妙な表情をしながら男が言いかける。
「とりあえず消去法で既存か新しい物に絞られるんだけど、そっからまた…」
「うむぅ…食べる側からしたら新しい食材はありがたいが、育てる事や料理する事を考えると…」
俺が作るワケじゃないから余計に…と彼女の言葉で男は更に考え込んだ。
「果物は木だし接ぎ木で増やせるからいいとして、やっぱり炭水化物系の穀物系を増やした方が良いかと思ってるんだけど…」
「ち、ちょっと待ってくれ、これ以上選択肢を増やされると…!」
彼女が育てる植物の種類を話すと男が焦ったように制止した。
「えー?選択肢はまだまだあるよ?穀物か野菜か、穀物系にするなら何を多めに育てるか、野菜系にするならどの種類にするか…とか」
「…の、農業ってそんなに奥が深いのか…」
不満そうに言う彼女に男は呆然とした様子で呟く。
「いや、今はかなり浅い方だと思うけど?ただ選択肢が多いだけで」
その呟きを否定するように彼女が聞き返す。
「…すまない、どうやら俺では君の力にはなれないようだ…」
「うん、分かってた」
悔しそうに椅子から立ち上がった男に彼女はバッサリと言い放つ。
「…っ…!…くぅ…!」
その言葉に無力感が出たのか男は泣きそうになって走って家の中から出て行く。
「な、なにかあったのか…?」
少しして青年が様子を伺うように控え目にドアを開けて聞いてくる。
「…なんで?」
「いや…なんかアイツが泣きそうな顔で走って行ったから…」
彼女が聞き返すと青年は心配したように言う
「別に何も無いけど…しいて言えば考えてる事を話しただけだし」
「…そ、そうか…」
青年は彼女の返答を聞いてどっちの意味でか分からないが、ホッと胸を撫で下ろした様子だった。
「…気になるんならあんたも聞く?」
アイツだけじゃ不公平だしね…と彼女が提案する。
「い、いや…今回は遠慮しておく…」
「そう?まああんた達には期待してないからどうでもいいけど」
青年の辞退に彼女は興味無さそうに返してまた目を瞑って考え始めた。
0
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜
山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。
息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。
壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。
茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。
そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。
明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。
しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。
仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。
そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる