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しおりを挟む「ぐふっ…!?」
模擬戦闘が始まって5分もしない内に青年が倒れ、HPゲージが赤色になり点滅し始めた。
「あ…えと、あの…やりすぎでしたか…?」
対する女の人は全くの無傷で困惑した様子で倒した青年に駆け寄る。
「…な…!?」
「…結局、ステータスの差が埋まれば経験だのレベルの差だのは関係ないんだな」
信じられない物を見るように驚愕して言葉を失ってる男の隣で彼女はつまらなそうに呟く。
「…い、いったい、どんなステータス強化を…?」
「ん~?『腕力強化』と『脚力強化』、『硬化』に『視力強化』…あとは『集中力強化』や『知力強化』かな?」
呆然としたように聞いてくる男に彼女は適当に返した。
「腕力強化や脚力強化、硬化は分かるが…視力強化や集中力強化…知力強化とは…?」
「さあ?動体視力とかの目の良さが上がるんじゃないの?あとは集中力が上がるとか…頭の良さが上がるとか…」
「頭の良さだと!?」
彼女の適当な返答の最後の方に男が食い気味で反応する。
「ど、どういう風に頭が良くなるんだ!?」
「どういう風って…判断力や理解力、記憶力とかが上がるんじゃないの?」
興奮したように聞いてくる男に彼女は鬱陶しいものを見るような表情になって聞き返す。
「…なんと…!そんな夢のような…!……頼みがある!!」
男は感激したように呟くと彼女の前で膝を着いた。
「同じ料理でも良い…だから俺の食事は毎日三食『知力強化』の効果がある物にしてくれないか?この通りだ!」
そして彼女に頼みながら深々と頭を下げる。
「えー…面倒くさいから嫌だ」
「ソコをなんとか…!頼む!」
彼女が却下するも粘るように男はまた頭を下げた。
「俺の願いを聞いてくれるなら君の奴隷にでも下僕にでもなんでもなろう!なんでも言う事を聞くからお願いだ!この通りだ!」
「…ぐっ…俺、から…も、頼む…!」
なりふり構わず頭を下げる男を見て可哀想になったのか、何か思う事があったのか、何かを感じたのか…
青年も体を引きずるように歩いて来て彼女に頭を下げて頼む。
「…そこまで言うんなら…」
流石の彼女も青年と男の二人に頭を下げられるとアレなのか…嫌そうに渋々折れる。
「本当か!?ありがとう!お前のおかげだ!」
「うぐっ!?」
男は彼女の嫌そうな承諾を聞いて嬉しさを抑えきれずに青年に抱きついた。
が、青年は怪我が痛むのか顔を顰める。
「…と言うかあんた死にかけじゃん」
「…回復、アイテムが…さっきで、底…尽きていた…」
未だにHPゲージが赤で点滅している青年を見て彼女が呆れたように言うと、苦しそうに呟いた。
「…まあ私の所為でもあるし…スキル『料理』」
彼女は納得いかなそうな顔をして袋からフライパンを取り出すとスキルを使う。
「包丁スキル『千切り』『笹切り』フライパンスキル『瞬間加熱』」
袋から取り出した山菜やきのこを彼女はスキルで鮮やかに空中で切り刻んで炒めていく。
「はいよ」
「…すまない…」
彼女が料理を入れた皿とスプーンを差し出すと青年は申し訳なそうに受け取って食べ始める。
「今日の夕飯からが楽しみだ…!ようやく俺の夢が現実に…!」
青年が緑色の光に包まれ、HPゲージが赤から黄色に変わると男はワクワクした様子で呟いた。
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