料理人がいく!

八神

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「 やったぞ!」


夕方。


日が沈み始めて辺りが暗くなってきた頃、青年がテンション高めに山奥の小屋に戻って来る。


「おー…おかえり、丁度夕飯が出来たよ」

「…その様子だと上手く行ったようだな」


彼女が大きな鍋の蓋を開けながら言うと男が本を閉じて立ち上がった。


「ああ!なんとか交渉は成立したぞ!」

「そう、お疲れー」


嬉しそうな青年の言葉に彼女はどうでもよさそうに適当に返す。


「な、なんか反応が薄いな…」


自分の予想とは違ったのか青年は少し戸惑ったように呟く。


「え?いや…補助用の飲み物があったからそんなに難しくなかったんじゃない?」


何も使ってないんなら褒めるぐらいはするけど?と言って彼女は大きな鍋を持ち上げる。


「…そうだな、今回の交渉はアレのおかげで上手く行ったようなものだ…」


青年は落ち込んだように呟くと彼女が外に出やすいようにドアを開けた。


「お、今日は気がきくねぇ…ありがと、ついでにこの前買った大きな皿を持って来てくれない?」


青年の行動に彼女は意外そうに褒めるとお礼を言いながら外に出て頼み事をする。


「お安い御用だ…数は?」

「6つ」

「了解した」


青年は彼女の返答を聞いてドアを閉めると棚の下側から大きな皿を6つ数えてから外に持って行った。


「ところで…今日の夕飯はなんだ?」

「茶碗蒸し」

「ちゃわ…?」


彼女に夕飯のメニュー名を聞くも青年はどうやら前半しか聞き取れなかったらしい。


「聞くより見た方が早いね…ソレちょうだい」

「ああ」


彼女は青年から大きな皿を受け取ると並べて鍋の蓋を開ける。


「…おお、良い匂いだな…」

「あんた達に分かりやすく伝えるなら、海鮮卵ゼリー…ってところかな?」


鍋から出た湯気の匂いを青年が嗅いで呟くと彼女が軽く料理の説明をしながら袋からお玉を取り出し、茶碗蒸しを大きな皿にぶち撒けていく。


「…すぐ崩れるものなのか…?」

「魔物に見た目は関係ないっしょ」


皿の上でボロボロに崩れてる茶碗蒸しを見て青年が漏らすと彼女がどうでもよさげに返す。


「…あんた達のは一応ちゃんと作ってるから安心していいよ」


睨むようにして青年を見て付け足すように言った彼女は料理を盛り終わった皿を移動させ、スキルで鍋やお玉を綺麗にした。


「…いや、そういう意味で言ったのでは…」


青年が弁明しようとするも彼女はスタスタと家の中に入って行く。


「おお、先に食べてるぞ…これは不思議な食感でやはり美味い」


彼女を追いかけるように青年が家の中に入ると男が丼椀を持ちながら料理の感想を言う。


「…俺の分はこれか」


すると青年はすかさず椅子に座ってテーブルの上に置いてある丼椀の蓋を開ける。


「…おおぅ…美味い…!魚介の旨味が濃縮されてるような…不思議な味だ…!」


スプーンを手に取るや否や茶碗蒸しを食べた青年はその味に感動したように呟く。


「…ところで、コイツが交渉に成功したと言っていたが…と言う事は魔物が邪魔をしないBプランの方で良いんだよな?」


茶碗蒸しを半分まで食べると男が丼椀をテーブルに置いて彼女に問う。


「Bプラン?」

「ああ、お前が出向いてる間に俺と彼女でゾンビから人々を戻す作戦を立てていたんだ…まずはAプランだが…」


不思議そうに聞いて来た青年に男が説明し、作戦の内容も詳しく話した。
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