料理人がいく!

八神

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更に歩く事10分。


彼女達は街の前で立ち止まる。


「…外から見た感じでは滅んだとは思えないねぇ」

「「グルルル…!」」


彼女が街の入口に近づき呟くと魔物が警戒したように唸った。


「う~…あ~」「う~…あ~」
「う~…あ~」「う~…あ~」

「うわっ…!…っと…」


街に入るギリギリの所でどこからか現れた人達が呻きながら彼女に近づいて来る。


突然の人の登場に彼女は驚きながらも後ろに下がった。


「う~…あ~…」「う~…あ~…」
「う~…あ~…」「う~…あ~…」

「…あれ?」


街と外の境界線の前で急に立ち止まった人達は彼女達を見て呻くだけで近づいてくる様子は無い。


そんな変な人達を見て彼女は不思議そうに首を傾げる。


「応急処置として、我々が外壁に魔除けの札を貼りましたので中の魔物達は外には出れません」

「…ふぅ…他のメンバー達は?」


女の人の説明にようやく体調が回復してきたであろう青年が深呼吸して聞いた。


「…一部は私と同じく援軍の要請に行きました…」

「…そして大多数は乗り込んだ…か、だがこの様子では…」


女の人の返答に青年は事態を察し深刻な状況であるかのように呟く。


「…一ついい?」

「なんでしょうか?」


ずっと街の入口で立ち止まり呻くだけの人達を見て彼女が確認をとる。


「魔除けの札って確か人間には効力無いんだよね?なんでこの人達に効いてるの?」

「それは…」


彼女の質問に女の人は言いづらそうに口を噤む。


「…この街の人達が魔物になったから、だろう…この状態を見る限りおそらく騎士団のメンバー達も…」

「は?」


青年が代わりに説明するも彼女は意味分からそうに聞き返す。


「彼ら…と言っていいのか…上の表示を見てくれ」

「……『状態異常ゾンビ』…?」


彼女が青年に言われるがままに呻く人達の上の方を良く見ると…『村人 Lv2 状態異常 ゾンビ』と表示されていた。


「ゾンビとなった人達は人を襲い、仲間を増やしていく…だから魔物に認定されるんだ」

「へぇ…ゾンビってそういう状態だったんだ」


てっきり死体が生き返るやつだと思ってたよ…と彼女は意外そうに呟く。


「死体が生き返る…か、動くようになるという点ではその認識でもあながち間違ってはいない」

「…ゾンビとなった人々や魔物は身体が動く状態にある限り、両腕が無くても、両脚が無くとも、たとえ頭が無くとも襲いかかってきます」


青年の皮肉気な物言いに女の人が補足説明する。


「ふーん…痛みを感じないのは幸か不幸か…」


ただ呻くだけの人達を見て彼女はどうでもよさそうに言う。


「ってかなんでゾンビになってんの?」

「…騎士団の暗部による失敗さ、人為的パンデミックというやつか」


彼女の疑問に青年は蔑むように笑いながら答える。


「ですが、魔物が襲ってこなければ…」

「その不用心さがこの結果を招いたのだろう?…元々あの研究は人道に反している外法だったんだ、こうなる事ぐらい容易に想像できた」


女の人の反論に青年が呆れたように返すと何も言えずに黙った。


「…あー、なるほど…ソレで街が滅びたって言ったワケね」


出会った時の女の人の発言を思い出して納得したように彼女は手をポンと叩く。
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