料理人がいく!

八神

文字の大きさ
上 下
8 / 113

8

しおりを挟む
「…そのスキル、便利だな」

「まあね」


青年の羨ましそうな呟きを流して彼女は大きな鍋を片付ける。


「…そういえば…さっきの料理、食べても何の効果も無かったようだが…」

「そりゃスキルを使ってないから当たり前だよ」

「…なぜだ?」


皿を戸棚に片付けている彼女に青年が問う。


「スキルを使えばMPを消費するじゃん?特に必要でも無いのにバンバン使ったら、必要な時に使えなくなるっしょ?」

「ソレは、そうだが…」


彼女の答えに青年は納得してない様子で歯切れ悪く返す。


「…なに?」


その青年の態度に彼女はイラついたように聞き返した。


「だって君…いや、すまない、俺の勝手なわがままだった」


青年は何かを言いかけると頭を下げて謝る。


彼女は特に何も言わずに外に出て空になった大皿を回収し、スキルを使って綺麗にして棚に片付けた。


「?どこに行くんだ?」

「畑」


カゴを背負った彼女は青年の問いに短く返して外に出て行く。


「畑?君は農業もやっているのか?」


外に出た彼女の後をついて行くように青年は小走りで近づきながら疑問を問いかける。


「…なんでついて来るの?」

「何が起こるか分からないからな」

「ヒマならさっさと街にでも戻れよ」


護衛のように後ろからついて来る青年に彼女は鬱陶しそうに手を振った。


「君を心配しているんだ」

「…なに?あんた、この外見に惚れたの?」


真顔で言い切る青年に彼女は眉をしかめて聞く。



「そ、そういうワケでは…」

「…ふーん?…この身体でシてみるのも悪くないかもな…試してみる?」

「…え?」


彼女は困惑している青年の手を取ると早足で歩き出す。


「ちょっ…!?」


畑に着くや否や彼女は青年を押し倒して上に乗る。


「な、な、なにを…!?」

「…うーん…何の変化も無いなぁ…冗談だよ、ゴメンな」


押し倒された青年は状況が理解出来ずパニックになるも、彼女は少し呟いて直ぐに退いた。


「…は…?」

「…え、もしかして期待してたとか?」


ポカーンと口を開く青年に彼女は不思議そうな顔で聞く。


「ち、違う!そんな事は…!」

「そう?まあどうでも良いけど」


青年は全力で否定するも彼女は興味無さそうに返してどこかに移動する。


「…もしかして、からかわれたのか…?」


状況を理解した青年が立ち上がりながら呟いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...