商人でいこう!

八神

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外伝『用心棒転生』(更新不定期)

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「はっはっは…ではよろしく頼むぞ」


お爺さんの目の色が変わって部屋の真ん中に移動すると生徒や指導員達が一斉に壁際へと散る。


「心の準備ができたら向かい側に立ちなさい」

「いつでもいいぞ」

「…では!」


少年は明らかに本気の目をしているお爺さんを歯牙にもかけないように歩きながら準備万端であることを告げると、男が審判役としてお互いの間に立つ。


「急所と顔面はルールで禁止とする!片膝か背中が床に着くか、試合の続行が不可能だと我々が判断した場合は止めさせてもらう…では、始め!」

「ふっ!」


男がルールを説明して合図を出すや否やお爺さんが少年に向かって素早く飛び込み喉を狙って突いた。


が、少年は読んでいたかのようにゆらりと緩やかに動くと最小限の動作で避ける。


「はっは、アレを避けるか」

「「「!!?」」」


お爺さんは笑いながら中段突き、下段蹴り、上段蹴り、裏拳と次々に攻撃を繰り出して素早く攻めるが少年には当たらず空を切ってばかりだった。


「す、凄ぇ…!師範の攻めを、全部薄皮一枚のギリギリで躱してる…!」

「まさか師範の動きが読まれてるのか!?」


生徒や指導員達がお爺さんと少年の試合を見て驚きを隠せない様子を見せる。


…それから5分後。


「…ふう、やめだ。これ以上続けても無駄だ」


少年への攻撃が一度も当たらず疲れたのかお爺さんは試合を途中で止めた。


「気の起こり…いや、気配か?まさかその歳で『先の先』を会得していようとはな…」

「…礼を言う。おかげで実戦のカンがある程度は戻ったようだ」

「はっはっは!まるでブランクでもあるような言い方だな。自惚れるのもいい加減にしろよ、小僧」


少年が頭を下げてお礼を言ったのに何故かお爺さんは怒ったかのように刺々しい言い方をする。


「世の中にはお前さんよりも強い者などいくらでもいる。この年寄りに勝ったぐらいで天狗にならない事だ」

「…ほう?それは是非とも戦ってみたいところではあるが…今の俺はそれどころではなくてな。ご指導、ありがとうございました」


睨みながらお爺さんの言葉に少年はニヤリと笑うもすぐに自制したように表情を戻すと、頭を下げてお礼の言葉を言い部屋から出て帰宅した。
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