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「…ただいま」
「お帰りなさいませ…あら?その人達は?」
「えーと……今日だけ泊めてくれない?」
「かしこまりました」
帰宅するとメイドの一人が3人の女性を見て不思議そうに聞いてくるので理由を言わずにお願いすると何も聞かずに受け入れてくれる。
「…あ!」
「…お、お前達は…!無事だったのか!」
廊下を歩いている最中に若い女が元騎士団長の男を見て声を上げると男は窓拭きを途中で止めてこっちに駆け寄ってきた。
「この人達に助けてもらって…貴方は?なぜ奴隷などと…」
「…これは…その、色々あってだな…」
「…まさか!王子や王女も…!」
「ああ、なんという悲劇…!」
お婆ちゃんが男の表示にツッコむと暗い顔で言い淀み女性と女が天を仰ぐ。
「とにかく、王子と王女はそこの部屋の中で勉強中だ」
「…呼んだ?」
「…!おお…!王女様…!お元気そうで!」
「…婆や?無事だったのね!」
…廊下の会話が聞こえていたのか元王女が部屋から出てきてお婆ちゃんと感動の再会さながらに抱き合う。
「…良かったね」
部外者の俺が居てもしょうがないので自室に戻り夕飯の時間まで各国の相場表を整理する事にした。
…夕食後。
やる事も無いのでふと思いついて柔軟運動をしてるとドアをノックする音が。
「…開いてるよ」
「「失礼します」」
返事をすると何故か王子と王女の双子に元騎士団長の男、3人の女性という大勢で部屋に入って来る。
「…どうしたの?こんな大勢で…」
「…君を捕まえたら、私達は国を取り戻せるんじゃないかと思ってな」
「…え?」
「…すまない。ほんのジョークのつもりだったのだが…」
ニヤリと笑った男の予期せぬ発言に俺が固まるとその様子を見て即座に頭を下げて謝る。
「…奴隷は主人には逆らえん。時には暴動や反乱を起こす事もあるが、ソレは数が揃って始めて成り立つ事だ」
「…あ、居たんだ…」
こっちからは見えない位置である廊下側の壁に背もたれていたんであろう用心棒のおじさんの説明に俺はちょっとだけ安心した。
「…無礼な真似をお許しくださいご主人様。彼も悪気があったわけでは…寛大なお心でどうぞ御慈悲を…」
「…え?あ、うん…でも流石にシャレにならないから、次からは気をつけてほしい」
王女が王子と共に頭を下げて謝るのでとりあえず受け入れて注意だけはしておく。
「…だから俺はやめておけと言ったんだ」
「すまんすまん。他の奴隷の扱いを見る限りまさか本気にするとは思わなかったんだ」
笑って流して終わるだろうと…と、おじさんの呆れたような言葉に男は反省したように頭を掻く。
「…まさかこんな悪趣味なドッキリを仕掛けるためだけに来たワケじゃないよね?」
「はい。当然これは彼個人の悪ふざけでございます…私達は確認したいことがあったのでお邪魔させて頂きました」
俺が若干イラつきながら聞くと王女が否定して本来の目的を話す。
「…確認?」
「ご主人様が我々の祖国を魔王軍の手から取り戻してくれた、と聞きました。そしてその国の統治をぼ…私達に任せてくれるはず…とも」
「…まあ、やりたいんなら好きなようにやれば良いんじゃない?」
俺に国とか管理出来ないし…と、お姉さんから聞いたんであろう王子の言葉に投げやりで適当な感じで返答する。
「…!それは、私達に祖国を任せてくれる…と受け取ってもよろしいのですか?」
「…どう思う?多分お姉さんは賛成してるっぽいけど」
「…一介の用心棒でしかない俺にもそんな重大な判断を委ねるのか……そうだな、デメリットや問題点が見当たらない以上俺も賛成だ」
「…だって」
王女の希望に満ちたキラキラした目での再度の確認に俺はおじさんに聞いた後にそのままパスするように返す。
「…そ、そんなアッサリ決めていい事なのか…?」
「…決まったかどうかはあのお姉さんに直接聞かない事にはね…とりあえず俺達は賛成派って事で」
「…おま…君が一番偉いんじゃないのか?権力を振りかざせばどうにでもなるだろう?」
「いや、でも…世の中を見てきた大人の意見の方が正しそうじゃん?」
…俺が決めたわけじゃないから責任も感じなくて済むしなぁ…と俺は心の中で事なかれ主義みたいなことを考えながら男にそれらしい事を告げた。
「…変わっていますね。一見では世の中を知らない世間知らず、箱入りだと思われてもおかしくない…ですが判断そのものは素晴らしい」
自分に出来ない事は他人に任せる…信じる心とは美しい。と、お婆ちゃんが意味不明な事を言い出した。
…おお、無責任を信じる心と言い換えた…宗教って凄い。
「お帰りなさいませ…あら?その人達は?」
「えーと……今日だけ泊めてくれない?」
「かしこまりました」
帰宅するとメイドの一人が3人の女性を見て不思議そうに聞いてくるので理由を言わずにお願いすると何も聞かずに受け入れてくれる。
「…あ!」
「…お、お前達は…!無事だったのか!」
廊下を歩いている最中に若い女が元騎士団長の男を見て声を上げると男は窓拭きを途中で止めてこっちに駆け寄ってきた。
「この人達に助けてもらって…貴方は?なぜ奴隷などと…」
「…これは…その、色々あってだな…」
「…まさか!王子や王女も…!」
「ああ、なんという悲劇…!」
お婆ちゃんが男の表示にツッコむと暗い顔で言い淀み女性と女が天を仰ぐ。
「とにかく、王子と王女はそこの部屋の中で勉強中だ」
「…呼んだ?」
「…!おお…!王女様…!お元気そうで!」
「…婆や?無事だったのね!」
…廊下の会話が聞こえていたのか元王女が部屋から出てきてお婆ちゃんと感動の再会さながらに抱き合う。
「…良かったね」
部外者の俺が居てもしょうがないので自室に戻り夕飯の時間まで各国の相場表を整理する事にした。
…夕食後。
やる事も無いのでふと思いついて柔軟運動をしてるとドアをノックする音が。
「…開いてるよ」
「「失礼します」」
返事をすると何故か王子と王女の双子に元騎士団長の男、3人の女性という大勢で部屋に入って来る。
「…どうしたの?こんな大勢で…」
「…君を捕まえたら、私達は国を取り戻せるんじゃないかと思ってな」
「…え?」
「…すまない。ほんのジョークのつもりだったのだが…」
ニヤリと笑った男の予期せぬ発言に俺が固まるとその様子を見て即座に頭を下げて謝る。
「…奴隷は主人には逆らえん。時には暴動や反乱を起こす事もあるが、ソレは数が揃って始めて成り立つ事だ」
「…あ、居たんだ…」
こっちからは見えない位置である廊下側の壁に背もたれていたんであろう用心棒のおじさんの説明に俺はちょっとだけ安心した。
「…無礼な真似をお許しくださいご主人様。彼も悪気があったわけでは…寛大なお心でどうぞ御慈悲を…」
「…え?あ、うん…でも流石にシャレにならないから、次からは気をつけてほしい」
王女が王子と共に頭を下げて謝るのでとりあえず受け入れて注意だけはしておく。
「…だから俺はやめておけと言ったんだ」
「すまんすまん。他の奴隷の扱いを見る限りまさか本気にするとは思わなかったんだ」
笑って流して終わるだろうと…と、おじさんの呆れたような言葉に男は反省したように頭を掻く。
「…まさかこんな悪趣味なドッキリを仕掛けるためだけに来たワケじゃないよね?」
「はい。当然これは彼個人の悪ふざけでございます…私達は確認したいことがあったのでお邪魔させて頂きました」
俺が若干イラつきながら聞くと王女が否定して本来の目的を話す。
「…確認?」
「ご主人様が我々の祖国を魔王軍の手から取り戻してくれた、と聞きました。そしてその国の統治をぼ…私達に任せてくれるはず…とも」
「…まあ、やりたいんなら好きなようにやれば良いんじゃない?」
俺に国とか管理出来ないし…と、お姉さんから聞いたんであろう王子の言葉に投げやりで適当な感じで返答する。
「…!それは、私達に祖国を任せてくれる…と受け取ってもよろしいのですか?」
「…どう思う?多分お姉さんは賛成してるっぽいけど」
「…一介の用心棒でしかない俺にもそんな重大な判断を委ねるのか……そうだな、デメリットや問題点が見当たらない以上俺も賛成だ」
「…だって」
王女の希望に満ちたキラキラした目での再度の確認に俺はおじさんに聞いた後にそのままパスするように返す。
「…そ、そんなアッサリ決めていい事なのか…?」
「…決まったかどうかはあのお姉さんに直接聞かない事にはね…とりあえず俺達は賛成派って事で」
「…おま…君が一番偉いんじゃないのか?権力を振りかざせばどうにでもなるだろう?」
「いや、でも…世の中を見てきた大人の意見の方が正しそうじゃん?」
…俺が決めたわけじゃないから責任も感じなくて済むしなぁ…と俺は心の中で事なかれ主義みたいなことを考えながら男にそれらしい事を告げた。
「…変わっていますね。一見では世の中を知らない世間知らず、箱入りだと思われてもおかしくない…ですが判断そのものは素晴らしい」
自分に出来ない事は他人に任せる…信じる心とは美しい。と、お婆ちゃんが意味不明な事を言い出した。
…おお、無責任を信じる心と言い換えた…宗教って凄い。
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