商人でいこう!

八神

文字の大きさ
上 下
150 / 208

149

しおりを挟む
…すると少しして目の前にかなりの大きさの火柱が上がり首都ごと周辺の魔物を巻き込んだ。


「…あらまー…おっそろしい威力…」

「…下級どころか中級でもひとたまりもないだろう。めちゃくちゃだ」


俺と情報屋の男が口半開きで何も言えずただポカーンと目の前の光景を見ていると…


お姉さんはデジカメのような物を片手に予想外っぽく驚いたように呟き、おじさんは現実逃避するかのように軽く頭を振りながら言う。


「…え?なに?…ドラゴニック…ボルケーノ…?…技名?ふーん…」

「…なるほど。原種のドラゴン3体の合体攻撃は『ドラゴニックボルケーノ』…と」


ドラゴン達が聞いてもいないのに技名を教えてくるので周りに聞こえるように言うとお姉さんがメモする。


「…なんで首都は無事なんですか…?」


巨大な火柱が消えた後の光景に情報屋の男が理解できないかのように呟く。


「あ、ホントだ。なんで?」

「さあ?魔物だけを対象にしたんじゃないの?」

「…二次災害を心配しなくて済むのはありがたい事だ」


俺が疑問に思って聞くもお姉さんは適当な予想で返しおじさんが周りへの影響が無い事に安心した。


「…おかしくないです?」

「…うーん…二度目だからなぁ…」


前の時も木の砦が燃えてなかったし…と、俺達の反応に納得がいってないような男にそう返した。


「…あ。気づかれた」

「え?」

「流石は上級…あの威力でも耐えられるなんて…こっちに来る」


お姉さんは何か魔法を使っていたのか魔物の動きを察知したような報告をして来た。


「…もしかしてヤバイ?」

「全然。今度はもっと面白い事が起きるわよ」


俺が焦りながら聞くもお姉さんは余裕そうに返してまたしても地面に魔方陣を展開させる。


「伝説のドラゴンと封印されしドラグーン…原種のドラゴンの合体攻撃はどれほどのもの?」


お姉さんが楽しそうに呟くとドラゴン達の身体からオーラみたいなのが溢れ出す。


そして一瞬だけ発光して眩しい光が辺りを包んだ…ような気がする。


「…あーらら、オーバーキル」


眩しい光に思わず目を瞑るとお姉さんが独り言のように呟き…


目を開けて見るも光景は何も変わっていない。


「…なにも起きてない?」

「起きたよ?光が辺りを包んで、その光に当たった瞬間魔物が消えた…おそらくもうこの国には魔王軍だけじゃなく野生の魔物も存在しないかも」

「…おそろしい攻撃だ。回避不能で防御不能、あげくは一撃死の威力か」

「そりゃ高級レベルの合体技だもの。反則的なことをしてくれなきゃね」


お姉さんの説明に俺が良く分かってないような顔をしてるとおじさんが解説してくれた。




…結局良く分からないまま、ただボーッと突っ立っていたまま…


国を占拠していた魔王軍は全滅したらしい。


…この国に来てわずか10分。


たった二回の攻撃で近隣諸国の軍でも手を出せないどころか、返り討ちに遭っていた魔王軍を倒した。


…多分、結構凄いことのハズなのに…こんなにも実感が湧かない勝利ってどうなのか?


俺が居る必要とかあった?来る必要あった?


こんな良く分からないままアッサリと終わるぐらいならそこら辺で活躍してるパーティを呼べば普通にどうにかなったんじゃないの?感が凄い。


ちなみにあの合体攻撃…合体技?は『龍族の威光』だって。


横文字のカタカナかと思いきやの漢字とひらがな。


…一応後からお姉さんに見せてもらったビデオでどんな攻撃か理解出来たけど…


漫画のように光に触れた瞬間に消えて行ってた。


その魔物が死んだのか魔王の下へ戻ったのかまでは分からないらしい。


ダメージ表示が『e』ってもはや数字ですらない事にみんな驚いてたよ。


…俺はそもそもダメージ表示って見えるんだ…っていう点に驚いた。


魔物と至近距離で戦う事が無いからねぇ…ダメージ表示?ってなったけど聞いたらまた何か言われそうだったのでいつも通りスルー。


…そんなこんなで全く実感も感慨もゼロのまま鉱物資源が豊富な小国をゲットした。


「…城とかは無事だったんだね」

「結界のおかげね。城下町はボロボロだけど、重要拠点はなんとか守られていたようで良かった」


切れ者の宮廷魔導師が居てくれたのが幸運だったかも。と、お姉さんは首都の現状を見ながら考察する。


「…この様子では離れの王宮も無事そうだ」

「…王宮?」

「首都から少し離れた場所に森に囲まれた建物があったでしょう?お兄さんが聞いてたじゃないですか」

「あー、あの堀に囲まれた…」


おじさんの言葉に疑問を持つと情報屋の男が説明した。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

幽霊が見えるので死霊術を極めます ~幽霊メイドが導く影の支配者への道~

雪窓
ファンタジー
【カクヨムで投稿したものを加筆修正して投稿し直したものです】 生まれつき幽霊が見える少年は物心ついた時からそのことを周囲に秘密にして過ごしてきた。 見えても見えないふりをして生活する日々。 ある日、近所の子供たちと郊外の”お化け屋敷”へ肝試しに行くことになる。 そこで大昔の魔術師の幽霊と出会うことで、少年の人生は激変する。 世間には知られていない希少な魔術である”死霊術”の継承者となり、大好きな魔術を思う存分修業する日々を送っていたのだが、次々に事件に巻き込まれ… 「僕はただ死霊術の修業ができれば満足なんだけどな」 そんな少年がいろんな出来事に巻き込まれていく様子を見守る物語。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。 旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...