商人でいこう！

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「それで、いくらで買うの？」

「…いいの？」

「？何が？」


女の子の質問に気を遣って聞くも良く分かってない感じで聞き返された。


「…いや、ギルドから…ね？」

「…あー！そうだった…！すっかり忘れてた！」


俺がやんわり教えるように言うと女の子はやっぱり圧力をかけられてたのか慌てたように叫ぶ。


そんなコントのような俺達のやり取りを見ていた市場の人達は笑いが堪えきれなくなったのかクスクスと笑う声が聞こえてくる。


「何があったの？てか何をやらかしたの？」

「…いやー、ちょっと派手に動き過ぎて…」

「派手に…？まあいいや。それより…お母さんとお父さんに売っちゃダメって言われたけど、売れないとお金が…赤字は厳しい…うーん…」


女の子の問いにボカして答えると掘り下げるような事はなく腕を組んで考え始めた。


「…分かった！分かったよ！」


…その場に放置するわけにもいかず、往来の邪魔にならないところに連れて行って待ってると急に女の子が閃いたように声を上げる。


「寄付金ちょうだい！」

「…寄付金…？なんで？」


女の子がいきなり意味不明な事を言い出したので俺は困惑して理由と意味を尋ねた。


「いいから！えーと…7500ゼベルでいいよ？」

「7500て……ん？…なるほど！7000ならいいよ」

「…7000かー…まあいいでしょ」 

「はい」


値段を聞いて俺は女の子が何がしたいかを理解したので値段交渉をしてお金を渡す。


「じゃあ…返礼品があるからついて来て？」

「…なるほど」

「…そういうことか！！」

「あー、なるほど！そんな手が…！」


女の子の言葉におじさんが理解出来たように呟くと…


俺と女の子のやり取りを見ていた市場の人達も理解したかのように次々に声を上げる。


「…凄いな。確かに寄付のお返しならば名目上は商売では無い」

「えっへっへ…田舎のラーマーダとは私の事よ」


よくもまあ思いついたものだ…と、用心棒のおじさんが感心しながら褒めると女の子は得意気に笑いながら意味の分からない例えで返した。


その後、女の子からイモイモターンを受け取り…他の店の人達とも同じやり取りをした。


まさかこんな方法が…と、目から鱗の解決方法を教えてくれた女の子にいつものように昼飯を奢る。


…今回ばかりは世話になったので、お土産としてのスイーツもお礼のつもりで欲しいだけ買ってあげた。


「わーい！こんなにいっぱい食べられるなんて夢みたい！」


でも一人じゃ食べきれないからみんなで食べるね。と、女の子は買い占めたスイーツを家に運んだ後に玄関で手を振りながら笑う。


「…あいつ…遠慮なしに店の物全部買い占めやがったけど…他の人達は大丈夫かな…？」

「…流石に新しく作るだろうから問題は無いんじゃないか？」


女の子と別れた後に俺が心配したように呟くとおじさんがフォローしてくれる。


「…それもそうか…」


おじさんの言葉に納得した俺は車内から流れる景色を見ながら返事をした。


…田舎で買った物が高く売れる街に来たが…やっぱりギルドの影響で市場のみんなは苦い顔をして物を売買してくれない。


「…じゃあ、金を恵んでくれない？お礼としてアレあげるから」

「！なるほど！それなら…！」


あの女の子から習った言葉を言うと市場は人達の表情が変わる。


…市場に直接卸せないから個人同士のやり取りになって、多少時間がかかるけど…それはしょうがない事だと割り切らないと。


…でもソコに時間がかかるという事は一日に回れる場所も減るという事なので…


当然売り上げの方も前に比べたら落ちてしまう。


「…うーん…もう地域一帯は厳しいかな…？」

「…時間効率を考えたら国外の商売に移行すべきだろうな」


帰宅した後に応接室で久しぶりに一日の収支を計算して呟くとおじさんが提案した。


「だよね…あの田舎以外は別に行かなくても問題無いし」


俺が腕を組んで真剣に検討してるとインターホンが鳴る。