商人でいこう!

八神

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…おっさんの話は物腰柔らかで物騒な言葉は使われなかったが…


要約したら『お前だけが儲けてるせいで他の商人が大損してる。自重しろ』と、この前に上司のおじさんが教えてくれた内容そのままだった。


…おっさん達は言いたい事だけ言ってさっさと帰って行ったので多分制裁とやらの第一段階に入ったんだろう。


確か第二段階は警告した内容の実行だったっけ…


第三段階は…なんだったかな…?流石に殺し屋を雇うのは最終手段的な事って言ってたからそんな早くはない…はず。



…そしておっさん達に警告されてから二日後。


いつも通りに仕事をしてたので警告も忘れて仕入れをするために街の市場に出向くと…


「…ああ、あんたか…申し訳ないんだが…ギルドからお達しが、な…」

「…え?」


俺が商品を見てると急に店主のおっさんが苦い顔でこっそりと伝えてくる。


「…昨日、市場が閉まった後にギルドのお偉いさんが俺んとこに来たんだ…多分、他の店も…」

「…そうなんだ」

「いつも世話になってたのに、本っ当にすまねぇ!でも、俺も守るべき家族が…」


マジか…と俺が驚いてるとおっさんは手を合わせて謝りながら上に逆らえない理由を話す。


「…うん。じゃあ制裁が解かれたらよろしく」

「!ああ!」


…権力による圧力に逆らえないのはしょうがない事なので、これから先の話をして一応他の店も回ってみたけど…


やっぱり商業ギルドのおっさん達に言われた…とみんな苦い顔をしながら同じことを言って商品を売ってくれなかった。


「…この街はもうダメかもな」

「都会の人達は同調圧力に弱いからね」


用心棒のおじさんが呆れたように呟くので俺は仕方ない。とフォローしてからあの田舎へと向かう事に。


…流石にあの田舎なら優しい人達ばっかりだから大丈夫だろう。






「…すまんなぁ。兄さん」

「ワテだけじゃなく、子や孫にも迷惑をかける…と脅されちゃあ…」

「…本当は売りたいんだが…これ以上嫁さんに苦労はかけたくないんだ…すまねぇ」


…結局、田舎の人達も商業ギルドの権力の前には屈するしかなかったみたいだ。


それでも、この村の市場を仕切ってる人達が今もギルドの決定に反対して制裁の撤回を求めて動いてるらしい…って聞けたのは救いか。


「…まさかこの村でも、とは…」

「…ある意味最後の砦だったから、もう地域一帯は全滅だよね」

「あ!おーい!」


ため息を吐いて市場から出ようと歩いているとどこからか声をかけられた。


「…ん?」

「どうしたの?そんな暗い顔しちゃってさ」

「…ちょっとね」

「?相談なら乗るよ?」


いつもの女友達である女の子がフレンドリーに俺に話しかけてくる。


「…いや、なんでもないから」

「そう?…それより、うちに寄ってかない?」

「イモイモターン?」

「うん。なんと…今回は3000個用意したんだ!」


全部買ってくれるでしょ?と、女の子はまるでギルドから何も話を聞いていないかのようにいつも通りだった。


「…3000個って…多くない?」

「えっへっへ…機械の力って素晴らしい!」


前買った時の倍以上の個数に少し驚いたように聞くと女の子は笑いながらそう告げる。


「…機械?」

「うん。魔力を流すだけで大量の芋を潰したり混ぜたり出来るんだよ」

「…へー」


魔導機械さまさまだね。と訳の分からない事を言って笑う女の子に俺はツッコまずスルーして相槌を打った。
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