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「…師匠と呼ばれるほどではない。暇な時に少し戦い方とかを教えた程度だ」
「指導や助言が的確で、独学よりも早く成長できる気しますので…私は師匠とお呼びしております」
「へー、知らなかった」
「意外…でもないわね。おじさまなら」
おじさんが謙遜するようにやんわり否定するも、女の子は呼ぶに至った経緯を話したので多分呼び方を変えるつもりはないんだろう。
「…とりあえず、専守防衛では状況が好転しないから何か攻め手が欲しい…といったところか?」
「ああ、だからバーゼルを…」
お姉さんにいじられる前に…なのかおじさんは多少強引に話を戻して予想しながら確認したけど、俺は女の子の答えを聞く前に納得出来た。
「…なるほど。『歴戦の猛者』の称号を持つだけはある…素晴らしい」
あれだけの情報で、我々の置かれている状況を完璧に把握するとは…!と、銀髪の青年が驚きながらおじさんを褒める。
「…出来ることなら師匠も一緒にお借りしたいのですが…」
前線に出なくとも兵の指揮や士気の維持等のサポートを期待出来ますのに…と、女の子は残念そうに呟いた。
「…そんな回りくどい事をしなくとも、問題を早急に解決出来る方法が一つだけある」
「「…え?」」
「本当ですの!?」
「…お嬢様。そんな都合の良い話があるわけが…」
おじさんが顎に手を当てて考えたと思えば急に人差し指を立ててみんなの不安を消し去るかのような事を言い出す。
「…ただし確実では無い。俺に決定権は無く、命令や指示をする立場にも無い…ただ提案をするだけで実行する事は不可能だからな…」
おじさんは俺を見ながらもったいつけたような…予防線を張るような言い方をする。
「…確実でなくとも構いません。私達はもはや藁でも蜘蛛の糸でも…縋れるものなら、希望が一筋でもあるのなら、何にでも縋りたいほど追い詰められてるのですから」
領民のためならなんだってする。と、女の子が覚悟を見せるかのように真剣な顔でおじさんに話の続きを促す。
「…そうか。なら……あのドラゴンを動かせば、おそらく半日とかかるまい」
みんなが唾を呑んでおじさんの言葉を待ってると…やはり俺を見ながら意外な事を言い出した。
「…え?」
「あー、そうか!そうよね。考えてみたら簡単な事じゃない」
イマイチ理解できてない俺と違ってお姉さんは、不覚…!と言いながら顔を覆うように手を当てる。
「…ドラゴン…確かに上級クラスの魔物ですが、魔王軍を相手取るとなると…大丈夫ですの?」
「…攻めて来ている魔王軍の戦力は知らないが…もしアレを動せる事が出来ればそんなのは些細な事だ。上手く進めば今日中にでも終わる」
「…本当なのか?」
決めるのは俺ではないがな。と、おじさんはあくまでこの問題解決の主導権があるのは自分じゃないと主張した。
「…ご主人様、今から奴隷の身分で差し出がましい事を申し上げる事をお許し下さい…どうか。お願いします!私達に、力をお貸し下さい!」
「…お嬢様…」
女の子は頭を下げて前置きを言うと今度は地面に膝を着いて頭を下げる。
「…別にいいけど…」
あんまり状況が呑み込めてない中での土下座一歩手前のポーズをされてしまったら断りづらい。
「本当ですの!?本当に、力をお貸しくださるのですね!?」
「…うん。今日はもう特にやる事無いし」
女の子が顔を上げてまるで言質を取るかのようにおじさんやお姉さんを見て舞い上がった。
「今から隣の領主と連絡を取ります。情報屋をお呼びなさい」
「はっ。かしこまりました」
女の子が指示すると銀髪の青年は畏まったように姿勢を正して会釈するように軽く頭を下げて急いでその場から離れる。
「…どうやら直ぐには動けないようだ。俺達は時間までどこかで休ませてもらおう」
「暴れ熊やその領地がどうなったかも調べないといけないし…忙しくなりそうね」
女の子が何か言いたげに俺をチラチラ見てくるので不思議に思ってるとおじさんがまるで代弁するかのように告げ、お姉さんも軽くフォローした。
「…師匠、ありがとうございます。直ぐに部屋へと案内させますのでほんの少しお待ちください」
女の子はおじさんにお礼を言うとスカートの端を持ち上げて会釈するようなポーズを取ってどこかへ走って行く。
「指導や助言が的確で、独学よりも早く成長できる気しますので…私は師匠とお呼びしております」
「へー、知らなかった」
「意外…でもないわね。おじさまなら」
おじさんが謙遜するようにやんわり否定するも、女の子は呼ぶに至った経緯を話したので多分呼び方を変えるつもりはないんだろう。
「…とりあえず、専守防衛では状況が好転しないから何か攻め手が欲しい…といったところか?」
「ああ、だからバーゼルを…」
お姉さんにいじられる前に…なのかおじさんは多少強引に話を戻して予想しながら確認したけど、俺は女の子の答えを聞く前に納得出来た。
「…なるほど。『歴戦の猛者』の称号を持つだけはある…素晴らしい」
あれだけの情報で、我々の置かれている状況を完璧に把握するとは…!と、銀髪の青年が驚きながらおじさんを褒める。
「…出来ることなら師匠も一緒にお借りしたいのですが…」
前線に出なくとも兵の指揮や士気の維持等のサポートを期待出来ますのに…と、女の子は残念そうに呟いた。
「…そんな回りくどい事をしなくとも、問題を早急に解決出来る方法が一つだけある」
「「…え?」」
「本当ですの!?」
「…お嬢様。そんな都合の良い話があるわけが…」
おじさんが顎に手を当てて考えたと思えば急に人差し指を立ててみんなの不安を消し去るかのような事を言い出す。
「…ただし確実では無い。俺に決定権は無く、命令や指示をする立場にも無い…ただ提案をするだけで実行する事は不可能だからな…」
おじさんは俺を見ながらもったいつけたような…予防線を張るような言い方をする。
「…確実でなくとも構いません。私達はもはや藁でも蜘蛛の糸でも…縋れるものなら、希望が一筋でもあるのなら、何にでも縋りたいほど追い詰められてるのですから」
領民のためならなんだってする。と、女の子が覚悟を見せるかのように真剣な顔でおじさんに話の続きを促す。
「…そうか。なら……あのドラゴンを動かせば、おそらく半日とかかるまい」
みんなが唾を呑んでおじさんの言葉を待ってると…やはり俺を見ながら意外な事を言い出した。
「…え?」
「あー、そうか!そうよね。考えてみたら簡単な事じゃない」
イマイチ理解できてない俺と違ってお姉さんは、不覚…!と言いながら顔を覆うように手を当てる。
「…ドラゴン…確かに上級クラスの魔物ですが、魔王軍を相手取るとなると…大丈夫ですの?」
「…攻めて来ている魔王軍の戦力は知らないが…もしアレを動せる事が出来ればそんなのは些細な事だ。上手く進めば今日中にでも終わる」
「…本当なのか?」
決めるのは俺ではないがな。と、おじさんはあくまでこの問題解決の主導権があるのは自分じゃないと主張した。
「…ご主人様、今から奴隷の身分で差し出がましい事を申し上げる事をお許し下さい…どうか。お願いします!私達に、力をお貸し下さい!」
「…お嬢様…」
女の子は頭を下げて前置きを言うと今度は地面に膝を着いて頭を下げる。
「…別にいいけど…」
あんまり状況が呑み込めてない中での土下座一歩手前のポーズをされてしまったら断りづらい。
「本当ですの!?本当に、力をお貸しくださるのですね!?」
「…うん。今日はもう特にやる事無いし」
女の子が顔を上げてまるで言質を取るかのようにおじさんやお姉さんを見て舞い上がった。
「今から隣の領主と連絡を取ります。情報屋をお呼びなさい」
「はっ。かしこまりました」
女の子が指示すると銀髪の青年は畏まったように姿勢を正して会釈するように軽く頭を下げて急いでその場から離れる。
「…どうやら直ぐには動けないようだ。俺達は時間までどこかで休ませてもらおう」
「暴れ熊やその領地がどうなったかも調べないといけないし…忙しくなりそうね」
女の子が何か言いたげに俺をチラチラ見てくるので不思議に思ってるとおじさんがまるで代弁するかのように告げ、お姉さんも軽くフォローした。
「…師匠、ありがとうございます。直ぐに部屋へと案内させますのでほんの少しお待ちください」
女の子はおじさんにお礼を言うとスカートの端を持ち上げて会釈するようなポーズを取ってどこかへ走って行く。
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