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「叩けば埃が凄くて…その前領主の悪事の証拠を揃えての摘発、非を認めずの暴力に対し力づくでの拘禁。その功績に加えて元領主の血統である事の証明…やる事が多くて大変でした」
正確には私はお手伝いしかしてませんが…と、あと一人のお兄さんが頑張ったであろう事を匂わせるように告げた。
「…ありがとう」
「いえいえ、仕事ですから…その分手数料を引かせていただきましたので、返却するお金は残りませんでした」
「…たりて良かったね」
「…まあ、ぶっちゃけると根回しの金が8万ゼベルほど足りませんでしたけどね」
ドラゴンの賞金の件があるので、お兄さんに請求は出来ませんよ。と男は払おうとした俺の行動を途中で止めるように言う。
「…資格を得たにしろ『奴隷』のままで良くも通ったものだ」
「ちゃんと根回し、しましたから」
まだ疑いを残しながらも少し感心してるようなおじさんに男はニヤリと笑いながら返す。
「…どこまで疑おうとも事実は事実。今日、かの国にて歴史上初となる奴隷の領主が誕生致しました」
「…歴史上初?」
「ええ、元奴隷で領主や貴族まで成り上がった人は世界に目を向ければ何人もいますが…奴隷の状態での重職は世界で初めてです」
男はお茶を飲むとそう告げ、俺の疑問にもちゃんと説明した上で答えてくれる。
「…でも、まだ子供なのに領主とか任せて大丈夫なの?」
俺の中では『領主』っていうのはゲームや漫画で知った知識でしかないので、脳内で勝手に身近な町長や市長レベルに置き換えて考え…
年齢的に大丈夫か?と心配になって聞いてみた。
「まあ…そこは有能な大人達にサポートさせますから。…と、いうか…さっきから不思議に思ってましたが、全てお兄さんが仕組んだ事では?」
あの子の生い立ちも今までの経緯も当然知ってて私達に委任したんですよね?と、男は不思議そうに意味の分からない事を言う。
「…知ってた?」
「…いや、何一つ聞いてないな」
「だよね…俺も今初めて知ったし」
「…え?」
俺が後ろにいるおじさんに聞くと首を横に振って否定するので同意すると男が驚きながら呟く。
「…あの子が隣国の結構広い領地を治める領主の家系だとか、聞かなかったんですか?」
「…うん」
「領主の座を奪い取るために…と、その両親が殺されてあの子も奴隷に落とされて売られた事も?」
「…そうだね」
情報屋の男の確認に俺は知らなかったと頷いで返事をする。
「その領主達が復讐相手だった事も、ですか?」
「…今知った」
「…そ、そうでしたか…いや私達はお兄さんが全てを知ってて、敵討ちついでに傀儡として復権させようとしてるかと思ってたんですが…」
てっきり領地からの収益や市場のルート、利益の独占を狙っているとばかり…と、男が普段俺の事をどう思ってるか分かるような事を告げた。
「…それなら疑問ですけど、なぜ私達に紹介を?」
「…復讐したい相手がいる、って言うから…何か分かるかなって…」
「ただそれだけのために?素性も知らない奴隷なのに、わざわざ大金を費やして?」
「…うん」
男は信じられない…といった様子で驚いたように聞いてくるが俺の考えなんて単純そのものなので頷く以外に返しようがない。
「……いやはや、なんて返したものか…言葉が出てこない、ですねぇ…」
「…まあ、上手くいったんならそれで良かったんじゃん?」
馬鹿にされてるようでイラッとするが俺はここ最近で殴り合いの喧嘩をした事が無いから喧嘩は弱い方だと思う。
なのでせめてもの仕返しという事で多少の不機嫌感を表に出してそう返した。
「確かに…おかげ様で私達は隣国に情報屋を拡大する事が出来ましたが…」
「…拡大?」
「…いえ、こっちの話です。ついでにおこぼれを頂戴した形になりますので」
ありがとうございます。と、俺には全く理解出来ない事で感謝されて頭を下げられてしまった。
「…話は終わり?」
「…なんか怒ってます?」
「別に」
「…何か非礼がありましたのなら謝ります。すみませんでした」
俺の話し方と態度で察したのか男はよくわからない様子のまま会釈するように謝罪する。
「…では、これで…」
「あ、今から夕飯だけど…食べる?」
「…ありがたくいただきます」
男が大人の対応で謝ってくれた以上俺も機嫌を直さないといけないか…と思い夕飯に誘った。
…どうせ作るのはメイド達だから一人ぐらい増えても問題は無いだろうし。
正確には私はお手伝いしかしてませんが…と、あと一人のお兄さんが頑張ったであろう事を匂わせるように告げた。
「…ありがとう」
「いえいえ、仕事ですから…その分手数料を引かせていただきましたので、返却するお金は残りませんでした」
「…たりて良かったね」
「…まあ、ぶっちゃけると根回しの金が8万ゼベルほど足りませんでしたけどね」
ドラゴンの賞金の件があるので、お兄さんに請求は出来ませんよ。と男は払おうとした俺の行動を途中で止めるように言う。
「…資格を得たにしろ『奴隷』のままで良くも通ったものだ」
「ちゃんと根回し、しましたから」
まだ疑いを残しながらも少し感心してるようなおじさんに男はニヤリと笑いながら返す。
「…どこまで疑おうとも事実は事実。今日、かの国にて歴史上初となる奴隷の領主が誕生致しました」
「…歴史上初?」
「ええ、元奴隷で領主や貴族まで成り上がった人は世界に目を向ければ何人もいますが…奴隷の状態での重職は世界で初めてです」
男はお茶を飲むとそう告げ、俺の疑問にもちゃんと説明した上で答えてくれる。
「…でも、まだ子供なのに領主とか任せて大丈夫なの?」
俺の中では『領主』っていうのはゲームや漫画で知った知識でしかないので、脳内で勝手に身近な町長や市長レベルに置き換えて考え…
年齢的に大丈夫か?と心配になって聞いてみた。
「まあ…そこは有能な大人達にサポートさせますから。…と、いうか…さっきから不思議に思ってましたが、全てお兄さんが仕組んだ事では?」
あの子の生い立ちも今までの経緯も当然知ってて私達に委任したんですよね?と、男は不思議そうに意味の分からない事を言う。
「…知ってた?」
「…いや、何一つ聞いてないな」
「だよね…俺も今初めて知ったし」
「…え?」
俺が後ろにいるおじさんに聞くと首を横に振って否定するので同意すると男が驚きながら呟く。
「…あの子が隣国の結構広い領地を治める領主の家系だとか、聞かなかったんですか?」
「…うん」
「領主の座を奪い取るために…と、その両親が殺されてあの子も奴隷に落とされて売られた事も?」
「…そうだね」
情報屋の男の確認に俺は知らなかったと頷いで返事をする。
「その領主達が復讐相手だった事も、ですか?」
「…今知った」
「…そ、そうでしたか…いや私達はお兄さんが全てを知ってて、敵討ちついでに傀儡として復権させようとしてるかと思ってたんですが…」
てっきり領地からの収益や市場のルート、利益の独占を狙っているとばかり…と、男が普段俺の事をどう思ってるか分かるような事を告げた。
「…それなら疑問ですけど、なぜ私達に紹介を?」
「…復讐したい相手がいる、って言うから…何か分かるかなって…」
「ただそれだけのために?素性も知らない奴隷なのに、わざわざ大金を費やして?」
「…うん」
男は信じられない…といった様子で驚いたように聞いてくるが俺の考えなんて単純そのものなので頷く以外に返しようがない。
「……いやはや、なんて返したものか…言葉が出てこない、ですねぇ…」
「…まあ、上手くいったんならそれで良かったんじゃん?」
馬鹿にされてるようでイラッとするが俺はここ最近で殴り合いの喧嘩をした事が無いから喧嘩は弱い方だと思う。
なのでせめてもの仕返しという事で多少の不機嫌感を表に出してそう返した。
「確かに…おかげ様で私達は隣国に情報屋を拡大する事が出来ましたが…」
「…拡大?」
「…いえ、こっちの話です。ついでにおこぼれを頂戴した形になりますので」
ありがとうございます。と、俺には全く理解出来ない事で感謝されて頭を下げられてしまった。
「…話は終わり?」
「…なんか怒ってます?」
「別に」
「…何か非礼がありましたのなら謝ります。すみませんでした」
俺の話し方と態度で察したのか男はよくわからない様子のまま会釈するように謝罪する。
「…では、これで…」
「あ、今から夕飯だけど…食べる?」
「…ありがたくいただきます」
男が大人の対応で謝ってくれた以上俺も機嫌を直さないといけないか…と思い夕飯に誘った。
…どうせ作るのはメイド達だから一人ぐらい増えても問題は無いだろうし。
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