商人でいこう!

八神

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「こうやって巻くのに結構なコツと力がいるんだけど…離すと、この通り」


お姉さんが掴んでいた手を離すと一気に元の平たい鱗の形状へと戻った。


「…どういうこと?硬くて柔らかい?」

「そういう事…になるのかな?靱性って知ってる?」

「じんせい?…人の生き様?それとも粘りだっけ?」


硬いけど衝撃とか吸収して壊れにくくなるとか言われてるアレ…?と、言葉ではどっちか分からないので俺はとりあえず最近授業で習った方も思い出しながら答える。


「…常識はイマイチなのに知識が素晴らしいのはなんで…?」

「いや、なんでって言われても…」


この世界の常識なんて知らねーよ!とは言えないのでなんとも言えないような感じになってしまう。


「まあ、分かるならいっか…最後に丸めたコレを…」


お姉さんはまた鱗をお菓子のように丸めてから握り、後ろから水筒を取り出す。


「この液体窒素が入った水筒の中に…イン。そして振る!」

「…液体窒素!?」


確実にヤバイであろう物が入ってる水筒の中に丸めた鱗を入れて蓋を閉めてシェイクし始めた。


「ちょっと待って!液体窒素ってマイナス190℃とかの!?容器大丈夫!?」

「大丈夫大丈夫」


取り扱い注意で爆発の危険がある物が入ってる水筒の紐を持って勢いよく振るので、身の危険を感じで身構えながら聞くとお姉さんは軽い感じで返す。


「ちょっと離れて」

「やっぱり危ないんじゃ…」


水筒を地面に置いて距離を取るお姉さんの隣で心配してると水筒に手を向けた。


するとボン、と空気が抜けたような軽い音がして水筒から白い煙が立ち上る。


「…マイナス210℃の液体に浸けてもやっぱり変化無し…コレ、本当にこの世の物質…?」


水筒を持ち上げて中から出てきた鱗の状態を見てお姉さんがため息混じりに呟く。


「…ふむ、ドラゴンはマグマや氷山の中でも平気で冬眠すると聞いた事があるが…鱗の強度を見る限り本当かもしれんな」

「…まあ、ゲーム的には良くあることだし…」


火山の噴火と共に出てくるとか、氷山が崩れて出てくるとか。


「…伝承の内容が本当だったかもしれない、ってのは大きな収穫だけど…」


論文にしても笑われる気がする…とお姉さんはおじさんの発言に微妙な反応をした。


「…写真とかビデオで過程を見せたら?」

「…確かに、論文と一緒に映像を出せば流石に信じるでしょ」

「そんな生物が実在すると知ってパニックにならなければいいんだがな」


俺が思いついた事をそのまま提案するとお姉さんが受け入れてくれたが、おじさんが心配になるような事を言う。


「あくまで学問だから大丈夫じゃない?」

「…そういう問題なのか…?」

「…良く考えたら、この鱗…強度がヤバいから加工出来ないのか」


お姉さんとおじさんが話してる中、地面に落ちてる鱗を見ながらふと思った事が声に出る。


「変形しないだけで加工は出来るんじゃない?これだけ柔軟性があるんだから、貼り付けたり繋ぐだけで防具に使えそうだし」

「…あー、確かに…つぎはぎ的な感じでいけるかも」 


お姉さんの意見を聞いて別に切ったり溶かしたり出来なくても意外と応用出来そうな事を知った。


「…ん?え、うそ…」

「どうしたの?」


俺らの話を聞いていたらしいドラゴンの意思に驚くとお姉さんが不思議そうに聞いてくる。


「…自分の鱗ぐらい簡単に溶かせるんだって…」

「えっ!?」

「…いや、普通に考えれば分かりそうな事だが…」


お姉さんも俺と同じで驚くがおじさんは可能性として考えていたのか…ちょっと呆れた感じで呟く。
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