商人でいこう!

八神

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「…あ、もう無い…ちょっとー、アレ持って来てよ。さっき勧めてた、さけってやつ」

「はい、かしこまりました」


お姉さんはワインの瓶を空にすると忙しく動いているボーイを呼び止めて更に酒を要求した。


「…もうその辺で控えたらどうだ?あまり飲み過ぎると明日に差し支えるぞ」

「まだ大丈夫ですー、呂律が回らなくなってからだから。危ないのは」


それより、何飲んでるの?と、注意しに来た歴戦の猛者の称号を持つおじさんが持ってる瓶を指差す。


「これか?これは…東方の島国のアルコールだ」

「…!それって…!あのかなり珍しい、あわもりとかいうキツーイやつ!?」

「…知っているのか?ああ、その島国の中で珍しいと聞いた」


まさかこんな所で飲めるとは思ってもみなかったが…と、おじさんはコップに入ってる分を一気に飲む。


「ちょ、ちょっと飲ませて!東方の島国のアルコールなんて滅多に飲めないんだから!」

「…コレは女にはキツイと思うが…まあいいだろう、ただしロックやストレートで飲めたものではないからな」


おじさんは近くのテーブルから未使用のコップを取ると柑橘系の匂いがする果物っぽい物を手で握って軽く搾り…


水と瓶に入った酒を混ぜながら入れて小さいスプーンでかき混ぜた。


「…これなら、女でも飲めるだろう」

「…美味しい!おじさまカクテル作るの上手!昔は女の子にモテモテだったんじゃないのー?」


お姉さんはおじさんから手渡されたコップを受け取って一口飲むと驚いた反応をした後に俺の肩に肘を置いてからかい始めた。 


「…酒を飲む女など珍しいものだ」

「そお?…ま、こんな世の中じゃ貴族のお嬢様がワインを嗜むぐらいでしょうね…」

「…お待たせいたしました。こちら…」

「来た!ありがと」


お姉さんがコップに入ってる酒をグビグビ飲んで愚痴るように呟き、メイドが持って来た酒を説明してる途中に取ってお礼を言う。


「…それは…東方の島国の…」

「さけ、って島国の?このラベル、なんて書いてあるか読めない…」


おじさんが日本酒の瓶を珍しそうに見るとお姉さんはラベルの文字を読もうと首を捻る。


「…『吟醸 桃菊』って書いてある」

「…ぎんじょーももぎく?」

「…読めるのか?この象形文字が…」

「…勉強、したから…」


…まさか異世界に似たような国と同じ言葉、同じ文字が存在するなんて…と一瞬驚いたが、普通に女神の配慮でそう見えているだけかもしれない。


…その後、パーティーは深夜まで続き…


朝が近くなった頃、ようやくおひらきになったらしい。


俺みたいな未成年は夜遅くには宿屋に戻ったが、翌日の請求書を見て驚いたものだ。


たった半日のパーティーで50万ゼベル近くかかっている。


日本円に換算すると5000万円。


そのほとんどが酒代だったけど、あのお姉さんとおじさんが飲んでた日本酒が一本3万ゼベルって…


…酒ってこんなお高いものだったのか…そりゃおいそれとは飲めないから、いっぱい飲めたらみんな喜ぶよ。


…ちなみにあとから情報屋の男から聞いたところ日本酒はその国に二本しかなかったらしい。


そんな貴重なものを二人がかりとはいえ一時間足らずで飲み干すなんて恐ろしい…


普通はもっとこう…ワインを飲むように時間をかけて味わって…って思ったけど、あのお姉さんはワインもラッパ飲みだしなぁ。


最初こそテイスティングとかでグラスで飲むけど三杯目ぐらいからは瓶から直だし。


…朝に『あんなに飲んで二日酔いしないの?』って聞いたら『術式で抑えてるから大丈夫』だとさ。


術式ってなんだろう…?と思ったが、多分図鑑で見た常時発動型のパッシブスキルとかいうやつかもしれない。


そして昼過ぎには捕まえたドラゴンと共に帰国。


ワイヤーやら、紐やらをコンテナと車部分の下から通してドラゴンに吊り下げて運んでもらった。


…車に乗りながら窓を見ると、空を飛んでかなりの速度で移動してる事にかなり興奮したよ。


相乗りの情報屋の男とお姉さん、おじさんも凄いはしゃいでいて…


車の中は大盛り上がりだった。


…あの魔物は車に入り切れないからコンテナの中に入ってもらったけど。


…移動中にトイレや食事といった休憩時間をちょくちょく挟んだにも関わらず…


行きは船で一週間かかる道のりを帰りは僅か一日。


昼前に出発してから翌日の昼前には自宅がある町の離れに到着した。


…流石は伝説のドラゴン、飛行速度も持久力や移動距離も人知を超えている。


そして相乗りしていた情報屋の男やスキルを売っていたお姉さん、歴戦の猛者の称号を持つおじさん達と別れて自宅へ。
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