商人でいこう!

八神

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「…そうか」


家の前に着いたところで、用心棒のおじさんは何故か立ち止まる。


「もし、魔物と戦う事になるのなら…いや、戦わなくても近くに行くのならせめて防具だけでも揃えた方が良い」


魔物の範囲攻撃や万が一、という事もあるからな…とおじさんに言われて納得した俺は門から中に入らずにそのまま街へと戻った。


…防具か…魔物との戦いなんて全く想定してなかったから、なんか新鮮な気分…


どうせ危ない目には合わないだろう…と、軽い気持ちでワクワクしながらおじさんの案内の下、防具屋へと向かう。


…そして防具屋にて。


「…うわ、重っ…」


なんか硬くて防御力の高そうな鉄製の鎧を見つけたので試着してみるも…


持った時と着けた時の重さの違いにびっくりして思わず呟きが漏れる。


「ははは、商人では鎧は無理だ」

「…いや、これ…ほかの職業でも無理でしょ…」


おじさんがまるで田舎者をからかうように笑うのでちょっと反抗するように返す。


「装備は職業によって着ける事が出来る物と出来ない物に別れている」

「…いや、でもコレ着て動ける…?」

「重く感じるのは『装備不可』だからだ。『装備可能』ならば普段着と変わらん軽さになる」


世の中には装備不可を筋力で無理やり解決して戦う猛者もいると聞くが…と、一応例外が存在する事を付け足す。


「…武器も?」

「ああ、だが…装備可能でもその者の筋力次第では扱えない武器もあるから気をつけた方が良い」


流石は歴戦の猛者の称号を持つだけあって分かりやすく説明してくれた。





…防具を買い揃えてから2日後。


俺は情報屋が連れて来た10人のギルドの人達と共に山へ魔物を捕まえに行き…


半日かけてなんとか捕まえる事に成功した。


…いやー、大変だったね。


基本的に俺は回復アイテムを渡すか、罠を仕掛けるか…で魔物とは離れた場所で支援に徹してたけど。


ちなみに回復アイテムも罠も情報屋が用意してくれていた。


結構な数で、中々のグレードのやつを2万ゼベルで譲ってくれて…


ギルドの人達も壁役の重戦士が二人、囮役の戦士が一人…


魔術師が三人に聖職者が二人で射手が二人…というなんともバランス良い感じのパーティを用意してくれたとか。


…今回紹介された時に思ったけど…なぜか表示は漢字なのに、言葉にするとカタカナになったりする不思議。


『魔術師』はそのまま『まじゅつし』なのに『聖職者』は『クレリック』。


『射手』は『アーチャー』とか『シューター』だし、『戦士』は『ファイター』だったりする。


しかも最初は魔術師ってそのまま読んだかと思えば戦ってる最中になると『マジシャン』とか『メイジ』で…呼び方が違う。


…まあそこらへんはあまり気にしなくてもいい問題なのかもしれないけど…


普通に生きてたら無縁な言葉がこんな風に身近に出てくるとやっぱり不思議に思ってしまう。
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