クラスまるごと異世界転移

八神

文字の大きさ
上 下
409 / 556

409

しおりを挟む
「…どうだった?」

「材料が足りないから直ぐは無理だって」

「…そ、そうか…ソレは…しょうがない、な…」


ワクワクしたような王子の期待を込めての確認に俺がそう伝えると王子は肩を落として露骨にガッカリしながら呟く。


「一応後から俺が行くって言ったから、早ければ明日の朝には持って来れる…ハズ」

「本当か!?」

「…材料を集めても作るのはアイツだからねぇ…どれくらい時間かかるのかは正直分からない」

「しかし手には入るのだろう?」

「多分」

「では一週間ほどまでなら問題あるまい!それ以上かかるのならばソレはもはや失敗と同義と考えねばならんからな!」


俺が適当に話すと王子はなんか気分を良くしたような感じになる。


「一週間もかかるもんかね…ま、材料の集まり具合にもよるか」

「早いに越した事は無いが過剰な期待の反動は重いものだ」

「そりゃそうだ」


俺の独り言に王子が警告的な事を言い出すので賛同して返し…


あとは大使館的な建物に着くまで適当な雑談をした。


…そして研究を手伝う事、数時間後。


「…んじゃ、実験してみようか」

「ほう…ソレが『魔結晶』か。まるで宝石のように綺麗な物だな」


昼過ぎに俺が魔結晶を取り出すと王子がソレを見ながら意外そうに言う。


「多分加工すればインテリアとか装飾品としても使えると思うけど…そこまで無駄で余裕のある贅沢な使い方をしたら周りからめっちゃ凄い目で見られるんじゃない?」


良くも悪くも色んな意味で…と、俺は王子の意見に微妙な顔をしながら返した。


「はっはっは!確かに!実用性の高い希少な品を装飾品として扱えば権威を誇示し威光を示す事も出来ようが、逆に無能の謗りを受ける事も避けられんな!」

「まあ普通にすげーって思うけど、冷静に考えたら逆の意味ですげー…ってなっちゃうからね。研究員や開発者からすると特に」


豪快に笑いながら同意する王子に俺も蛇足のように同じ事を繰り返して話す。


「そういえば我が父君の側室も昔、魔石をペンダントやイヤリングにしたい…とほざいていた事があったな。真価が分からぬ者が持っていても仕方がないだろうに」

「俺らの所ではそういうのは『猫に小判』『豚に真珠』って言ってた」

「…ふ…ははは!なるほど!ははは!なんとも…上手い、例えよ!ははは!」


王子の笑い話に俺がその状況を表すことわざを挙げると、ツボに入ったのか…腹を抱えて笑い始める。


「…ふう。…ここまで笑えたのは久方ぶりだな」

「そう?まあ面白いなら良かったよ。じゃあとりあえず始めようか」

「ああ」


俺は王子の笑いが収まるのを待って兵に新型のモーターに黄色の魔結晶を加工して取り付けるよう指示した。


「…なんと。冶金技術に秀でているワウシャープでさえ魔結晶の加工は難しい、と聞いたが…」

「ま、普通にやったらそうだろうね」

「なるほど。魔法の応用か…確かトルツの秘匿研究の一つに似たようなのがあったな…」


5分もかからずに終わった作業を見て驚きながら呟いた王子に俺が軽く返すと思い当たる事があるように正解を呟く。


「意外と『秘匿』とか『最重要国家機密』とかでも漏れるモンなんだね」

「…研究を進めれば実験やテストは避けられまい。ソコから漏れてしまうのだ」


とはいえあくまで噂でしかなく、研究の外枠しか知らんがな。と王子は俺の疑問に口元に手を当てて考えながら答えてくれる。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。 初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。 今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。 誤字脱字等あれば連絡をお願いします。 感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。 おもしろかっただけでも励みになります。 2021/6/27 無事に完結しました。 2021/9/10 後日談の追加開始 2022/2/18 後日談完結

処理中です...