クラスまるごと異世界転移

八神

文字の大きさ
上 下
184 / 556

184

しおりを挟む
「…どれもこれも素晴らしい出来だ!たった一日でコレとはとても信じられんな!」

「おっ、じゃあ特産品に出来そう?」

「品質自体は全くもってケチの付けようがない…が、やはりアイシェを特産品にするのはやめた方が良いかもしれん」


タル全ての試飲が終わって驚く料理長に俺が聞くと急に考えを変えたかのような事を言い出した。


「なんで?」

「アイシェの価値が下がってしまう。質の高いアイシェは貴重だからこそ高値で取り引きされている…つまり、容易に数を揃えると業者に買い叩かれてしまう恐れがあるんだ」

「消費者からしたら安くなるんなら良い事じゃないの?」

「…兄ちゃんと同じ真似が出来る奴があと何人かいれば、な。このままだとアイシェを扱う業者は軒並み大打撃を受けるだろう…俺はアイシェ通を自称する以上、先を見越すならソレは到底看過出来る問題では無い」

「つまり?どゆこと?」


料理長の長い説明に結局なにが言いたいのか分からなくなったので俺は率直に意図を尋ねる。


「コレは『特産品』ではなく『名産の限定品』として数を絞ってさばく方が労力的にも効率的ということだ」

「あー、限定品かぁ。…なんか一気に特別感が出て購買欲を煽る完璧な宣伝じゃん!さっすが」

「高級アイシェをさばくルートは俺に任せろ。おそらく仲介料として売り上げの一割は取られるだろうが、取引の実績は高い」

「へー、通を名乗ってるだけあって色んなツテがあって顔が広いんだな」

「まあな」


料理長の発想と頼もしい言葉に俺が褒めると照れたように頭を掻く。


「実は王妃もワイン通でな。人前では何も言わないが、ワインにはうるさい女よ」

「マジで?じゃあ料理長みたいにラベルが無くても飲むだけで分かんの?」


俺とも話が合う。と意外な事実を教えてくれた料理長と同じ事が出来るのかを聞いてみた。


「試してみるか?」

「やろうやろう」


料理長のイタズラを仕掛けるように意地悪な笑いをしながらの提案に俺は面白がって当然ソレに乗る。


…つーわけで、タルのいくつかの中身を小瓶に移して小さいラベルに料理長が名称を書いて貼り、王妃の所へと持って行く事にした。


「おや、ウミハラ殿。王妃に用事ですかな?」

「ちょっとワインを差し入れにね」

「ワイン…?」

「アイシェだ。上質な物が手に入ったのでな…是非とも王妃に味を見てもらおう、と」

「なるほど。分かりました」


王妃の部屋の前に居た警護兵は俺と料理長の説明に納得したように呟いて入室を許可する。


「失礼しまーす」

「おや、ウミハラ殿にガンディーニシェフ?私に何か用ですか?」

「なに、良いアイシェが手に入ってな。差し入れだ」


部屋の中に入ると書類作業をしていた王妃が俺らを見て笑顔で用件を尋ねるので料理長が意地悪そうに笑いながら返して小瓶を見せた。


「まあ!ちょうど休憩しようとしていたところです。息抜きに飲ませてくれませんこと?」

「マジで?タイミング良かったんだ」

「みたいだな」


喜んだような王妃の反応に俺がそう返すと料理長はニヤニヤ笑いながらテーブルの上にワイングラスを5つ並べるように置いてその隣に小瓶を置いて行く。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。 初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。 今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。 誤字脱字等あれば連絡をお願いします。 感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。 おもしろかっただけでも励みになります。 2021/6/27 無事に完結しました。 2021/9/10 後日談の追加開始 2022/2/18 後日談完結

処理中です...