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「…どれもこれも素晴らしい出来だ!たった一日でコレとはとても信じられんな!」
「おっ、じゃあ特産品に出来そう?」
「品質自体は全くもってケチの付けようがない…が、やはりアイシェを特産品にするのはやめた方が良いかもしれん」
タル全ての試飲が終わって驚く料理長に俺が聞くと急に考えを変えたかのような事を言い出した。
「なんで?」
「アイシェの価値が下がってしまう。質の高いアイシェは貴重だからこそ高値で取り引きされている…つまり、容易に数を揃えると業者に買い叩かれてしまう恐れがあるんだ」
「消費者からしたら安くなるんなら良い事じゃないの?」
「…兄ちゃんと同じ真似が出来る奴があと何人かいれば、な。このままだとアイシェを扱う業者は軒並み大打撃を受けるだろう…俺はアイシェ通を自称する以上、先を見越すならソレは到底看過出来る問題では無い」
「つまり?どゆこと?」
料理長の長い説明に結局なにが言いたいのか分からなくなったので俺は率直に意図を尋ねる。
「コレは『特産品』ではなく『名産の限定品』として数を絞ってさばく方が労力的にも効率的ということだ」
「あー、限定品かぁ。…なんか一気に特別感が出て購買欲を煽る完璧な宣伝じゃん!さっすが」
「高級アイシェをさばくルートは俺に任せろ。おそらく仲介料として売り上げの一割は取られるだろうが、取引の実績は高い」
「へー、通を名乗ってるだけあって色んなツテがあって顔が広いんだな」
「まあな」
料理長の発想と頼もしい言葉に俺が褒めると照れたように頭を掻く。
「実は王妃もワイン通でな。人前では何も言わないが、ワインにはうるさい女よ」
「マジで?じゃあ料理長みたいにラベルが無くても飲むだけで分かんの?」
俺とも話が合う。と意外な事実を教えてくれた料理長と同じ事が出来るのかを聞いてみた。
「試してみるか?」
「やろうやろう」
料理長のイタズラを仕掛けるように意地悪な笑いをしながらの提案に俺は面白がって当然ソレに乗る。
…つーわけで、タルのいくつかの中身を小瓶に移して小さいラベルに料理長が名称を書いて貼り、王妃の所へと持って行く事にした。
「おや、ウミハラ殿。王妃に用事ですかな?」
「ちょっとワインを差し入れにね」
「ワイン…?」
「アイシェだ。上質な物が手に入ったのでな…是非とも王妃に味を見てもらおう、と」
「なるほど。分かりました」
王妃の部屋の前に居た警護兵は俺と料理長の説明に納得したように呟いて入室を許可する。
「失礼しまーす」
「おや、ウミハラ殿にガンディーニシェフ?私に何か用ですか?」
「なに、良いアイシェが手に入ってな。差し入れだ」
部屋の中に入ると書類作業をしていた王妃が俺らを見て笑顔で用件を尋ねるので料理長が意地悪そうに笑いながら返して小瓶を見せた。
「まあ!ちょうど休憩しようとしていたところです。息抜きに飲ませてくれませんこと?」
「マジで?タイミング良かったんだ」
「みたいだな」
喜んだような王妃の反応に俺がそう返すと料理長はニヤニヤ笑いながらテーブルの上にワイングラスを5つ並べるように置いてその隣に小瓶を置いて行く。
「おっ、じゃあ特産品に出来そう?」
「品質自体は全くもってケチの付けようがない…が、やはりアイシェを特産品にするのはやめた方が良いかもしれん」
タル全ての試飲が終わって驚く料理長に俺が聞くと急に考えを変えたかのような事を言い出した。
「なんで?」
「アイシェの価値が下がってしまう。質の高いアイシェは貴重だからこそ高値で取り引きされている…つまり、容易に数を揃えると業者に買い叩かれてしまう恐れがあるんだ」
「消費者からしたら安くなるんなら良い事じゃないの?」
「…兄ちゃんと同じ真似が出来る奴があと何人かいれば、な。このままだとアイシェを扱う業者は軒並み大打撃を受けるだろう…俺はアイシェ通を自称する以上、先を見越すならソレは到底看過出来る問題では無い」
「つまり?どゆこと?」
料理長の長い説明に結局なにが言いたいのか分からなくなったので俺は率直に意図を尋ねる。
「コレは『特産品』ではなく『名産の限定品』として数を絞ってさばく方が労力的にも効率的ということだ」
「あー、限定品かぁ。…なんか一気に特別感が出て購買欲を煽る完璧な宣伝じゃん!さっすが」
「高級アイシェをさばくルートは俺に任せろ。おそらく仲介料として売り上げの一割は取られるだろうが、取引の実績は高い」
「へー、通を名乗ってるだけあって色んなツテがあって顔が広いんだな」
「まあな」
料理長の発想と頼もしい言葉に俺が褒めると照れたように頭を掻く。
「実は王妃もワイン通でな。人前では何も言わないが、ワインにはうるさい女よ」
「マジで?じゃあ料理長みたいにラベルが無くても飲むだけで分かんの?」
俺とも話が合う。と意外な事実を教えてくれた料理長と同じ事が出来るのかを聞いてみた。
「試してみるか?」
「やろうやろう」
料理長のイタズラを仕掛けるように意地悪な笑いをしながらの提案に俺は面白がって当然ソレに乗る。
…つーわけで、タルのいくつかの中身を小瓶に移して小さいラベルに料理長が名称を書いて貼り、王妃の所へと持って行く事にした。
「おや、ウミハラ殿。王妃に用事ですかな?」
「ちょっとワインを差し入れにね」
「ワイン…?」
「アイシェだ。上質な物が手に入ったのでな…是非とも王妃に味を見てもらおう、と」
「なるほど。分かりました」
王妃の部屋の前に居た警護兵は俺と料理長の説明に納得したように呟いて入室を許可する。
「失礼しまーす」
「おや、ウミハラ殿にガンディーニシェフ?私に何か用ですか?」
「なに、良いアイシェが手に入ってな。差し入れだ」
部屋の中に入ると書類作業をしていた王妃が俺らを見て笑顔で用件を尋ねるので料理長が意地悪そうに笑いながら返して小瓶を見せた。
「まあ!ちょうど休憩しようとしていたところです。息抜きに飲ませてくれませんこと?」
「マジで?タイミング良かったんだ」
「みたいだな」
喜んだような王妃の反応に俺がそう返すと料理長はニヤニヤ笑いながらテーブルの上にワイングラスを5つ並べるように置いてその隣に小瓶を置いて行く。
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