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壮年期 38
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それから二日後。
敵後方から来た味方の援軍達が敵の軍勢に後ろから攻めかかり、同時に今まで守勢だった味方の軍勢が反転攻勢に出る。
…後方からの援軍が寡兵だと見抜いたらしい敵軍が1/3ほどの人数を割いて援軍の部隊を対処しようとしたが…
援軍達が下がるのをそのまま追いかけて行ったように見えたため、森の付近で伏兵の奇襲に遭い…陣形を保つ事が出来なかったのか瞬く間に敵軍が蹴散らされていく。
「おおー、これは凄いもんだね」
「一日で一気に形勢が逆転したね。今日が修行の日じゃなくて良かったよ」
「おそらくダンジョンから帰って来たらよく分からないまま状況が逆転してる事になりますからね」
いつもの場所で戦況を見ながら分身の女性が楽しそうに言い、分身の俺は重要な場面を見逃ずに済んだ事を喜ぶと分身のお姉さんがダンジョンに行ってた場合を想定して話した。
その後。
夕方になる頃には敵軍の兵数も結構減っていき、防衛線もガンガン押し戻していく。
「…クライン辺境伯。お願いがあるのですが…」
「お願い?なに?」
分身の俺らがテントの中で夕飯を食べていると青年がやって来て頼み事をしてくるので分身の俺は不思議に思いながら聞き返す。
「明日、戦いが始まる前に敵軍へと撤退を勧告してもらえませんか?辺境伯ならば早期に戦いを終わらせる事が出来ると考えています」
「あー…オッケーオッケー。いつものように名乗りを上げれば良いわけね。その代わりコッチからも条件が一つ」
内容を聞いて理解し、分身の俺は軽く了承して人差し指を立てながら自分にも要求がある事を告げる。
「なんでしょうか?」
「俺は名乗りを上げる際には一騎打ちを申し込む事にしてんの。で、もし一騎打ちが始まった場合には邪魔しないで欲しい」
「その程度の事ならば造作も無い。感謝申し上げます…どうぞよろしくお願いします」
青年の緊張したような面持ちでの確認に分身の俺が世間話的な軽い感じで要望を答えると、青年は安心したような顔になって快諾してくれた。
そして翌朝。
「やーやー!我こそはラスタより援軍として参った猟兵隊の団長なり!誰ぞ一騎打ちを受ける者はおらんか!」
「ラスタ?」
「ラスタだと?」
「ラスタっていったら…」
「そんな事より『猟兵隊』って聞こえなかったか?」
分身の俺が馬に乗って敵軍に近づき、大声で名乗りを上げて一騎打ちを申し入れると敵兵達がザワザワと騒ぎ始める。
「繰り返す!我こそはラスタより援軍として参った猟兵隊の団長だ!今すぐに退却するか!一騎打ちを受けるか!それともそのまま戦いを続けて敗走するか!さあどうする!」
「やっぱり猟兵隊って…!」
「あの猟兵隊か!」
「あの噂の…!」
「じゃあ猟兵隊も…!?」
「今の状況で勝てるわけが…!」
分身の俺の二度目の名乗り上げと脅迫に敵兵達は混乱した様子で怯えたように後ろに下がり出した。
「誰ぞ一騎打ちを受ける者はおらんのか!せっかくの機会だぞ!」
「…逃げろ!」
「殺される…!」
分身の俺が敵の軍勢に近づきながら再度申し出を入れるも敵兵の何人かが逃げ出し、それを皮切りに続々と敵兵達が逃げ出していく。
「…ええー…まあいっか」
分身の俺は誰も一騎打ちを受けてくれる人が出なかった事に落胆しながら呟きつつも目的は達成したので気持ちを切り替えて味方の所へと戻る。
「流石です!流石はクライン辺境伯!見事でした!」
「ああ、うん」
「士気が下がっている今のヴェルヘルム軍ならクライン辺境伯が威圧すれば退却するとは思っていましたが…ああも逃げるように退却するとは」
上機嫌で褒めてくる青年に分身の俺が適当に返すと嬉しそうに自分の読みが的中した事を語り始め…
「…威圧て。まあ背中を襲わないようにね」
「分かっています。敵とはいえ戦意喪失している者を背後から襲いかかるのは恥になりますので」
分身の俺は微妙な感じで反発するように返して釘を刺すも青年は肯定するように了承した。
「…後はヴェルヘルム軍が国境付近から離れるまで守りを固めるだけですので、我々だけで十分でございます」
「また攻めて来ない?」
「その時はクライン辺境伯の噂を流しておきます。今回ずっと待機してもらっていたのが布石として効果を発揮すると考えています」
青年の急なお役御免のような発言に、分身の俺が疑問を尋ねるもそこらへんは既に対策済みらしい。
「…なるほど。先の事もしっかり考えて俺らに指示を出していたわけだ…素晴らしい策士だね」
「いえいえ、全てはクライン辺境伯の威名があればこそで…クライン辺境伯の協力がなければもっと苦しい戦いを強いられていたかと」
分身の俺が理解して褒めると青年は謙遜するような感じで返す。
「…そう?じゃあ俺らは前の所に戻った方が良い?」
分身の俺は否定しようと思ったがなんか長引きそうなので適当に流して確認する。
「…そう、ですね…セリィア方面は苦しい戦いが続いてどんどん押し込まれているとの報告が来ていますが…しかし…一旦、総司令にお会いしていただけますか?明日までには私の方で総司令への手紙を書いておきますので」
「一旦首都に戻ればいいわけね」
「はい。こちらの都合でお手数をおかけして申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします」
青年の考えながらの指示に分身の俺が確認しながら了承すると青年は肯定して謝るように頭を下げた。
敵後方から来た味方の援軍達が敵の軍勢に後ろから攻めかかり、同時に今まで守勢だった味方の軍勢が反転攻勢に出る。
…後方からの援軍が寡兵だと見抜いたらしい敵軍が1/3ほどの人数を割いて援軍の部隊を対処しようとしたが…
援軍達が下がるのをそのまま追いかけて行ったように見えたため、森の付近で伏兵の奇襲に遭い…陣形を保つ事が出来なかったのか瞬く間に敵軍が蹴散らされていく。
「おおー、これは凄いもんだね」
「一日で一気に形勢が逆転したね。今日が修行の日じゃなくて良かったよ」
「おそらくダンジョンから帰って来たらよく分からないまま状況が逆転してる事になりますからね」
いつもの場所で戦況を見ながら分身の女性が楽しそうに言い、分身の俺は重要な場面を見逃ずに済んだ事を喜ぶと分身のお姉さんがダンジョンに行ってた場合を想定して話した。
その後。
夕方になる頃には敵軍の兵数も結構減っていき、防衛線もガンガン押し戻していく。
「…クライン辺境伯。お願いがあるのですが…」
「お願い?なに?」
分身の俺らがテントの中で夕飯を食べていると青年がやって来て頼み事をしてくるので分身の俺は不思議に思いながら聞き返す。
「明日、戦いが始まる前に敵軍へと撤退を勧告してもらえませんか?辺境伯ならば早期に戦いを終わらせる事が出来ると考えています」
「あー…オッケーオッケー。いつものように名乗りを上げれば良いわけね。その代わりコッチからも条件が一つ」
内容を聞いて理解し、分身の俺は軽く了承して人差し指を立てながら自分にも要求がある事を告げる。
「なんでしょうか?」
「俺は名乗りを上げる際には一騎打ちを申し込む事にしてんの。で、もし一騎打ちが始まった場合には邪魔しないで欲しい」
「その程度の事ならば造作も無い。感謝申し上げます…どうぞよろしくお願いします」
青年の緊張したような面持ちでの確認に分身の俺が世間話的な軽い感じで要望を答えると、青年は安心したような顔になって快諾してくれた。
そして翌朝。
「やーやー!我こそはラスタより援軍として参った猟兵隊の団長なり!誰ぞ一騎打ちを受ける者はおらんか!」
「ラスタ?」
「ラスタだと?」
「ラスタっていったら…」
「そんな事より『猟兵隊』って聞こえなかったか?」
分身の俺が馬に乗って敵軍に近づき、大声で名乗りを上げて一騎打ちを申し入れると敵兵達がザワザワと騒ぎ始める。
「繰り返す!我こそはラスタより援軍として参った猟兵隊の団長だ!今すぐに退却するか!一騎打ちを受けるか!それともそのまま戦いを続けて敗走するか!さあどうする!」
「やっぱり猟兵隊って…!」
「あの猟兵隊か!」
「あの噂の…!」
「じゃあ猟兵隊も…!?」
「今の状況で勝てるわけが…!」
分身の俺の二度目の名乗り上げと脅迫に敵兵達は混乱した様子で怯えたように後ろに下がり出した。
「誰ぞ一騎打ちを受ける者はおらんのか!せっかくの機会だぞ!」
「…逃げろ!」
「殺される…!」
分身の俺が敵の軍勢に近づきながら再度申し出を入れるも敵兵の何人かが逃げ出し、それを皮切りに続々と敵兵達が逃げ出していく。
「…ええー…まあいっか」
分身の俺は誰も一騎打ちを受けてくれる人が出なかった事に落胆しながら呟きつつも目的は達成したので気持ちを切り替えて味方の所へと戻る。
「流石です!流石はクライン辺境伯!見事でした!」
「ああ、うん」
「士気が下がっている今のヴェルヘルム軍ならクライン辺境伯が威圧すれば退却するとは思っていましたが…ああも逃げるように退却するとは」
上機嫌で褒めてくる青年に分身の俺が適当に返すと嬉しそうに自分の読みが的中した事を語り始め…
「…威圧て。まあ背中を襲わないようにね」
「分かっています。敵とはいえ戦意喪失している者を背後から襲いかかるのは恥になりますので」
分身の俺は微妙な感じで反発するように返して釘を刺すも青年は肯定するように了承した。
「…後はヴェルヘルム軍が国境付近から離れるまで守りを固めるだけですので、我々だけで十分でございます」
「また攻めて来ない?」
「その時はクライン辺境伯の噂を流しておきます。今回ずっと待機してもらっていたのが布石として効果を発揮すると考えています」
青年の急なお役御免のような発言に、分身の俺が疑問を尋ねるもそこらへんは既に対策済みらしい。
「…なるほど。先の事もしっかり考えて俺らに指示を出していたわけだ…素晴らしい策士だね」
「いえいえ、全てはクライン辺境伯の威名があればこそで…クライン辺境伯の協力がなければもっと苦しい戦いを強いられていたかと」
分身の俺が理解して褒めると青年は謙遜するような感じで返す。
「…そう?じゃあ俺らは前の所に戻った方が良い?」
分身の俺は否定しようと思ったがなんか長引きそうなので適当に流して確認する。
「…そう、ですね…セリィア方面は苦しい戦いが続いてどんどん押し込まれているとの報告が来ていますが…しかし…一旦、総司令にお会いしていただけますか?明日までには私の方で総司令への手紙を書いておきますので」
「一旦首都に戻ればいいわけね」
「はい。こちらの都合でお手数をおかけして申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします」
青年の考えながらの指示に分身の俺が確認しながら了承すると青年は肯定して謝るように頭を下げた。
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