上 下
449 / 480

壮年期 23

しおりを挟む
「ん?知り合いかい?」

「まあ一応は」

「珍しいですね。こんな所で、しかも今みたいなタイミングで会うなんて」


近くに居た分身の女性の問いに分身の俺が肯定すると分身のお姉さんは意外そうに言う。


「確かに。俺もまだこんな所にいるなんて思ってなかったからなぁ…」

「辺境伯殿達はなぜココに?」

「同盟国、って事で援軍を要請されてね。それで」

「なるほど。このアーデンとラスタは同盟国だったのか…」


分身の俺が賛同しながら返すと帝国兵が疑問を尋ね、簡単に答えると納得した後に意外そうに呟く。


「そういやどの国と争ってるかは聞いた気はするけど覚えてないな…その『ヴェルヘルム』って国と戦争中?」

「いえ。…いえ、『ヴェルヘルム』とも戦時中…とも言えなくもないですね…」


分身の俺の世間話的な感じでの問いに帝国兵は一旦否定した後に訂正するかのように考えながら微妙な言い回しで呟く。


「セリィアと一時的に協力体制を結んでいますので状況次第では侵攻に踏み切るかもしれません」

「なるほど、今は動向を見守ってる最中って事か…」

「我々としては早期に決断してもらい、侵攻に踏み切ってくれた方がありがたいのですが」

「封鎖が解かれない事には移動もままならないからなぁ」


帝国兵は簡単に現状を説明し、国境の封鎖を解いて欲しい考えを告げるので分身の俺も賛同するように返す。


「とはいえ帰還したら報告書の作成や部隊の訓練等で忙しくなるでしょうからこの休暇期間が長引く分には嬉しい限りですけども」

「ありゃ、ついに『休暇』って言っちゃった」

「おっと、今のは聞かない事にして下さい。では情報収集の任務に戻りますので、これで」

「ん。またね」


帝国兵の発言に分身の俺が弄るように言うと笑って返し、挨拶すると歩いて行く。


「あんたとの会話を聞いた限りこの国の人ではなさそうだったけど…どこの人なんだい?」

「帝国の兵士だよ。ほら、この前魔法協会の本部がある大公国に攻めて来た」

「「えっ!?」」


分身の女性の疑問に分身の俺が軽い感じで答えると分身のお姉さんと一緒に驚いた。


「今の人は大佐だったか中佐だったか…とりあえず佐官クラスの、軍の中では結構なお偉いさんだったりする」

「帝国の兵が…なんでこんなところに?」

「帰還中に足止めくらったんだと。ココの隣国のヴェルヘルムから飛行船を乗り継いで帰ろうとしたのに、そのヴェルヘルムとの国境が封鎖されてたって」

「「ああ、なるほど」」


分身の俺が思い出すように話すと分身の女性が不思議そうに聞き、さっき聞いた事を教えると分身のお姉さんと同時に納得する。



…翌日。



「あ。本当に居た」

「ん?…お」


朝から市場を歩いていると聞き覚えのある声が聞こえ、振り返るとそこには帝国の女の子が。


「援軍として派遣されて来たんだって?」

「そーそー。観光にちょうど良いかな、って」

「観光って…前線に行かなくていいの?」


女の子の問いに肯定して要請を受けた理由を話すと若干呆れたように返した。


「そんな急がなくて良くね?」

「…帝国の奴が何の用だい?」

「…誰?」

「嫁」

「嫁!?こんな所にまで連れて来てんの!?」


分身の俺が適当な感じで返すと分身の女性が警戒した様子バリバリの態度で尋ね、女の子は不思議そうな感じで聞いてくるので関係性を話すと驚きながら分身の女性を見る。


「一応指揮官として有能だから居るとありがたいし」

「…この人が嫁って事は…この子も?」

「おう」


分身の俺の理由を聞いて女の子が分身のお姉さんを見て確認するので肯定した。


「えーと、初めまして?ちゃんと会うのは初めて、だよね?」

「…ああ。大公国で一度見ているが」

「私はラスタの拠点内でも遠目ですが一度見た事があります」


女の子が挨拶して確認すると分身の二人は警戒した様子のまま答える。


「…え、なんで私こんなに警戒されてんの…?もしかしてソッチを狙ってると思われてる…?」

「いや、普通にこの前の大公国侵攻の件だろ。ソッチが総司令だったし」

「あー…そっか。根に持たれてるのか…ソッチがめちゃくちゃ友好的なもんだから感覚がちょっとおかしくなってるかも…」


女の子は分身の俺を引き寄せて耳打ちするように小声で疑問を尋ね、分身の二人に警戒されてる理由を予想して返すと女の子が納得して理解したように微妙な顔で呟く。


「だって俺は魔法協会所属じゃないから関係無いしな」

「って事はこの二人は魔法協会所属なんだ…その節はどうも?」

「いやその言い方はおかしいだろ」


分身の俺が人事のように言うと女の子はちょっと困ったように皮肉だか嫌味だかと受け取られ兼ねないワードチョイスをするので、分身の俺は思わずツッコむ。


「だってあの時は皇帝陛下の命に従っただけで別に私が悪いわけじゃないんだし、謝るのもおかしくない?」

「確かに」

「だがあの時の恥知らずな方法を実際に指示、実行したのはあんただろう?」


女の子の若干困惑しながらの正当性を主張するかの言い訳に分身の俺が賛同すると、分身の女性は夜襲や兵站狙いを非難するように指摘した。


「『恥知らず』?何言ってんの?効率的で効果的な戦術の一つでしょ。戦争の基本でもある孫子の兵法すら知らないような原始人にはこのレベルの話は少し難しかったかな?」

「…なんだって?」


女の子が反発するように喧嘩腰で反論して馬鹿にすると、分身の女性は言ってる言葉は理解出来なくても罵倒されてる事は分かったらしくイラついた喧嘩腰で返す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。

karashima_s
ファンタジー
 地球にダンジョンが出来て10年。 その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。  ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。 ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。  当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。  運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。  新田 蓮(あらた れん)もその一人である。  高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。 そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。 ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。 必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。 落ちた。 落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。 落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。 「XXXサバイバルセットが使用されました…。」 そして落ちた所が…。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

処理中です...