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壮年期 19

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…翌日。


俺の処刑が失敗に終わった事で教会側が異端者認定した異端審問の妥当性を疑われる事態になり、その調査が行われる事に。


…当然調査を行うのは俺や侯爵のおっさん、辺境伯の青年の派閥の息がかかった聖職者達だ。


そして調査の結果が出るまでの間、逃亡阻止として首謀者の大司教及び加担した司祭やらの腐った上層部達は中央騎士団によって拘束されて軟禁される事になるらしい。


「…団長。ダリーヌ公爵が来てるが…」


俺が自室で大司教や腐った上層部の死刑を反対し、終身刑に減刑するよう助命嘆願書を書いているとドアがノックされて団員の一人が来客を知らせてくる。


「マジで?明日辺り行こうと思ったのに…俺が行くよ」

「分かった」


俺は驚いて意外に思いながら呟き、嘆願書を後回しにして公爵の出迎えに行く事にした。


「おっ。なんか偉い方の公爵が来てるって聞いたけど…」

「俺も聞いた。それで今から迎えに行くところ」

「そうかい。じゃああんた一人で十分だね、任せたよ」


本部の建物から出ると嫁の女性がさっき団員から聞いた来客の話をもう一度してくるので、俺は既知で行動に移してる事を伝えると女性は笑顔で手を振って歩いて行く。


「…お久しぶりです。ダリーヌ公爵」

「お久しぶりです。先日届いた手紙と同じ状況になられたようですので急ぎ確認に参りました」


俺が拠点の出入り口で出迎えて挨拶すると婦人は普通の馬車から降りて会釈しながら挨拶を返し、ココに来た用件を告げる。


「…と言う事は、要望通り復職してくれるのですか?」

「ええ。教会の判断が誤りである事が確定した以上、私が教会の手先に嵌められたとの指摘も事実だという事です。であれば先の決定を受け入れるわけにはいきません」


俺の確認に婦人は肯定して教会側の行為に反発するように反抗的な意思を示した。


「クライン辺境伯への刑の執行は現場で見ていました。やはり神は正しき者の味方なのですね」

「神の名を自分達の利益のために利用して過ちを犯すなんてまさに『神をも恐れぬ行為』だったわけだけど…まあ流石の神様も間違ってる者には与しないって事でしょうね」


婦人が急に両手を組んで信心深い事を言い出すが俺は別に神なんてどうでもいいので冗談を言うような感じでボケて返す。


「そうですね。私達も神の名の下に正しき道を歩まねば…いつ裁きが下るか…」

「とりあえずダリーヌ公爵が元のポストに戻れるよう他の派閥の人達と共に色々と手を打っていましたので…近い内に打診が来ると思います」

「…ありがとうございます。では私はその時に備えて準備がありますのでこれで…」

「お仕事頑張って下さい」


婦人の信者のような発言に俺が強引に本題に戻すとお礼を言って馬車に乗り込むので食事に誘うのは諦めて応援の言葉をかける。


…その三日後。


異端審問の妥当性についての調査が思いのほか早く終わり、結果は当然『妥当性無し』。


つまり教会側の権力の悪用が認められた形になって大司教や腐った上層部達は資格剥奪処分の上に投獄された。


…宗教絡みなのでその宗派の他の上層部達が国の判断と行為に批判や反発すると思いきや…


流石にやりすぎ判定になって庇えないのか『ラスタ政府の判断を支持する』との声明を発表。


と言うわけで、俺が推薦した司祭が大司教に任命されて侯爵のおっさんや辺境伯の青年の派閥が推薦した聖職者達が空いた上層部の席へとスライドする事に。


「…団長、侯爵が来たぞ」

「オッケー、ありがと」


王都での用は済んだのか、おっさんが拠点に来たらしく…俺は建物の入口で出迎えるために立ち上がる。


「…久しいな。本当は直ぐに寄りたかったのだが…」

「色々と忙しかったでしょうから仕方ありません」

「うむ。これで教会も多少はマシになれば良いのだが…」


馬車から降りて挨拶してくるおっさんに俺がフォローするように返すと憂うような感じで呟く。


「午後には辺境伯も来るらしいので、アッチ側も落ち着いたんでしょうね」

「流石にエルーナ公はやるものだ。最初からあちらに席の数は譲るつもりだったが、思いのほか優位を取れる数で埋められてしまってな…」

「空いた11席の内訳はどのような感じに?」

「こちらが4であちらが7だ」

「…5と6かと思ったんですが、3人の差は結構大きいですね」


俺は自室に案内しながら青年からも手紙を貰った事を告げるとおっさんが派閥のトップと交渉になった事を話し、興味が湧いて聞いてみると意外な結果になったようだ。


「だがまあ教会の不正を減らすという目的は同じだ。それに大司教が中立であるゼルハイト卿の側ならば問題はあるまい」

「今までの教会は不正に塗れてたようですからね…異端審問の調査結果なんて宗教関係者達でさえ唖然とする内容だったらしいですし」

「…是正のきっかけになったゼルハイト卿を早急に始末するために手段を選んでる暇など無かったのだろう。ゼルハイト卿があのまま処刑されていれば全てを闇の中に葬り去って今まで通り好き勝手振る舞っていたに違いない」


おっさんの気を取り直したような言葉に俺が世間話のように返すとおっさんはなんとも言えないような顔でもしもの想定を話し出す。
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