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壮年期 18

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…教会騎士団の騎士団長はそこら辺に売ってそうな安物の斧に全力を込めたのか、斧がポッキリと折れてギロチンの刃もバキッと折れた。


「おやおや、刃が使い物にならなくなってしまいましたなぁ…これは偶然かまぐれか、奇跡なのかそれとも神の加護によるものか」

「黙れ!おい!急いで絞首台の準備をしろ!絞首刑に切り替える!」

「「「はっ!」」」


分身の俺が煽るように言うと大司教は焦りながら返し、慌てた様子で指示を出すと教会騎士の一人が首をロックしてる板を外してくれる。


「絞首刑ねぇ…大丈夫?今度は紐が千切れたりしない?」

「おい!念の為に太くて丈夫な新しい紐を用意して付け替えろ!」


分身の俺の余裕の態度での煽りに腐った上層部の一人はギロチンの刃の事を怪しんでか教会騎士に命令を下す。


「一度目は失敗に終わった!どうやらギロチンの刃が刃こぼれしていたか錆びていたか劣化していたか…とりあえず脆くなっていて首を切り落とすには鋭さが足りなかったみたいだ!コレは奇跡か?神の加護か!?」

「ええい黙れ!準備を急がせろ!」


分身の俺が喉をセイレーンに部分変化させて民衆を扇動するように大声で言うと大司教が焦った様子で教会騎士達に催促するが、分身の俺の口を塞がせるような事をしなかった。


「…しかしなんでこう直ぐに用意できるんだか…まさか事前にこうなる事を予想して物を準備してた?」

「直前まで絞首刑との二択でしたので両方準備していました」

「なるほど」


迅速に処刑器具が撤去され、新しく設置されていく様子を見ながら分身の俺が不思議に思いながら聞くと意外にも教会騎士の一人は普通に答えてくれる。


「…設置完了いたしました!」

「よし。少々トラブルが起きたので再度!刑の執行を開始する!」


…絞首台が僅か10分という脅威のスピードで設置され、教会騎士が報告すると大司教が直ぐに再開を宣言した。


「階段をお登り下さい」

「はいはい」

「…準備が完了いたしました」


教会騎士の誘導に従いながら階段を登ってロープの前に行くと教会騎士が分身の俺の首に輪っかをかけて合図を出し、階段を降りていく。


「始めろ!」

「はっ!」


大司教が合図を出すと教会騎士が返事をして下の方で何か仕掛けを外したのか足下がパカッと開き、自重で紐が首に食い込んだ。


「いてっ」

「「「「…は??」」」」


…直ぐに変化魔法を使って一部スライム化させてヌルッと縄から抜けてドサっと地面に落ちるとその場に居たみんなが呆気に取られたような反応をする。


「おいおい、縄が緩いんじゃないか?首に締まる前に抜けて落ちたぞ。危ねーな、欠陥じゃねぇか」

「なんだと…!?もう一度だ!もう一度吊るせ!」

「その前に縄の確認だ!」

「太くしたから締まらないのではないか?やはり元に戻した方が…!」

「しかし…!切れる恐れがあるぞ!」


分身の俺が煽るように苦情を言いながらステージの上に登ると大司教や腐った上層部は焦り出して指示を出す。


「もう一度だ!」

「…はあ…こちらへ…」

「はいはい」


怒ったような大司教の指示に教会騎士の一人は流石に大司教達を訝しむような感じで見て不満気な顔をしながら渋々分身の俺を誘導する。


「…準備完了です」

「やれ!」

「なっ…!」


教会騎士が分身の俺の首に縄を掛けると直ぐに大司教が合図を出し、即座に足下がパカッと開くと教会騎士が片足を取られ…


「ぐっ…!うっ」

「うっ!」


咄嗟に分身の俺の胴にしがみついたせいで二人分の重さがかかって一瞬で縄が首をキツく締め上げるが、変化魔法を使っての部分変化でまたしてもヌルッと縄を抜けて教会騎士もろとも地面に落ちた。


「流石にこれはもう神の加護でしょ。諸君!この場に集まった民衆の諸君!君らは見たはずだ!これこそが神の意志に他ならない!神の加護は我にあり!」


分身の俺が後ろ手に縛られてるロープをヌルッと抜けた後にステージに登りながら大司教に現状を突きつけ、民衆を先導するように叫んで握り拳を突き上げる。


すると民衆達はおおー!!と耳をつんざくほどの大歓声を上げた。


「絞首刑じゃなくて火刑にしとけば良かったのに…まあ準備に時間かかるから無理か。んじゃバイバーイ」


分身の俺は呆然とした様子を見せる大司教や腐った上層部を煽りながら言い、余裕を見せつけて手を振って拠点に帰る事に。




ーーーー




「お帰りなさいませ、ゼルハイト様。ご無事で何よりです」

「だから言っただろ?アンネリーゼ、普通の処刑で殺せるはずが無い…って」


…お姉さんや女性と共に拠点に帰ると意外な事に魔法協会の新旧代表者である二人が出迎えてくれる。


「…いや、俺は影武者だから別に死んでも問題は無いんだけど…まあ確かにあの程度ではな」

「「影武者!!?」」


分身の俺が微妙な顔で告げると二人は驚愕しながら分身の俺を凝視した。


「本人なら今多分自室に居ると思う」

「え、ええ…?」

「いくら影武者だからって処刑を肩代わりさせるだなんて横暴じゃないか?」

「俺が自ら望んだ事だし。本人の俺が万が一にでも本当に死んだら色々と困る事が多いから」

「ま、まあそれなら…しかし命がけには変わりないけど、一体いくら貰ってるんだ?」


分身の俺の予想に少女は困惑したように呟き、女が俺を非難するように言うが分身の俺が適当に嘘を返すと女は納得した後に疑問を聞いてくる。


「領地の収入は全て影武者の俺らの懐に入る事になってる」

「…なるほど。それだけの報酬があれば命をかける理由にはなるか…」

「じゃ、俺は報告に行かないといけないから」


分身の俺は適当な誤魔化しを告げた後に話を切り上げて分身を解くために本部へと向かう。
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