441 / 480
壮年期 15
しおりを挟む
その三日後。
ライツの王女と俺の婚姻が破談になりかけている現状を招いた責任を取ってダリーヌ公爵が辞任する事になった、らしい。
ーー
「…団長さん。今いいですか?」
「なに?」
「コンテスティ侯爵がお見えになっていますが…」
「オッケー、ありがとう」
俺が拠点の自室で報告書を読んでいるとドアがノックされ、協会員の人が来客の報告をしてくるので俺はお礼を言って出迎えに行く事に。
「…お久しぶりです」
「おお。ゼルハイト卿、この度は大変だったようだな」
「何かありましたっけ?」
「ダリーヌ公の件だ。何も知らされていなかったと聞いたが?」
俺の出迎えにおっさんは嬉しそうに挨拶すると労いっぽい言葉をかけ、俺がとぼけたように返すと確認するように聞く。
「ああ…そうですね。下っ端が雑な仕事をしたせいで大変な事になってるとか」
「…教会の仕業、だな」
「教会の?」
「ああ。流石におかしいと思って調べさせた…結果は教会側がねじ込んだ新興貴族達がゼルハイト卿への伝達を担っていた。そして新興貴族と教会側の繋がりは巧妙に隠されていたと聞く…おそらくダリーヌ公は何も知らない可能性が高い」
俺のどうでも良さげな人事のような言い方におっさんは何かを知ってるかのように返し、俺が不思議に思いながら聞くと既に動いていた事を告げて調査結果を教えてくれる。
「…どうりで。聞き覚えの無い貴族が来てたので怪しいとは思ってましたが、まさか教会側の仕込みとは…流石ですね」
「なに、教会側は最近怪しい動きが多いのでな。特にゼルハイト卿を敵視しているようだからもしや、と思ったまでだ」
俺が納得して称賛するように言うとおっさんは得意気にニヤリと笑いながら返す。
「…そうなると王女誘拐も教会が関与して…?いや、流石にそこまでは無理か…おそらく国内の内輪揉めの可能性が高い、か…」
「しかし教会も思い切った事をしたものだ。下手をすれば国自体が危機に晒される危険性が高いというのに…」
「全くですね。このやらかしでライツが同盟の話を白紙に戻すとか考えなかったんですかね?」
俺は考えながら小声でブツブツと呟くもおっさんには聞こえなかったらしく、呆れたようにため息を吐いて教会側の行動を批判する感じで言うので俺も同意して批判的に返した。
「そこまで考えが及ばなかったか、それともライツと共謀して事を起こしたか…」
「ライツとの共謀の線は薄そうです。王女自身は俺との結婚に納得してる感じがしましたし」
「ふむ…まあ教会は権力争いや政争に首を突っ込みたがり、戦争の現場である戦場にはほとんど参加していないからな…おそらく自分には関係ない、と考えが及ばないのであろう」
おっさんの予想に俺が選択肢の一つを潰すと少し考えて教会を蔑んで馬鹿にするように話す。
…それから一月後。
何故か急に俺がライツとの同盟による婚姻を強く拒否した…という事になり、意味不明に教会からの異端審問にかけられる事態になってしまった。
それだけならまだいい…いや、全然よくはないが裁判の場で直接否定すれば良いだけだ。
が、まさかの張本人である俺が呼ばれる事なく本人不在のまま異端審問が開かれた挙句に速攻で『異端者』認定されて処刑に決定する…という始末。
…異端審問が開かれ、俺の処遇が決まるまで僅か一時間、というその驚愕のスピード感に俺だけじゃなく周りのみんなも驚きや呆れを隠せない。
もはや手段を選ばず、形振り構わずに俺を殺したいという思惑を一切隠さず…最低限取り繕おうともしない教会側の姿勢はある意味凄いと思う。
「ふざけやがって!教会の奴ら…!そこまでして団長を消したいのか!」
「こうなりゃ教会と全面戦争だ!このまま黙っていられるか!」
「あまりに横暴過ぎる!権力の悪用など到底許せたものじゃない!」
…教会からの公式な発表が出回ると当然猟兵隊のみんなは憤慨しながら交戦も辞さないような様子を見せる。
その三日後には辺境伯の青年や侯爵のおっさんの下へと伝わり、当然反発して反教会の流れが出来て国内の様子が荒れに荒れ始めた。
「…国内が大変な事になってますね」
「そりゃそうだ。俺の敵はせいぜい二割から三割といったところ…味方が半分なんだからどう考えてもアッチの分が悪過ぎるでしょ」
「でも処刑を受ける気なんだろう?」
「ん。このままだと大規模な内乱に発展しそうでマジで国の危機だし、同時に腐った教会をぶっ潰すチャンスでもある。まあ俺に喧嘩を売った事を後悔させてやらないと」
自室でのお姉さんの呟きに俺が肯定しながら返すと女性が微妙そうな顔で確認するので、 俺はソレにも肯定してニヤリと笑う。
「まあ分身だったら死んでも問題無いですし…というかそもそも普通の処刑方法で今の坊ちゃんを殺せます?」
「あたしは無理だと思う」
「ソコを利用しない手はないね。処刑が失敗したと見せかけて『神の加護は我に有り』…って叫べば一発よ」
「…教会の上の方達も余計な事をしなければまだ延命出来たでしょうに…よりにもよって坊ちゃんを…敵に回す相手を間違えるとは…」
お姉さんが若干困ったように笑いながら聞くと女性は笑って否定し、俺が策の一部を軽く話すとお姉さんは腐った上層部に同情するかのように呟いた。
ライツの王女と俺の婚姻が破談になりかけている現状を招いた責任を取ってダリーヌ公爵が辞任する事になった、らしい。
ーー
「…団長さん。今いいですか?」
「なに?」
「コンテスティ侯爵がお見えになっていますが…」
「オッケー、ありがとう」
俺が拠点の自室で報告書を読んでいるとドアがノックされ、協会員の人が来客の報告をしてくるので俺はお礼を言って出迎えに行く事に。
「…お久しぶりです」
「おお。ゼルハイト卿、この度は大変だったようだな」
「何かありましたっけ?」
「ダリーヌ公の件だ。何も知らされていなかったと聞いたが?」
俺の出迎えにおっさんは嬉しそうに挨拶すると労いっぽい言葉をかけ、俺がとぼけたように返すと確認するように聞く。
「ああ…そうですね。下っ端が雑な仕事をしたせいで大変な事になってるとか」
「…教会の仕業、だな」
「教会の?」
「ああ。流石におかしいと思って調べさせた…結果は教会側がねじ込んだ新興貴族達がゼルハイト卿への伝達を担っていた。そして新興貴族と教会側の繋がりは巧妙に隠されていたと聞く…おそらくダリーヌ公は何も知らない可能性が高い」
俺のどうでも良さげな人事のような言い方におっさんは何かを知ってるかのように返し、俺が不思議に思いながら聞くと既に動いていた事を告げて調査結果を教えてくれる。
「…どうりで。聞き覚えの無い貴族が来てたので怪しいとは思ってましたが、まさか教会側の仕込みとは…流石ですね」
「なに、教会側は最近怪しい動きが多いのでな。特にゼルハイト卿を敵視しているようだからもしや、と思ったまでだ」
俺が納得して称賛するように言うとおっさんは得意気にニヤリと笑いながら返す。
「…そうなると王女誘拐も教会が関与して…?いや、流石にそこまでは無理か…おそらく国内の内輪揉めの可能性が高い、か…」
「しかし教会も思い切った事をしたものだ。下手をすれば国自体が危機に晒される危険性が高いというのに…」
「全くですね。このやらかしでライツが同盟の話を白紙に戻すとか考えなかったんですかね?」
俺は考えながら小声でブツブツと呟くもおっさんには聞こえなかったらしく、呆れたようにため息を吐いて教会側の行動を批判する感じで言うので俺も同意して批判的に返した。
「そこまで考えが及ばなかったか、それともライツと共謀して事を起こしたか…」
「ライツとの共謀の線は薄そうです。王女自身は俺との結婚に納得してる感じがしましたし」
「ふむ…まあ教会は権力争いや政争に首を突っ込みたがり、戦争の現場である戦場にはほとんど参加していないからな…おそらく自分には関係ない、と考えが及ばないのであろう」
おっさんの予想に俺が選択肢の一つを潰すと少し考えて教会を蔑んで馬鹿にするように話す。
…それから一月後。
何故か急に俺がライツとの同盟による婚姻を強く拒否した…という事になり、意味不明に教会からの異端審問にかけられる事態になってしまった。
それだけならまだいい…いや、全然よくはないが裁判の場で直接否定すれば良いだけだ。
が、まさかの張本人である俺が呼ばれる事なく本人不在のまま異端審問が開かれた挙句に速攻で『異端者』認定されて処刑に決定する…という始末。
…異端審問が開かれ、俺の処遇が決まるまで僅か一時間、というその驚愕のスピード感に俺だけじゃなく周りのみんなも驚きや呆れを隠せない。
もはや手段を選ばず、形振り構わずに俺を殺したいという思惑を一切隠さず…最低限取り繕おうともしない教会側の姿勢はある意味凄いと思う。
「ふざけやがって!教会の奴ら…!そこまでして団長を消したいのか!」
「こうなりゃ教会と全面戦争だ!このまま黙っていられるか!」
「あまりに横暴過ぎる!権力の悪用など到底許せたものじゃない!」
…教会からの公式な発表が出回ると当然猟兵隊のみんなは憤慨しながら交戦も辞さないような様子を見せる。
その三日後には辺境伯の青年や侯爵のおっさんの下へと伝わり、当然反発して反教会の流れが出来て国内の様子が荒れに荒れ始めた。
「…国内が大変な事になってますね」
「そりゃそうだ。俺の敵はせいぜい二割から三割といったところ…味方が半分なんだからどう考えてもアッチの分が悪過ぎるでしょ」
「でも処刑を受ける気なんだろう?」
「ん。このままだと大規模な内乱に発展しそうでマジで国の危機だし、同時に腐った教会をぶっ潰すチャンスでもある。まあ俺に喧嘩を売った事を後悔させてやらないと」
自室でのお姉さんの呟きに俺が肯定しながら返すと女性が微妙そうな顔で確認するので、 俺はソレにも肯定してニヤリと笑う。
「まあ分身だったら死んでも問題無いですし…というかそもそも普通の処刑方法で今の坊ちゃんを殺せます?」
「あたしは無理だと思う」
「ソコを利用しない手はないね。処刑が失敗したと見せかけて『神の加護は我に有り』…って叫べば一発よ」
「…教会の上の方達も余計な事をしなければまだ延命出来たでしょうに…よりにもよって坊ちゃんを…敵に回す相手を間違えるとは…」
お姉さんが若干困ったように笑いながら聞くと女性は笑って否定し、俺が策の一部を軽く話すとお姉さんは腐った上層部に同情するかのように呟いた。
86
お気に入りに追加
1,029
あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる