子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
上 下
437 / 480

壮年期 11

しおりを挟む
…姫を国境に送り届けてから二日後。


「だ、団長!大変な事が…!」


太陽が真上にある昼の時間帯に団員の一人が慌てた様子で分身の俺が泊まってる宿屋の部屋に駆け込んで来た。


「どうした、何があった?ライツが攻めて来たのか?」

「いや、ライツの王女が賊の襲撃に遭ったらしい!」

「…マジ?いつの話?」


分身の俺が逆立ちの腕立てをやめて確認するように聞くと団員は否定して予想外の事態を告げ、分身の俺は驚きながら問う。


「国境で聞いた行商人の話では今日の朝に聞いたらしいから、多分襲撃に遭ったのは昨日の夕方から夜にかけてだと思う」

「…マジか。ライツの治安の悪さよ…それにしても自国の王女を拐うか?普通」

「どうする?助けに行くか?」


団員の報告と予想に分身の俺が呆れながら返すと団員は指示を確認するように尋ねる。


「ん。今のタイミング的にこのままじゃ罪をなすりつけられて俺らのせいにされかねんし…でも俺一人で行く。もしかしたら猟兵隊を潰すための罠って可能性もあるから」


分身の俺は肯定した後に自分が動く事を告げてその理由を話す。


「…なるほど。俺達を誘き寄せるための餌として賊に見せかけて王女を拐った、と」

「俺ならそうする。いくら盗賊とはいえ、まさか身代金目的で自国の王女を拐うなんて恥知らずで命知らずな事はしないだろうからね」

「…確かに。金目当てで王女を拐ったとしても絶対に逃げ切れるハズが無い」 


団員が理解して納得しながら言うので分身の俺が常識的な考えを告げると団員は同意して返した。


「あとは俺がなんとかするから国境の防衛に戻っていいよ。報告ありがとう」

「分かった」


分身の俺は団員に持ち場に戻るよう告げ、お姉さんや女性…隊長達に話を通すために部屋を出る。



「…お。いたいた…ちょっと良い?」

「…どうかしたんですか?」


村の外に設営された宿営地に行くと運動会とかで使われてるテントの下でお姉さんが椅子に座って本を読んでいたので、分身の俺が声をかけると顔を上げて不思議そうに用件を尋ねてきた。


「ライツの王女が賊の襲撃にあって拐われたんだって」

「えっ!?」

「んで。まあ罠の可能性もあるかもしれないからとりあえず俺が様子を見に行く事にした」

「…私も行きましょうか?」


分身の俺が軽い感じで問題が発生した事を告げると当然お姉さんが驚き、報告するように言うとお姉さんは本を閉じて同行を申し出る。


「いや、確かについて来てくれた方が助かるしありがたいではあるけど…万が一の事態に備えて国境の防衛をお願い」

「分かりました。ヘレネーやみんなにも伝えて来ます」

「ありがとう。でも演習は続けといてね」

「はい。相手側に動きを悟られないよう対策を講じておきます」


分身の俺は断った後に代理として猟兵隊の指揮を任せる事を告げるとお姉さんが女性や隊長達に報告に行こうとするので、必要無いとは思いつつも一応指示を出すがお姉さんは理解しているように返して歩いて行く。


「…さて、行くか」


襲撃に遭った場所は聞いていないが、現場には多分馬車の残骸や誰かしらの死体が残ってるだろう…と考えながら分身の俺は変化魔法を使って両手をハーピーとドラゴンの翼に並行変化させ、まずは現場の捜索をする事にした。




ーーーー




「…ん?ココか」


そこそこ速いぐらいのスピードで飛行する事、約20分ぐらいで馬車とその周りに倒れている人達を発見。


「…護衛の騎士達の姿は無い、か…」


誰か生存者は居ないものか…と地面に降りて確認するも既に息絶えてる死体達に見知った顔は居らず、分身の俺はちょっと安堵しながら呟く。


「…騎士達も拐われたのか近くの村か町に行ったのか…」


全く手がかりが得られず困りながらもおそらく生存しているかもしれないと想定して行き先を予想し、分身の俺も近くの村か町へと向かう事に。



「…すみません、この近くでなんか賊の襲撃があったって話を聞いたんですが…」

「ああ、詳しくは分からないが盗賊団にどこぞの貴族が襲われたんだってな。良い気味だ」


分身の俺が近くの村に行って適当な人に声をかけて話を聞くと男は楽しそうに笑いながら言う。


「盗賊団…?野盗の仕業って聞いたんですが…」

「貴族を襲えるほどだ、どう考えても盗賊団の仕業だろう」

「…確かに」

「ここら辺は西の砦を住処にしてる盗賊団の縄張りらしいから犯人はきっとソコの盗賊達に決まってる。まあなんにせよこれからも俺達みたいな貧乏人じゃなくて金をいっぱい持ってる貴族だけを狙ってくれるとありがたいんだがな」


分身の俺の嘘を吐きながらの確認に男は予想を話し、分身の俺が納得したような演技をして返すと犯人を勝手に決めつけ上流階級についての皮肉や嫌味を言い始める。


「全くですね。義賊のように悪どく稼いでる金持ちから奪ってみんなに配ってくれれば尚ありがたいのですが…」

「ははは!そんなに良い奴なら盗賊でも許せるな!」

「では、自分はこれで」


分身の俺が適当に同意して冗談を言うと男は笑って賛同し、会話を終わらせるにはちょうど良いので会釈して村から出た。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...