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壮年期 8
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「…あっと、そろそろ僕は戻らないと…」
「俺も手伝いに行くか?」
「大丈夫。リーゼが居るから」
「…お前だけじゃなくリーゼまで…?」
弟は時計を見るとカップの中のジュースを飲み干して立ち上がり、俺が確認すると弟が拒否った後に予想外の事を言うので俺は驚きながら呟く。
「父様の意向で。そんな大量に作るわけじゃないから僕だけでも十分だったんだけど、まあリーゼが来てくれると楽になるから良いかなって」
「父さんも機会を無駄にしまいとえらい力入れてアピールするんだな…そんな段階はとっくに過ぎてもはや評価は揺るぎないと思うのに」
「だからこそ兄さんへの対応が際立っておかしいんだよね。調印式の後のパーティーを失敗させないよう父様に任せて僕らを呼んで食事を作らせるのに、一番大切で肝心な部分のハズの兄さんには一切話を通さないという取り返しのつかない失敗をやらかしてるわけだし」
弟が妹を呼んだ理由を話し、俺が意外に思いながら返すと弟は表情を変えて不満を隠さずに批判だか非難するように言う。
「確かにな」
「まあでもここで僕が何かすると父様に迷惑がかかるからパーティーが終わるまで…多分今日の内は何も出来ないかも」
「そうだな。機を見て一時的に我慢できるのも統治者の器たるには必要なモノだ、TPOを弁えずに感情の赴くまま自制出来ずに行動するなんてただの野生児だし」
俺の同意に弟は断りを入れるような感じで冷静に現状を鑑みた大人の対応を取る事を告げるので、俺はソレが正しい事を認めて褒めるように返した。
「…じゃあ僕は行くから」
「おう。頑張って来いよ」
弟は多分言葉的には良く分かっていないが意味や言いたい事は理解したような感じを出しながら手を上げて挨拶し、俺は特に言葉の意味を説明する事もなく手を上げて応援の言葉をかける。
…弟が王都に戻って一時間後。
時間的にまだパーティーは終わってないだろうにダリーヌ公爵が拠点にやって来た。
「…お初お目にかかります」
「…クライン辺境伯様、挨拶の前に早急に確認したい事があります」
本部の建物の前で停まった馬車の中から降りてきた見た目20代の女性…婦人に俺が不機嫌を露わにしながら渋々といった顔で挨拶すると、婦人は貴族にしては珍しく挨拶をせずにマナーをガン無視して真っ先に用件から入る。
「確認、ですか?」
「ライツの第三王女との婚姻の話…聞いていないというのは本当なのですか?」
「はい。つい一時間ほど前に弟がココに来て話してくれ、その時に知りました」
「なんと…!そんなことが…!?」
俺が怪訝な目を向けながら聞くと婦人が真剣な顔で確認して来るので肯定して情報を知った経緯を話すと婦人は驚愕して一歩後ろに下がった。
「…ではライツの王女から聞いた滞在の件についても…?」
「…もしかして手紙を読んでいないのですか?」
「手紙?」
婦人の確認に俺が若干驚きながら確認すると婦人は不思議そうな顔をする。
「ダリーヌ公爵宛に抗議の手紙を書いて男爵に渡したのですが…」
「いえ、そのような報告は…」
俺が少し困りながら手紙の件について話すと婦人も困ったような顔をしながら本当に何も聞いてない感じの反応で呟いた。
「…あー…もしかしたら担当の方がちゃんと仕事をせずに嘘を吐いてる可能性がありますね」
「そんな!…いえ、しかし…」
「とりあえず自分が渡した手紙の件や自分に話が通ってない件を担当の方に確認した方がよろしいかと」
「…そう、ですね。すみませんがこれで失礼します」
俺の気まずく思いながらの指摘に婦人は反射的に否定しようとするも言い淀み…
俺がそう提案すると軽く頭を下げて馬車に乗り込み、直ぐに走り去って行く。
「団長!聞いたか?ついにドードルが国境付近から撤退したらしいぞ」
自室に戻ろうとすると馬車と入れ違いになるように馬に乗った団員がやって来て馬上から報告してきた。
「お。マジで?」
「ああ。ちょうど商人達の護衛で行った町で辺境伯の部下と会ってな」
「へー、王都に報告に行く途中で休憩してたのかな?」
「そう聞いた」
俺の確認に団員は馬に乗ったまま肯定してその情報を聞いた経緯を告げ、青年の部下がそこに居た理由を予想すると団員が頷く。
「しかし結構早かったな…将軍の嫌がらせが効いたか?」
「防衛側にはほとんど被害は無かったらしい。まあドードル側が消極的な攻め方だった、って話もあるからそのおかげだろうが」
俺が意外に思いながら言うと団員は青年の部下から聞いたんであろう話をした後に噂話を持ち出して予想した。
「そもそも辺境伯のところは西方騎士団だけじゃなく兵達も結構な精強揃いだからなぁ」
「訓練の方も南の侯爵の所や中央騎士団に負けず劣らず厳しいと聞く、やはり練兵の差がそのまま兵の質に繋がってるんだろう」
「まあ総合力じゃどう足掻いても勝てないけど、実戦という場ではウチの猟兵隊も負けてないからね」
「…団長がそんなんだから俺ら猟兵隊が『戦争屋』と呼ばれるんだぞ。まあ間違ってはいないから否定は出来んが」
青年のトコの兵達を評価するように言うと団員が賛同するように言うので、身内上げのごとく得意分野でマウントを取るように言うと…
団員は微妙な顔で笑いながらツッコミを入れるように返す。
「俺も手伝いに行くか?」
「大丈夫。リーゼが居るから」
「…お前だけじゃなくリーゼまで…?」
弟は時計を見るとカップの中のジュースを飲み干して立ち上がり、俺が確認すると弟が拒否った後に予想外の事を言うので俺は驚きながら呟く。
「父様の意向で。そんな大量に作るわけじゃないから僕だけでも十分だったんだけど、まあリーゼが来てくれると楽になるから良いかなって」
「父さんも機会を無駄にしまいとえらい力入れてアピールするんだな…そんな段階はとっくに過ぎてもはや評価は揺るぎないと思うのに」
「だからこそ兄さんへの対応が際立っておかしいんだよね。調印式の後のパーティーを失敗させないよう父様に任せて僕らを呼んで食事を作らせるのに、一番大切で肝心な部分のハズの兄さんには一切話を通さないという取り返しのつかない失敗をやらかしてるわけだし」
弟が妹を呼んだ理由を話し、俺が意外に思いながら返すと弟は表情を変えて不満を隠さずに批判だか非難するように言う。
「確かにな」
「まあでもここで僕が何かすると父様に迷惑がかかるからパーティーが終わるまで…多分今日の内は何も出来ないかも」
「そうだな。機を見て一時的に我慢できるのも統治者の器たるには必要なモノだ、TPOを弁えずに感情の赴くまま自制出来ずに行動するなんてただの野生児だし」
俺の同意に弟は断りを入れるような感じで冷静に現状を鑑みた大人の対応を取る事を告げるので、俺はソレが正しい事を認めて褒めるように返した。
「…じゃあ僕は行くから」
「おう。頑張って来いよ」
弟は多分言葉的には良く分かっていないが意味や言いたい事は理解したような感じを出しながら手を上げて挨拶し、俺は特に言葉の意味を説明する事もなく手を上げて応援の言葉をかける。
…弟が王都に戻って一時間後。
時間的にまだパーティーは終わってないだろうにダリーヌ公爵が拠点にやって来た。
「…お初お目にかかります」
「…クライン辺境伯様、挨拶の前に早急に確認したい事があります」
本部の建物の前で停まった馬車の中から降りてきた見た目20代の女性…婦人に俺が不機嫌を露わにしながら渋々といった顔で挨拶すると、婦人は貴族にしては珍しく挨拶をせずにマナーをガン無視して真っ先に用件から入る。
「確認、ですか?」
「ライツの第三王女との婚姻の話…聞いていないというのは本当なのですか?」
「はい。つい一時間ほど前に弟がココに来て話してくれ、その時に知りました」
「なんと…!そんなことが…!?」
俺が怪訝な目を向けながら聞くと婦人が真剣な顔で確認して来るので肯定して情報を知った経緯を話すと婦人は驚愕して一歩後ろに下がった。
「…ではライツの王女から聞いた滞在の件についても…?」
「…もしかして手紙を読んでいないのですか?」
「手紙?」
婦人の確認に俺が若干驚きながら確認すると婦人は不思議そうな顔をする。
「ダリーヌ公爵宛に抗議の手紙を書いて男爵に渡したのですが…」
「いえ、そのような報告は…」
俺が少し困りながら手紙の件について話すと婦人も困ったような顔をしながら本当に何も聞いてない感じの反応で呟いた。
「…あー…もしかしたら担当の方がちゃんと仕事をせずに嘘を吐いてる可能性がありますね」
「そんな!…いえ、しかし…」
「とりあえず自分が渡した手紙の件や自分に話が通ってない件を担当の方に確認した方がよろしいかと」
「…そう、ですね。すみませんがこれで失礼します」
俺の気まずく思いながらの指摘に婦人は反射的に否定しようとするも言い淀み…
俺がそう提案すると軽く頭を下げて馬車に乗り込み、直ぐに走り去って行く。
「団長!聞いたか?ついにドードルが国境付近から撤退したらしいぞ」
自室に戻ろうとすると馬車と入れ違いになるように馬に乗った団員がやって来て馬上から報告してきた。
「お。マジで?」
「ああ。ちょうど商人達の護衛で行った町で辺境伯の部下と会ってな」
「へー、王都に報告に行く途中で休憩してたのかな?」
「そう聞いた」
俺の確認に団員は馬に乗ったまま肯定してその情報を聞いた経緯を告げ、青年の部下がそこに居た理由を予想すると団員が頷く。
「しかし結構早かったな…将軍の嫌がらせが効いたか?」
「防衛側にはほとんど被害は無かったらしい。まあドードル側が消極的な攻め方だった、って話もあるからそのおかげだろうが」
俺が意外に思いながら言うと団員は青年の部下から聞いたんであろう話をした後に噂話を持ち出して予想した。
「そもそも辺境伯のところは西方騎士団だけじゃなく兵達も結構な精強揃いだからなぁ」
「訓練の方も南の侯爵の所や中央騎士団に負けず劣らず厳しいと聞く、やはり練兵の差がそのまま兵の質に繋がってるんだろう」
「まあ総合力じゃどう足掻いても勝てないけど、実戦という場ではウチの猟兵隊も負けてないからね」
「…団長がそんなんだから俺ら猟兵隊が『戦争屋』と呼ばれるんだぞ。まあ間違ってはいないから否定は出来んが」
青年のトコの兵達を評価するように言うと団員が賛同するように言うので、身内上げのごとく得意分野でマウントを取るように言うと…
団員は微妙な顔で笑いながらツッコミを入れるように返す。
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