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青年期 360

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「…ぅ…」

「お。起きた」

「…ココは……っ!?」


自室で昼飯を食べていると匂いにつられてかソファに寝かせていた女が目を覚まし…


女は不思議そうな顔で周りを確認すると俺を見て直ぐに思い出したように飛び起きて警戒しながら距離を取る。


「結構ガッツリ寝てたみたいだけど…体調はどう?昼飯食べる?」

「…治したの?私を?…なぜ?」


俺が笑ってあれから時間が流れた事を告げた後に確認すると女は警戒した様子のまま尋ねてきた。


「俺は戦うのは好きだけど殺すのは嫌いでね。自ら暇つぶしの楽しみを減らすような愚行はしないんだ」

「…そんな余裕を見せて寝首を掻かれても知らないから」

「心配してくれてんの?でも大丈夫。寝首を掻こうなんて思うのは俺の実力を知らない雑魚だけだし、そんな輩の攻撃じゃかすり傷がせいぜい…ってところで軽傷すら負うか怪しいだろうからね」


俺の返答を聞いて女はソファに座りながら警告だか釘を刺すような感じで脅しともとれる発言をするが、俺は笑って弄るように返して心配いらない事を説明する。


「そんな慢心してるといずれ足を掬われるんじゃない?お腹空いた」

「慢心じゃないと思うけど…例えばあんた様は俺の寝首を掻いてまで勝ちたいと思う?はい」

「ありがとう。それとその『あんた様』って呼び方なに?昨日も聞いたけど、他になにかもっとマシな呼び方とかないの?それとも今の時代の流行り?」


女が不貞腐れたように言って昼食を要求するので、俺は魔法協会の元代表者で偉いであろう女をどう呼べば良いか分からず嫁の一人である女性と同じ呼び方をしながらチャーハンを皿に盛って出すと…


女はお礼を言いながら怪訝そうな顔で指摘して変更を促すような感じで聞いてきた。


「いやだって名前知らないから『ソッチ』とか『そちら』とかじゃ失礼だろうし、『そなた』とか『おぬし』とかだとなんか古風で仰々しくない?歳下の俺が『君』とか『あなた』だとちょっと馴れ馴れしい気もするからねぇ」

「あ、美味しい!…別に『お前』や『あんた』とか敵対的な呼び方じゃなければなんでも良いんだけど…」


俺の言い訳のような理由の説明に女はチャーハンを一口食べて喜びながら感想を言った後に微妙そうな顔で呼ばれ方に拘っていない事を呟く。


「じゃあ『そちら様』って呼ぶよ」

「…なんか妙によそよそしくない?『様』を付けないといけない決まりでもあるの?」

「まあ『ソッチ』って言われても気にしないっていうんならソッチって呼ぶけど」

「まだソレの方がマシね」


俺が弄るように笑って冗談を言うと女は微妙な感じで拒否るように返し、許可を取るように聞くと女がチャーハンを食べながら了承した。


「シューマイもあるよ」

「食べる。…美味しっ!」


女のチャーハンが残り少なくなってきたところで次の一品を出すと女は奪い取るように受け取り、直ぐに食べて感想を言う。


「…あなた、戦い一筋で生きてきたかと思えば料理も人並み以上の物が作れるし…どういう時間の使い方をしてるの?もしかして睡眠が要らない特異体質?」

「まさか。人の何倍も努力してるだけだよ」

「…それは理解出来るけど…人の一生や一日の時間が合わない気がするのよね…」


女はチャーハンの残りを掻き込んだ後にふとした疑問のような事を尋ね、見当外れな予想をするので俺が否定すると納得いかなそうに呟く。


「そんな事言われてもな…」

「おかわり」

「はいはい」


俺がごまかすように返すと女はチャーハンが入ってた皿を差し出すので最初と同じ量を持って渡す。


「…あの身代わりの術?ってどんな理屈なの?確実に殺したと思ったのに、あの状況からどうやって生還したか気になるんだけど」

「『変わり身』ね、『変わり身の術』。攻撃が当たる瞬間、直前に物と入れ替わる技術…以外に説明のしようがない」


女の疑問に俺は訂正した後に若干困りながら忍者が使う技術の説明をする。


「…あの状況、状態からどうやって?」

「そりゃ、こう…パッとシュッと高速移動のように残像をパッと出すような感じで?」


女が訝しむような顔で確認し、俺はわざと分かりにくいように感覚的な解説で教えた。


「…高速移動…残像…?」

「タイミングとかがめちゃくちゃ難しいけど、ソッチなら頑張れば出来るようになるんじゃないかな?習得する前に死ななければ…だけど」

「…なるほど。あなたほどの耐久力を手に入れてようやく使えるようになる技、ってことか」

「まあそんな感じ。タイミングを図り間違えたら多分死ぬだろうし、早すぎて失敗するとバレて二度目は通じないから結構シビアなんだよね」


考えるように呟く女に俺が適当な嘘を言うと女は勝手に勘違いしてくれ、俺は肯定して更に嘘を重ねる。


「…なら、私との戦いでも何度か試みたってこと?」

「いや、あの二回だけ。失敗したら死ぬからあれでも必死だった」

「そんな感じはしなかったけど…」

「まあまあ、そんなことよりデザートとしてドーナツはどう?」

「食べる。…ドーナツ?」


尚も考えながら確認する女に嘘で返すと納得いかないような感じで呟き、俺は嘘を重ねるのが面倒になって話を変えて聞くと女は反射的に返事して不思議そうに尋ねた。


「揚げ菓子ってやつ」

「揚げ菓子…お菓子がデザートなんて新鮮ね」


俺が軽く説明して一口ドーナツを皿に盛って出すと女は意外そうな顔をしながらも嬉しそうに言う。
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