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青年期 350

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「だったら私の本気を少しだけ見せてあげる」

「…ん?んん!?」


女が笑って炎を纏い始めると女の周りがボヤけ始め、少し浮遊したまま横に滑るように動くと残像のようなものが出来ていく。


「ふふふ…ははは…」

「…なるほど、蜃気楼による撹乱か。単純な動きの速さも合わせると無駄な情報のせいで対処が遅れそうだ、なっ」


女は残像を増やしながら分身の俺の周りを回って笑い、分身の俺が技の仕組みを理解して本物の女を探して呟くと背中を殴られ…


身体から衝撃波が突き抜けるような感覚と炎に包まれるような熱さが。


「けほっ、さっきの…地面を殴った技を人体に直接当てたわけか。素晴らしい」

「…ありえない。普通なら死んでもおかしくない…致命傷までは届かなくても確実に重傷にはなるはずなのに…」


分身の俺がむせるように咳をして褒めると女は信じられないものを見るかのような目を向け、驚きながら呟いた。


「まあ普通なら間違いなく死ぬだろうし上澄みの実力者でも食らったら大ダメージは避けられないからしばらくは動けないだろうね」

「ふ、ふふ…面白い。どこまで生きていられるか試してみるとしよう」


分身の俺は同意しながら想定を話すと女が笑って浮遊し、また炎を纏い始める。


「…おおぅ…二度見ても本体が探し切れねぇ…」


そして女はさっきのように残像を出しながら分身の俺の周りを高速で回り、分身の俺は残像に翻弄されて弱音を呟く。


「…ん…?なんだ…?」


本体の女を探して周りの残像を見ながら警戒していると…


いつの間にか気づけば赤い色の微小な埃のようなものが宙に舞っている。


「…げっ!まさか…!」

「遅い!」


地面の埃が舞うほど速く動いてるのかー…と思った瞬間、ゲームや漫画で良く見る現象がふと脳裏をよぎって閃き…


分身の俺はコレが女の技である事を察すると直ぐに女が大技を発動させ、分身の俺を巻き込んだ大爆発が起きた。


「…なるほどー、『粉塵爆破』とは良く考えたものだ」

「…これでも無傷…」

「いやいや、流石に無傷では済まなかったよ。まあ軽い擦り傷のような微傷だけど」


分身の俺が手を振って煙を払い、感心しながら言うと女は若干困ったように笑って呟くが分身の俺は否定して返す。


「しかし、凄い。同じ行動パターンで二度目を警戒させといて別の大技に移行するなんて…普通なら打撃を警戒してソコにしか意識がいかないから粉塵爆破への対応が間に合わずに死ぬって」


初見殺しもいいとこだ。と分身の俺は女の戦術力や技術力の圧倒的なまでの完成度に驚きながら素直に賞賛の言葉を述べる。


「でもあなたは未だに無傷。微傷程度なら『傷を負った』とは言えない…でしょ?」

「まあ行動に支障は無いかな」

「…私の攻撃が何度も直撃して死ななかったのはあなたが初めてだ。まあ直撃してしまう雑魚なんて大抵一撃で死ぬんだけど」


女の確認に肯定して余裕を見せると女は意外そうに言った後に直ぐにどうでも良さげに呟き…


「普通なら避けるか防御するか…で、ノーダメかダメージ軽減だからねぇ。俺はこう見えて常日頃から鍛えてるから耐えられるけども」


分身の俺は前世の記憶によるゲーム用語を混じえて返し、自慢するように言う。


「どういう鍛え方をしたら私の技を平気で耐えられるのか知りたい。教えて?」

「簡単な事だよ。ひたすらに攻撃を受けて治してを繰り返しながら耐久力を高めていった」

「…正気?頭おかしいんじゃない?」

「よく言われる」


女の疑問に簡潔に答えてあげたのに女はドン引きしながら罵倒するような事を言ってきたが俺は慣れているので流すように返す。


「…まさかこんなイカれた人間が出て来るなんて…いや、この前も私が知らないだけで存在した…?…どうやら世界は私が思う以上に広かったみたいね。今更ながら自分の知見の狭さを思い知らされたわ」


封印を選んだのは早まった選択だったか…と、女は嬉しそうに呟いた後に不思議そうに考えながら呟くと何故か自己嫌悪的な感じで悔いるように呟いた。


「…まあいい。でもこれなら久しぶりに全力を出せそう…こんな相手と巡り会うのは一体何十年振りか…」

「何十年って…まあ封印されてる期間を考えたら百数十年だと思うけど」

「最後に全力を出したのは二十代の頃だったから…封印されてる期間を含めたら大体170年ぐらい前?」


女が気持ちを切り替えるように呟いて楽しそうに…嬉しそうに笑うので分身の俺がツッコミを入れるように微妙な顔で言うと、女は考えながら教えてくれる。


「えっ!?ちょっと待って女性に年齢を聞くのが失礼だとは分かってるけど…今何歳なの?」

「80を越えてからは細かい年齢は数えてないから覚えてない。確か85にはなってなかったはずだけど」

「…はっ…もしかして変化魔法で見た目を調節してる?」

「そんな当たり前の事も知らない?一人前の使い手ならば死ぬまで若い見た目のままなのが普通だけど…」


分身の俺の驚きながらの一応断りを入れての問いに女は曖昧に答え、分身の俺が予想外の事実に驚いたまま確認すると女が呆れたように肯定した。
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