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青年期 344

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「…マジ?」

「当然、彼女のその発言を鵜呑みにする人などどこにも居ませんでした。当時の彼女を知る人ならば誰もが世界で一番強い、と断言出来るほどでしたので『勝てない相手に挑む愚か者など居ない』という風に世界中の人々は認識していたと思います」

「へー。人は見た目に寄らないものだ」


分身の俺の確認に少女が話を続け、分身の俺は女性の外見を思い出すように意外に思いながら返す。


「そこで彼女は実際に行動に移しました。宣言から約半年ほど後の事です」

「…え?」

「『憎しみ、怨みこそが人を強くする。挑む相手が居ないのなら自分で作り上げれば良い』…彼女の言葉です。私達がどれほど必死になろうと止める事は叶わず…様々な国で大きな被害が出てしまい…」

「…ま、マジか…」


少女は目を伏せて残念そうな感じで過去の出来事を告げる。


「『厄災の魔女』。彼女は封印前あの厄災の龍になぞられた名で世界中の人々から恐れられ、恐怖の象徴と化していました」

「…ん?止められなかったのに封印はできたの?」

「はい。彼女と交渉しました、『この時代に戦う相手が居ないなら後世に期待すれば良い』と」

「あー、なるほど。ソレで大人しく封印されてくれたわけだ」


少女の話を聞いて疑問に思った事を聞くと普通に答えてくれ、分身の俺は納得しながら返した。


「しかし…今になって封印が解けてしまったという事は…当代の担当者達が『封印を維持する』という務めを怠ってしまったようですね」

「まあ120年も経てば当時の脅威も忘れさられるでしょ。職務怠慢は責められる事だけど、仕方ない」


少女が呆れたようにため息を吐いて呟くので分身の俺はやらかした奴を軽くフォローするように言う。


「それに…今の時代なら遊び相手もいっぱいいるんじゃない?俺が知ってるだけで帝国に二人、ロムニアに二人、連邦に一人、めちゃくちゃ強い人の心当たりがあるよ」

「…そんなに、ですか…?」

「特にロムニアの二人には手も足も出なかった。でも結局耐久力の差で勝ったけど」

「…ゼルハイト様でさえ…!?」


分身の俺が過去に戦った相手の中でも上位に入る人達を挙げると少女は驚いたような反応をし、おそらく今の俺でも結果は同じだろう…と思いながら言うと少女が驚愕する。


「世界は広いからねぇ…多分昔から隠れた実力者は何人か潜んでると思うよ。まあ今挙げたのは全然隠れてないし潜んですら無いんだけど」

「…ゼルハイト様みたいに、ですか?」

「いやいや、名が売れてる時点で俺は当てはまらないでしょ」


分身の俺はまだ見ぬ強者達の存在を仄めかしつつ冗談を言うと少女も冗談で返すように言うのでツッコミを入れて否定した。


「まあそんな事はさておき。他の人達の安否確認した方が良いんじゃない?」

「そうでした。本当にただ眠らせてあるだけならばよろしいのですが…」


分身の俺が話題を変えるように聞くと少女は思い出したように言い、不安そうに呟いて隣の部屋へと向かう。


「…良かった。本当にただ眠らされているだけのようです」


…室内には多分お偉いさんであろう人達が床に倒れていて、少女は確認した後に安堵の息を吐く。


「どうやら悪人、ってわけじゃ無さそうだ。殺しに行かずに済んで良かった」

「ええ。本当に良かったです…」


流石にあの女性が今の時代でも無駄な虐殺や殺戮を繰り返してしまうのであれば世界の平和のために始末しないといけなかったので、分身の俺が不要な殺生をせずに済んだ事に安堵すると少女も同意する。


「…おそらく今回の議題では彼女への対応も挙がるでしょう…予定よりも時間がかかりそうなので宿を手配いたします。夜遅くまではかからないと思いますが…」

「大変だねぇ…夕食は俺が作ってあげようか?」

「!?よろしいのですか!?」

「今は魚肉しかないけど…まあ材料次第ではなんとかなるかも」

「ありがとうございます!食材や料理人など必要であれば全て自由に使用できるよう直ぐに手配致します」


少女の申し訳なさそうな報告に分身の俺が待ってる間の暇潰しとして提案すると少女は喜んでお礼を言った後に権限を行使するかのような事を言い出す。


「何時ぐらいに提供した方が良い?」

「そうですね…7時から8時の間、だと助かります」

「オッケー。じゃあ7時30分に合わせて作るよ」

「よろしくお願いします」


分身の俺が尋ねると少女は考えながら時間帯を指定するので分身の俺は了承してとりあえず厨房へと向かう事に。


「…さーて、何を作ろうか…」


今まで魚肉を使った料理はあまり作る機会が無く、今作れる料理も数種類しかないが分身の俺は考えながら呟いて廊下を歩く。


「お待ち下さーい!厨房はソコではありません!」

「ん?」

「…マーリン様より案内を任されました。こちらです」

「あ、そう。よろしく」


分身の俺が適当に歩いてると後ろから声が聞こえたのでとりあえず振り向くと少年が駆け寄ってきて…


目の前まで来ると息を整えた後に少女の指示である事を告げて先導してくれた。
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