子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題！

青年期 335

「…あ。『あおさ』って確か『青のり』じゃなかったっけ？」

「そうそう、俺は焼きそばとかお好み焼きとかにふりかけて使ってる。あと磯辺揚げとか」

「『磯辺揚げ』！いいなぁ、ちょっとちょうだい？」

「ほらよ」


女の子の確認に肯定して使い道を話すと女の子はテンションが上がったように羨ましがり、ねだるように聞くので俺は青のりの入った小瓶をテーブルの上に置く。


「やったー！ありがと。これであとはチクワを探すだけだ」

「魚の練り物って意外に無いんだよな…カマボコっぽいやつなら見た事あるが」

「沿岸部とか海に面してるトコを探せば似たようなのは見つからない？つみれとか肉団子に近いのは見た事あるし」


女の子が喜びながら受け取って他の材料について言及し、俺も探しては居るがまだ見つかっていない事を話すと女の子も情報交換するように教えてくれた。


「…そういや昔、マーメイドの肉でチクワとかカマボコとかハンペン作ろうとして失敗した事がある」

「マーメイド…あーそっか。人魚だから魚肉になるのか」

「刺身とか、焼いて食べたらすっげー美味くて、ハンバーグとかみたいに練り物に加工したらいけんじゃね？と思ったけど、ミンチにすると普通の魚肉にしかならんかった」

「…マジ…？」


俺のふと思い出した失敗談を聞いて女の子は少し考えて納得したように呟き、二の轍を踏まないように話すと女の子が驚いたように呟く。


「もしかしたら調理のやり方が悪かったかもしれんが…マーメイドなんて海底ダンジョン以外ではまず遭遇する事無いからなぁ」

「海底ダンジョンでもほとんど見ないレア扱いらしいから降魔の時期でも遭遇率は小数点以下ぐらいじゃないの？」

「だとしたら俺は相当激運だったのに、ソレを実感出来ずに少し無駄にした感じだな。まあ次の機会があれば同じ過ちは繰り返さないが」


未だに昔の後悔を引きずりながら再チャレンジする機会が未だに無い事を告げると女の子が予想で返し、俺は自虐的に言いつつも気持ちを前向きに切り替える。


「でも魔物の魚肉かぁ…どんな味なんだろ？」

「まだ少し残ってるけど食ってみるか？」

「えっ！？マジ！？ 食べる食べる！」


女の子の興味津々な様子での呟きに俺が確認すると女の子は驚いた後に直ぐにテーブルに手をついて身を乗り出しながら肯定した。


「あとコレだけ。残り一切れしか残っていないから刺身でしか食えん」

「うわ、めちゃくちゃ薄く切るじゃん」


俺はパック詰めに入ってるような量の魚肉を見せた後に薄切りにして紙皿に盛ると女の子が弄りような感じで笑って若干の不満を言う。


「そりゃ二度と手に入るか分からんレベルの物だったからな。あと意外と薄切りの方が美味い」

「そうなの？…あ、美味っ！食べた事ないけどコレあれじゃん！フグとか大トロとか中落ちとか！ほら口の中で溶けるとか言われてるやつ！」


俺が理由を言うと女の子は不思議そうな顔をした後に一枚食べて驚き、よく分からん感想を言い出す。


「フグの刺身って食感は残ってなかったっけ？まあ俺も食べた記憶が無いから分からんけど。あ、醤油」

「そのままでも甘いし全然美味いからいらない！」


俺はツッコミを入れるように返しながらも適当な感じで言い、醤油と小皿を出すも女の子に拒否られる。


「ちなみに普通の刺身のような厚さだとグミみたいな感じの柔らかさで旨さが口の中に残る」

「…ホントだ…！魔物の肉は魚でも激うまじゃん」


俺が一枚だけ普通の刺身と同じように切って説明すると女の子は食べた後に驚きながら感想を言う。


「問題は現状では海底ダンジョンのある国まで行かないと手に入らない事だな」

「…まあそればっかりは仕方ない」


手に入れる方法が限られていてそう簡単には食べられない事を告げると女の子は微妙な顔で相槌を打つように返す。


「この国に海底ダンジョンがあれば色んな魚料理が作れるのに…唐揚げとか鍋とか」

「うわ美味そう」

「この魚肉の何が凄いって赤身しか無いように見えて火を通すと脂身が出てくるところよ」

「…そういや油っぽい感じの甘みもあったような…」


俺の残念に思いながらの呟きに女の子は食い気味に反応し、マーメイドの肉の凄さを伝えると女の子が思い出すように呟く。


「魚の油は身体に良いらしいから健康に気をつけなくても良いし」

「あー…確かに肉とか油ものばっかり食べてるとヤバいからなぁ…一応私は野菜食べてるから平気だけど」


更に魚肉のメリットを話すと女の子も同意するように呟いて対策はしてる的な事を言う。


「…そういや心筋梗塞とか脳梗塞って回復魔法で治せんのかな？糖尿病とか」

「いやー流石に無理くない？そもそも病気治せるほどのヒーラーって世界に何人も居ないレベルの凄腕だから探すのが大変だし、めちゃくちゃ金かかると思うよ。しかも万が一治せて一命を取り留めたとしても後遺症が残る可能性もあるわけだし」

「あー…確かに…後遺症の事は考えて無かった …」


俺のふとした疑問に女の子は否定的に返しながら現実的な話をしてくるので俺は納得して呟いた。