子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
上 下
391 / 480

青年期 327

しおりを挟む
…その後。


宿屋で協会員の報告を受け、分身の俺らは敵の拠点があるとされる山へと向かった。


「…こんな所からわざわざゲリラ活動しに行くなんて大変だな…」

「でも拠点としては理に適ってるんじゃないかい?」

「まあそりゃそうだけど…」


分身の俺が山道を登りながら愚痴るように呟くと分身の女性は理由を想定したように真面目に返し、分身の俺は微妙な顔で肯定する。


「…お」

「…どうやら気付かれたようだ」


…視線や気配を感じて呟くと分身の女性も敵の存在に気付いたらしく、警戒した様子で注意を促した。


「去れ!ここから先に進むのなら、痛い目を見るぞ!」

「…問答無用で襲いかかって来ると思ったのにちゃんと警告してくれるんだね」

「意外と人が通るんじゃない?だから問答無用での襲撃が面倒になって警告するとか」

「なるほど」


どこからか大声で警告のような言葉が聞こえると分身の女性が意外そうに言い、分身の俺の予想に納得する。


「とりあえず声の方向はアッチからだった」

「じゃあそこに行ってみよう」


分身の俺の指差しながら報告に分身の女性は行き先を変えてその方向へと歩き始めた。


「今すぐに去れ!命を落とす事になるぞ!」

「…潜伏する気ゼロなのか?」


分身の俺らが声のした方向に進んでると今度は違う方向からさっきよりもはっきりとした言葉が聞こえ、分身の俺は呆れながら呟く。


「…おっと」

「初手は矢か」


…警告を無視して進んでいると木の上の方向から矢が飛んで来て…


分身の女性が一歩後退るように余裕で避けると矢が地面に刺さり、分身の俺は矢尻に何か塗られてないかを確認するために引き抜いた。


「…ただの矢だな」

「…あそこか…」


分身の女性は分身の俺の報告を一切聞いてないように矢が飛んで来た方向を見ながら敵の居場所に当たりを付けたのか剣を取り出す。


そして分身の女性が剣を抜いて歩き出すとまたしても木の上から矢が飛んで来る。


…が、分身の女性は軽く剣を振って簡単に矢を叩き落とす。


「…お?一人逃げた」

「…あと一人は…」


ガサッ…と小さい音が聞こえ、人の気配が遠のいていくので分身の俺が報告すると分身の女性は鋭い目つきで獲物を探すように左側を向く。


「とりあえず俺は逃げた奴を追いかけるよ」

「分かった」


分身の俺は別行動をする事を告げて近くの奴を分身の女性に任せ、逃げた奴を追う事にして歩き出した。


「…おっと」

「そこっ!」


…分身の俺の頭めがけて後ろから矢が飛んで来るが上半身を屈めて避けると分身の女性はソレで敵の居場所を把握したのか声を上げて走り出す。



「…お」


…逃げた奴を追って行くと開けた場所に出て木の柵に囲まれた野営地みたいな所に着いた。


「なるほど、拠点ねぇ…」


中に入って周りを見るも人の気配がほとんどせず…分身の俺が今追ってる奴一人の気配しかしない。


「くっ…!こんなところまで…!」

「おや、まだ少年じゃないか。本当に変化魔法の使い手か…?」


そこらのテントからバッと出て来た10代前半っぽい少年は鉈を持っていて、分身の俺は意外に思いながらも疑問に思って呟く。


「…一人か。それも弱そうな奴…こんな奴なら俺一人でも…!…あっ!」

「残念。流石に子供に負けるほど弱くはない」


少年が強気になって鉈で切り掛かって来たが分身の俺は少年の足を払って転ばせた後に腕を捻るようにして後ろ手にして地面に組み伏せる。


「離せ!離せよ!」

「…はいよ」


ジタバタと手足をバタつかせて抵抗する少年の手と足を紐で縛って拘束してから分身の俺は少年から離れた。


「さて、お姉さんを迎えに行くか」

「おい!待て!ほどけよ!おい!」


…敵の拠点の位置を教えるために分身の俺は拘束した少年をその場に放置して来た道を戻る。


「…あ」

「…ソッチも子供だったんだ?」


分身の俺が変化魔法を使ってセイレーンの技を応用したエコーロケーションで分身の女性と合流すると、小柄な体格の少年か少女を肩に担いでいた。 


「ああ。木を揺らしたら落ちて気絶したみたいだ」

「戦ってすらいないの…?」


分身の女性の話を聞いて分身の俺はマヌケ過ぎない…?と思いながら微妙な顔で返す。



「…それにしても…こんな子供達が本当に変化魔法の使い手なのかい?」

「俺も思った」


…山の中腹に設営された野営地で拘束した少年二人を見て分身の女性が疑うように尋ねるので分身の俺も同意する。


「俺達はただの留守番だ!フラー隊長が帰って来たらお前らタダでは済まないぞ!生きて帰れないぞ!逃げるなら今の内だ!」


…少年はその隊長とやらをよっぽど信頼しているのか、普通ならば分身の俺らに殺されかねない状況でも強気で煽って脅してきた。


「へー、その隊長ってのはよっぽど強いみたいだな」

「当たり前だ!俺達の国では一番変化魔法の使い方が上手いって言われてるんだぞ!」

「へぇ、そりゃ楽しみじゃないか。どれくらい強いのか…」

「全くだ。どれほどの練度か興味が湧いてきた」


分身の俺の侮るような発言に少年は何故か得意気になって自慢するように返し、分身の女性が嬉しそうに言うので分身の俺も同意する。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...