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青年期 321

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「…待たせたな。では会談を始めようか」


指定した時間ギリギリに来た王様は宰相を務めてる貴族や軍事総司令、政務や財務を担当してる大臣的な役職の貴族達…


そして大司教と共に部屋の中に入るとソファに座って話を切り出した。


「グィン伯爵、なぜこうも急に反旗を翻したのだ?」

「急に?『急に』だと?こちらが一体何度要望書や改善書を送ったと思っている。何年経とうとも一向に改善せず、満足な回答すらされぬ…もはや我慢の限界よ。これ以上国が腐っていくのを放置するわけにはいかん!」


軍事総司令を務めるトゥール侯爵の問いに壮年の男はイラッときたように睨んで不満を話し、最後には感情を抑えきれずにテーブルをドン!と叩く。


「まあまあ、落ち着いて下さいよ。伯爵が手を出そうとするなら拘束しての話し合いになってしまうので」


部屋の中の雰囲気や空気が一気に張り詰めてピリピリし始めるので分身の俺はソレを変えるように楽観的な感じで宥めながら釘を刺す。


「…伯爵の要望書や改善書はちゃんと読んでいる。その上で然るべき判断を下し、対応を…」

「『然るべき判断』だと!?国内で不正が横行する様を放置し続けるのが『然るべき判断』とやらか!?金で爵位を売り渡した領地も持たぬ新興貴族共が権力を悪用して横領や癒着、税逃れなど私腹を肥やすために不正を働いていると何年も前から指摘したはずだ!」

「あー…ソレを放置は流石にヤバいな…」


宰相のシーグル公爵の発言を遮って壮年の男は不満を爆発させて糾弾するように批判し、分身の俺は内容を聞いて壮年の男の意見に賛同しながら呟く。


「『調査する』と返答があってから何年経つ?未だに奴らは堂々と不正を繰り返すどころかこちら側が証拠を揃えて提出した書類は全て破棄されたと聞く!我々はこのような事態を危惧して金で爵位を売り渡す事に反対したのだ!それがこの有様だ!意識の低い成り上がりの貴族共が好き勝手に国内を荒らし回り、ソレを放置し、あまつさえ領地持ちの我々からは年々税を上げて搾り取ろうとする始末!この現状でこの先も国が安泰だと言えるのか!?」


…壮年の男はめちゃくちゃヒートアップして怒ったようにヤバい情報を話しながら政府の対応の批判を続ける。


「…グィン伯爵、もはや今の段階まで来てしまっては是正するのもそう簡単では無いのだ」

「だからこうなる前に要望書や意見書を何度も提出したのだ!なぜその時に直ぐ動かなかったのだ!」

「…あっちゃー…初動で間違っちゃったか…今のところ伯爵の言い分が正し過ぎて反乱を起こした理由が真っ当で反論の余地は無いように思えるのですが」


宰相のシーグル公爵は困ったように苦し紛れの事を返し、壮年の男がまたしてもテーブルをドン!と叩くので分身の俺は何もせずに壮年の男に同意しながら今回の件は完全に政府側に非がある事を伝える。


「…それは…しかし…」

「教会が不正に加担しているからといって見過ごすからこのような事態になるのだ!宗教の教えからしても不正は許される事では無い!」

「…え?教会が?」

「…随分な仰りようですが…当然確固たる証拠を提示出来るのでしょうね?」


言い淀む王様に壮年の男が更に追及するように言い、分身の俺が驚くと大司教が余裕の態度のまま笑顔で確認した。


「当然だ!金の流れは調べてある!コレを見ろ!」

「っ…!?」

「…えーと…?」

「それは!私が確認いたします!真偽を確かめるために!」


壮年の男が書類を取り出してテーブルの上に叩きつけるように置くと大司教の表情が変わって慌てて取ろうとするので、分身の俺が先に取って読もうとすると大司教が焦った様子で近づいて来た。


「…コレ、本当だとしたらかなりの爆弾だと思うけど…」


かなりの額の違法献金から国から預かった土地建物の法外な値段での売却、使う予定の無い土地のタダ同然の購入、不必要な贅沢品の大量購入に脱税や賄賂による犯罪の揉み消し…など、書類には教会側の不正が取引先の貴族の名前と共に書き連ねられている。


「嘘!嘘に決まっています!これはきっと我々を陥れるための卑怯な…!」


分身の俺のドン引きしながらの呟きに大司教は必死に否定した。


「部下によれば『クライン辺境伯の領内ではあまりに監視が厳し過ぎる』という教会関係者の愚痴を聞いたという報告もあったそうだ」

「…自分のところは不正を一切許さず一切認めてませんからね…その代わり予算や補助金を多めに見積もって出していますし」

「武力で抑えているからだろう。噂に名高い『猟兵隊』の戦力は聖職者達や領民達が団結したところでどうにもなるまい」


壮年の男が補足するので分身の俺が安心しながら返すと壮年の男はその理由を推測する。


「しかしこれが本当だとするなら、政府がこのまま何の対応も打ち出さなければ自分も…いえ、自分達も黙っておくわけにはいきませんが…」

「…分かった。今後、早急に対策を取る事を約束する」


分身の俺は脅しをかけるように青年やおっさんの事も暗に含みながら言うと王様は苦虫を噛み潰したような顔で改善する事を告げた。
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