子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
上 下
383 / 480

青年期 319

しおりを挟む
…その約30分後。


「団長!王都から急報が!」

「…マジ?」

「クライン辺境伯様!何を血迷ったのかグィン伯爵が兵を率いて城に攻め入りました!どうか陛下達を助け出すため、お力をお貸し頂きたい!」


団員が慌てた様子で部屋に入って来たので俺がさっきのやつか…?と思いながら聞くと騎士の格好をした女が入って来て助けを求めて来る。


「…はあぁぁ…マジなやつかよ…直ぐに準備して行くから入口で待っといて」

「感謝申し上げます!」


俺は深くため息を吐いた後に呟いて指示を出すと騎士の女はポーズを取りながらお礼を言い、団員と一緒に部屋から出て行く。


「ったく…せめて今のタイミングじゃなくて何も無い時にやれよ…」

「全くだな」


俺がもう一度ため息を吐いて変化魔法を使い、分身して呟くと分身の俺も深く同意して頷いた。


そして分身の俺が騎士の用意していた馬に乗って一緒に王都の城に向かうと…


どうやら既に城は伯爵に制圧されてしまったのか、兵士達が城門の前で防衛するかのように布陣している。


「うへー…もう終わり?中央騎士団は何をしてんだ?」

「…本隊は王都を離れて任務にあたっています。王都に居た騎士団員は私を含めた極少数だけでした」

「…なるほどね。絶好の機会だったわけだ」


分身の俺の疑問に騎士が答え、分身の俺は納得しながら返す。


「なんだ貴様は!?」

「ちょっと伯爵と話がしたいんだけど」


分身の俺が一人で城に近づくと兵の一人が声を上げ、周りの兵達が武器を構えて警戒する様子を見せるので…


分身の俺は刺激しないよう両手を上げて丸腰で抵抗の意思が無い事を示しながら要求した。


「なんだと…?」

「この通り丸腰なんだから良いじゃん。俺がその気になってもあんたらなら直ぐに捕らえられるでしょ」

「…どうする?」

「伯爵様は誰も入れるなと言っていたが…」

「連れて行くか?」


分身の俺が兵をおだてるように言うと兵達は対応を話し始める。


「貴様、身分はなんだ?ただの庶民なら会わせられんぞ」

「マジ?まあ一応これでも子爵家の長男だからセーフか。伯爵側に付くかどうかの判断を決めるために考えを聞きたくてね」

「…連れて行くか?」

「そうだな。一応連れて行って後は伯爵様の判断次第だ」

「…よし、ついて来い」


兵の問いに分身の俺は嘘ではないけど…的なギリギリの身分を伝えた後に適当な嘘を吐くと、兵士達は判断に困ったような反応をするもとりあえず伯爵の下に連れて行ってくれるらしい。


「…馬鹿な事を考えるんじゃないぞ。城の中はもはや伯爵様の兵でいっぱいだからな」

「はいはい」


5人ほどの兵が分身の俺を囲んで城の中へと入ると兵の一人が脅しをかけ、分身の俺は適当に相槌を打つ。


「…ん?なんだそいつは?」

「子爵家の子息らしいです。伯爵様に会わせろと言われまして…」


…城の中を歩いていると防具の質が違う兵が巡回するように警戒した様子で歩いており、分身の俺を見て尋ねると分身の俺の周りにいた兵士達の一人が報告するように答える。


「ふん?そうか。ではここから先は俺が連れて行こう」

「ありがとうございます」


…兵士の階級や実力によって担当するエリア的な意識があるのか、兵が案内を引き継ぐように言うと分身の俺の周りにいた兵達は安心したような顔になって城門へと戻って行く。


「こっちだ。下手な動きを見せようもんなら斬るぞ」

「はいはい」


兵は先導するように歩き出すと脅しをかけてくるが分身の俺は適当な感じで流すように返した。


…城の中を進んでいると巡回や警備にあたっている兵が何故か分身の俺の後をついて来て、いつの間にかさっきのように5人の兵が周りを囲むように後をついて来る。


「伯爵様!伯爵様に面会を求めてる者を連れて参りました!」

「武器や防具どころか物すら何一つ所持しておらず、完全に丸腰の非武装でございます!」


玉座の間がある階に着くと廊下には兵が溢れており、必死にドアを破ろうとしている最中に案内した兵が敬礼のポーズを取りながら報告した。


「面会だと?…誰だ?」


…青年…というよりも壮年?の男は怪訝そうな顔をした後に確認するように尋ねる。


「子爵家の子息だと申してるようです!」

「子爵家だと…?…お前か」

「お初お目にかかります。自分はゼルハイト子爵の長男であります『リデック・ゼルハイト』と申します」

「ゼルハイト家の長男…?ゼルハイト家の後継ぎは次男のはずだが…それに長男といえば……っ!?クライン、辺境伯…!!?」


兵の報告を聞いて分身の俺に近づいて来た壮年の男に適当な感じで挨拶して自己紹介をすると、壮年の男は不思議そうに呟いた後に情報を思い出したように分身の俺を見ながら驚愕する。


「この馬鹿共が!クライン辺境伯といえば『戦闘狂』と言われている武闘派だぞ!なぜこんな所まで連れて来た!」

「クライン辺境伯…!?」

「あの猟兵隊を束ねる団長の…!?」


壮年の男は兵達を罵倒するように叱責しながら後ろに下がって兵士達の群れに紛れていく。


「とりあえず騒ぎを収めて欲しい。もし俺との一騎打ちに勝てる、って自信がある奴が居るなら受けて立つよ」

「…丸腰で非武装なら…みんなでかかればいけるんじゃないか?」

「待て。噂では防具も着けず武器も持たずに単身敵陣に突っ込んで無傷で帰って来るらしいぞ」

「…噂はあくまで噂じゃないのか?見ろ。ああして立ってるとそこらに居るただの一般人と見分けが付かないぞ」


分身の俺がそう告げると兵士達は対応に困ったように動かず、分身の俺を見ながら話し合う。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...