378 / 480
青年期 314
しおりを挟む
…翌朝。
一騎打ちの時間として指定された日の出に国境を越えて行くと…
既に一人の男が先に立って待っていた。
「…そちが果たし合いの相手でござるか?」
「そうだよ。お手柔らかによろしくね」
…どことなく武士のような感じの喋り方をする青年の問いに分身の俺は肯定して軽い感じで返す。
「拙者、『貞成』と申す者。いざ尋常に勝負を」
腰の右側に二本、左側に一本の刀のような剣を差している青年は名乗りを上げながら背中に背負っている長刀を抜いて構える。
「ほう、これは丁寧に。俺はゼルハイト家が長男…いやいいや、『ゼルハイト』申す者、いざ尋常に」
分身の俺は意外に思いながら自己紹介しようとしたが名前は名乗らずに名字だけ名乗って空間魔法の施されたポーチから鉄の棒を取り出す。
「きえええぃ!!」
「なっ…!」
青年が長刀を上段に構え、柄を両手で力いっぱい握ると叫び声を上げながらほぼ一瞬とも思えるような速度で距離を詰めて分身の俺の懐に飛び込んで全力で長刀を振り下ろす。
分身の俺は青年の動きの速さに驚きながらも半身ズラすようにしてギリギリで回避した。
「おおー、すげぇ…まるで示現流だな」
刀身の長い刀が鍔の方まで地面に食い込んでいるのを見ながら分身の俺は褒めて青年の流派を予想するように言う。
「…何故、反撃せぬ」
「ん?」
「今のそちには反撃する余裕が感じられた。なのに何故、動かぬ」
地面に思いっきり食い込んでる長刀を引き抜いた青年の問いに分身の俺が聞き返すと、青年は怪訝そうな顔をしながら長刀を上段に構えて理由を問いただしてくる。
「特に理由は無いけど…強いていうなら戦いを楽しみたいから、かな?」
「…なるほど。そちの言う通り拙者は自顕流の使い手。『天真正自顕流』そして『薬丸自顕流』の免許皆伝を受けた者でござる」
「へー…示現流の流派?二つの流派で免許皆伝って凄いな…めちゃくちゃ強い人じゃん」
分身の俺が適当に答えると青年は納得したように情報を開示し始め、分身の俺は意外に思いながら感心して褒めた。
「でも示現流って今みたいに一撃に全てを込めるんでしょ?俺とは相性悪くて勝てないと思うけど…」
「…よほどの腕前と見る。では続きを」
分身の俺の微妙な顔をしながらの想定に青年は真剣な顔つきに戻って上段に構えた長刀の柄を力いっぱい握る。
「きえええぃ!!」
「おおー、すげぇ」
青年はさっきと違い、何が何でも絶対に殺すという決意を込めた鋭い殺気と強い威圧感を放ちながらさっきと同じように素早い動きで距離を詰め…
懐に入るや否や分身の俺を真っ二つにせんと全力を込めてさっきよりも少し速く長刀を振り下ろす。
「…普通なら竦んで動けないまま真っ二つか、ガードが間に合っても頭かち割られて死んでるな」
「…二度も拙者の技を避け切るとは…さきほどのはまぐれではござらぬか」
「えいよ」
「くっ!」
…さっきと同じように半身ずらして避けたが布一枚ギリギリで掠ってしまい…
分身の俺が予想を話すと青年は地面に思いっきり食い込んだ長刀を抜こうとしながら認識を改めるように呟くので、分身の俺は軽く蹴飛ばして長刀を抜かせないようにした。
「ちえええぃ!」
「おっと」
「えぇい!えぇい!てぇい!」
青年は素早く態勢を立て直して腰の刀を抜くとまたしても上段で構えながら叫び声を上げて素早く距離を詰めて斬りかかり、分身の俺が避けると下からの斜めに切り上げと袈裟斬りを連続で繰り返してくる。
「…動きに無駄が無く連撃としての回転力や速さは素晴らしいけど、やっぱり二の太刀いらずじゃないと威力は並…ってトコかな」
「…完全に太刀筋を見切られている…!?」
分身の俺は青年の攻撃をヒョイヒョイ避けながら分析して評価を下すと青年が驚愕した様子を見せてバックステップで一旦距離を取った。
「…よもや拙者の刀を初見で見切る者が居ようとは…世界は広いでござるな…」
「…返す」
「かたじけない」
刀を正眼に構えながら感心したように呟く青年に分身の俺が長刀を地面から引き抜いて投げて返すと普通に柄を掴んで受け取り、お礼を言う。
「…では、仕切り直しでござる。拙者はそなたを強者と認め、次の一撃に渾身の力を込めてこの果たし合いに勝利する所存」
青年は目を瞑った後に目を開けると研ぎ澄まされた刺すような鋭い殺気と、生かしてはおけん…という押し潰すような強烈な威圧感を放ちながら長刀を上段に構える。
「へぇ、あれでも今まで全力じゃなかったのか…まるで針のむしろで心臓を掴まれるようなこの感覚…こりゃ楽しみだね」
「…覚悟!チェストおおぉ!!」
分身の俺が厄災の龍と対峙してる時を思い出しながらも余裕の態度を崩さずに笑うと、青年はカッと目を見開いた後に一瞬で距離を詰めて懐に入るや否や今までよりも更に速く長刀を横薙ぎに振った。
「…マジか」
分身の俺は今までと同じく唐竹割りのように刀を振り下ろすと予想していただけに一瞬反応が遅れ、なんとか直撃は避けたものの長刀の切先が横っ腹を掠めていく。
「ぬ。か、刀が…!」
すると青年が持っていた長刀の先端が耐えきれずに折れ、青年はバックステップで距離を取った後に少し折れてる長刀を見て驚愕する。
一騎打ちの時間として指定された日の出に国境を越えて行くと…
既に一人の男が先に立って待っていた。
「…そちが果たし合いの相手でござるか?」
「そうだよ。お手柔らかによろしくね」
…どことなく武士のような感じの喋り方をする青年の問いに分身の俺は肯定して軽い感じで返す。
「拙者、『貞成』と申す者。いざ尋常に勝負を」
腰の右側に二本、左側に一本の刀のような剣を差している青年は名乗りを上げながら背中に背負っている長刀を抜いて構える。
「ほう、これは丁寧に。俺はゼルハイト家が長男…いやいいや、『ゼルハイト』申す者、いざ尋常に」
分身の俺は意外に思いながら自己紹介しようとしたが名前は名乗らずに名字だけ名乗って空間魔法の施されたポーチから鉄の棒を取り出す。
「きえええぃ!!」
「なっ…!」
青年が長刀を上段に構え、柄を両手で力いっぱい握ると叫び声を上げながらほぼ一瞬とも思えるような速度で距離を詰めて分身の俺の懐に飛び込んで全力で長刀を振り下ろす。
分身の俺は青年の動きの速さに驚きながらも半身ズラすようにしてギリギリで回避した。
「おおー、すげぇ…まるで示現流だな」
刀身の長い刀が鍔の方まで地面に食い込んでいるのを見ながら分身の俺は褒めて青年の流派を予想するように言う。
「…何故、反撃せぬ」
「ん?」
「今のそちには反撃する余裕が感じられた。なのに何故、動かぬ」
地面に思いっきり食い込んでる長刀を引き抜いた青年の問いに分身の俺が聞き返すと、青年は怪訝そうな顔をしながら長刀を上段に構えて理由を問いただしてくる。
「特に理由は無いけど…強いていうなら戦いを楽しみたいから、かな?」
「…なるほど。そちの言う通り拙者は自顕流の使い手。『天真正自顕流』そして『薬丸自顕流』の免許皆伝を受けた者でござる」
「へー…示現流の流派?二つの流派で免許皆伝って凄いな…めちゃくちゃ強い人じゃん」
分身の俺が適当に答えると青年は納得したように情報を開示し始め、分身の俺は意外に思いながら感心して褒めた。
「でも示現流って今みたいに一撃に全てを込めるんでしょ?俺とは相性悪くて勝てないと思うけど…」
「…よほどの腕前と見る。では続きを」
分身の俺の微妙な顔をしながらの想定に青年は真剣な顔つきに戻って上段に構えた長刀の柄を力いっぱい握る。
「きえええぃ!!」
「おおー、すげぇ」
青年はさっきと違い、何が何でも絶対に殺すという決意を込めた鋭い殺気と強い威圧感を放ちながらさっきと同じように素早い動きで距離を詰め…
懐に入るや否や分身の俺を真っ二つにせんと全力を込めてさっきよりも少し速く長刀を振り下ろす。
「…普通なら竦んで動けないまま真っ二つか、ガードが間に合っても頭かち割られて死んでるな」
「…二度も拙者の技を避け切るとは…さきほどのはまぐれではござらぬか」
「えいよ」
「くっ!」
…さっきと同じように半身ずらして避けたが布一枚ギリギリで掠ってしまい…
分身の俺が予想を話すと青年は地面に思いっきり食い込んだ長刀を抜こうとしながら認識を改めるように呟くので、分身の俺は軽く蹴飛ばして長刀を抜かせないようにした。
「ちえええぃ!」
「おっと」
「えぇい!えぇい!てぇい!」
青年は素早く態勢を立て直して腰の刀を抜くとまたしても上段で構えながら叫び声を上げて素早く距離を詰めて斬りかかり、分身の俺が避けると下からの斜めに切り上げと袈裟斬りを連続で繰り返してくる。
「…動きに無駄が無く連撃としての回転力や速さは素晴らしいけど、やっぱり二の太刀いらずじゃないと威力は並…ってトコかな」
「…完全に太刀筋を見切られている…!?」
分身の俺は青年の攻撃をヒョイヒョイ避けながら分析して評価を下すと青年が驚愕した様子を見せてバックステップで一旦距離を取った。
「…よもや拙者の刀を初見で見切る者が居ようとは…世界は広いでござるな…」
「…返す」
「かたじけない」
刀を正眼に構えながら感心したように呟く青年に分身の俺が長刀を地面から引き抜いて投げて返すと普通に柄を掴んで受け取り、お礼を言う。
「…では、仕切り直しでござる。拙者はそなたを強者と認め、次の一撃に渾身の力を込めてこの果たし合いに勝利する所存」
青年は目を瞑った後に目を開けると研ぎ澄まされた刺すような鋭い殺気と、生かしてはおけん…という押し潰すような強烈な威圧感を放ちながら長刀を上段に構える。
「へぇ、あれでも今まで全力じゃなかったのか…まるで針のむしろで心臓を掴まれるようなこの感覚…こりゃ楽しみだね」
「…覚悟!チェストおおぉ!!」
分身の俺が厄災の龍と対峙してる時を思い出しながらも余裕の態度を崩さずに笑うと、青年はカッと目を見開いた後に一瞬で距離を詰めて懐に入るや否や今までよりも更に速く長刀を横薙ぎに振った。
「…マジか」
分身の俺は今までと同じく唐竹割りのように刀を振り下ろすと予想していただけに一瞬反応が遅れ、なんとか直撃は避けたものの長刀の切先が横っ腹を掠めていく。
「ぬ。か、刀が…!」
すると青年が持っていた長刀の先端が耐えきれずに折れ、青年はバックステップで距離を取った後に少し折れてる長刀を見て驚愕する。
67
お気に入りに追加
1,005
あなたにおすすめの小説
誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
外れスキル【転送】が最強だった件
名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。
意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。
失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。
そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる