上 下
349 / 480

青年期 285

しおりを挟む
…挨拶を済ませた公爵が帰ってから数時間後。


「…ん?」


侯爵のおっさんから手紙が届いたので、珍しいな…と思いながら中身を読むと…


どうやら派閥の下っ端貴族が辺境伯の青年が属している派閥の下っ端と武力衝突をして争いを起こしてるらしく、ソレの調停をお願いする内容だった。


「…なるほど。今国内でゴタゴタしてるのはそういう事か…」


おっさんとしては騒ぎが大きくなる前に収めたいと思っているようで…


流石に四大派閥同士が本格的に衝突すると国内が荒れそうな上に国防にも思いっきり支障をきたす可能性が高く、そうなると俺も困るのでおっさんの申し出を受ける事に。


期間はともかく…争ってる貴族をこの拠点に来させるよう返事を書き、辺境伯の青年にも似たような内容の手紙を書いて送る。


翌日。


朝食が終わった後にいつものように報告を読んでいると…


まさかのこのタイミングで辺境伯がこの拠点にやって来た。


「お久しぶりです」

「久しぶりだな、ゼルハイト卿。今日は話があって来たのだが…」


俺が本部の建物の前で出迎えて挨拶すると青年は挨拶を返していつもとは用件が違う事を告げる。


「もしかしてそちらの派閥の下っ端がやらかしてる件ですか?」

「…流石。情報が早いな」

「侯爵から手紙が来ました。事を荒立てたくないから今の内に自分に調停して欲しい、と」

「なるほど…流石だ。俺よりも先に既に動いていたとは…」


俺の確認するような問いに青年は驚きながら肯定し、情報元を教えて話を進めると青年が納得した後に感心しながら呟いた。


「一応侯爵には了承してこの拠点に貴族を来させる旨の返事を送り、辺境伯にも協力をお願いする旨の手紙を送ったのですが…どうやら入れ違いになってしまったようですね」

「…そうか…分かった。ロワダン男爵にはこちらから話をつけておこう」

「ありがとうございます」

「いや、礼を言うのはこちらの方だ。調停役に応じてくれて感謝する」


俺が歩きながら話すと青年はその場で了承の返事をするのでお礼を言うと、青年が足を止めて軽く頭を下げながらお礼を言い返す。


「本来ならば派閥の問題であり、我々が自ら解決すべき案件なのだが…」

「構いませんよ。派閥同士で話し合うよりも自分のような無派閥で中立の立場の人が介入した方が双方冷静になれて早く解決しますし」


それに争いを避けるという目的は同じですから。と、申し訳無さそうに言う青年に俺はフォローするように返した。


「ははは!ゼルハイト卿は本当に頼りになるな。実に頼もしい限りだ、他の貴族達にも是非とも見習って欲しいものだが…」


青年が笑って褒め、おそらく下っ端の貴族達を引き合いに出しながら呟く。


「無理だと思いますよ。自分達と違って『持ってない』人達には余裕が無いでしょうし」

「…器の足りない者が手に入れたところで扱いきれるモノでは無いというのに…嘆かわしい事だ」


俺は青年やおっさんも枠に入れて下っ端貴族達を馬鹿にする感じで否定的に返すと青年は国の事を憂うように嘆いてため息を吐いた。


「まあそんな事はさておきましょう。解決するには時間のかかる問題ですからね」

「…そうだな」

「とりあえず朝食はどうします?自分達はもう食べ終わっていますが…」

「ありがたい、いただこう。実は王都でも対応に追われて忙しく、昨日の夜もあまり食べてないのだ」


俺が話題を切り替えるように言うと青年も賛同し、食事の有無を尋ねると青年は嬉しそうに喜びながら俺の申し出を受け入れる。


「では結構ガッツリとした物を出しても良さそうですね」

「それと昼食に移動中でも軽くつまめる物を頼めないだろうか?」

「…移動中となると…久しぶりにカレーパンなんていかがでしょう?」

「おお!ありがたい。できればバーガー系もいくつかくれないか?」


俺はメニューを考えながら言うと青年が昼食も頼むので今から作るのと被らないように確認すると青年は喜んでリクエストしてきた。


「分かりました。では朝食はヘルシーなパンにしましょうか。揚げ物や高脂質の物ばかりを食べすぎると健康に悪いので」

「うむ。ゼルハイト卿に任せる」


俺の提案に青年は頷いて一任するように言うので、俺は最初の一品として侯爵のおっさんに出した食パンのサンドイッチを出す事に。


「…こちら、本当は一口大に切って突き出しとして出すものなんですが…今日は一品として提供いたします」

「ほう、あの一口サンドか。…やはり美味いな…しかし…切らずにそのまま食べると、ボリュームが、意外に…」


…スライスした食パンに生ハム、スライスチーズ、トマトの輪切り、レタスを乗せ…


マヨネーズをかけた後に更にまた生ハム、トマトの輪切りを乗せて上からもう一枚のスライスした食パンで挟んだサンドイッチを出すと青年は素手で掴んでかぶりつき、ガブガブ食べながら感想を呟く。


「次にガーリックトーストとトマトのコンソメゼリーを」

「…コレは…匂いも味も尖っているな。しかし美味い。このゼリーもアッサリとしていてとても良く合う」

「ありがとうございます」


二つのサンドイッチが無くなったところで男向けの料理を出すと青年は匂いを嗅いで一口食べた後に感想を言い、スプーンでゼリーを食べて満足そうな様子を見せる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

処理中です...