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青年期 285

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…挨拶を済ませた公爵が帰ってから数時間後。


「…ん?」


侯爵のおっさんから手紙が届いたので、珍しいな…と思いながら中身を読むと…


どうやら派閥の下っ端貴族が辺境伯の青年が属している派閥の下っ端と武力衝突をして争いを起こしてるらしく、ソレの調停をお願いする内容だった。


「…なるほど。今国内でゴタゴタしてるのはそういう事か…」


おっさんとしては騒ぎが大きくなる前に収めたいと思っているようで…


流石に四大派閥同士が本格的に衝突すると国内が荒れそうな上に国防にも思いっきり支障をきたす可能性が高く、そうなると俺も困るのでおっさんの申し出を受ける事に。


期間はともかく…争ってる貴族をこの拠点に来させるよう返事を書き、辺境伯の青年にも似たような内容の手紙を書いて送る。


翌日。


朝食が終わった後にいつものように報告を読んでいると…


まさかのこのタイミングで辺境伯がこの拠点にやって来た。


「お久しぶりです」

「久しぶりだな、ゼルハイト卿。今日は話があって来たのだが…」


俺が本部の建物の前で出迎えて挨拶すると青年は挨拶を返していつもとは用件が違う事を告げる。


「もしかしてそちらの派閥の下っ端がやらかしてる件ですか?」

「…流石。情報が早いな」

「侯爵から手紙が来ました。事を荒立てたくないから今の内に自分に調停して欲しい、と」

「なるほど…流石だ。俺よりも先に既に動いていたとは…」


俺の確認するような問いに青年は驚きながら肯定し、情報元を教えて話を進めると青年が納得した後に感心しながら呟いた。


「一応侯爵には了承してこの拠点に貴族を来させる旨の返事を送り、辺境伯にも協力をお願いする旨の手紙を送ったのですが…どうやら入れ違いになってしまったようですね」

「…そうか…分かった。ロワダン男爵にはこちらから話をつけておこう」

「ありがとうございます」

「いや、礼を言うのはこちらの方だ。調停役に応じてくれて感謝する」


俺が歩きながら話すと青年はその場で了承の返事をするのでお礼を言うと、青年が足を止めて軽く頭を下げながらお礼を言い返す。


「本来ならば派閥の問題であり、我々が自ら解決すべき案件なのだが…」

「構いませんよ。派閥同士で話し合うよりも自分のような無派閥で中立の立場の人が介入した方が双方冷静になれて早く解決しますし」


それに争いを避けるという目的は同じですから。と、申し訳無さそうに言う青年に俺はフォローするように返した。


「ははは!ゼルハイト卿は本当に頼りになるな。実に頼もしい限りだ、他の貴族達にも是非とも見習って欲しいものだが…」


青年が笑って褒め、おそらく下っ端の貴族達を引き合いに出しながら呟く。


「無理だと思いますよ。自分達と違って『持ってない』人達には余裕が無いでしょうし」

「…器の足りない者が手に入れたところで扱いきれるモノでは無いというのに…嘆かわしい事だ」


俺は青年やおっさんも枠に入れて下っ端貴族達を馬鹿にする感じで否定的に返すと青年は国の事を憂うように嘆いてため息を吐いた。


「まあそんな事はさておきましょう。解決するには時間のかかる問題ですからね」

「…そうだな」

「とりあえず朝食はどうします?自分達はもう食べ終わっていますが…」

「ありがたい、いただこう。実は王都でも対応に追われて忙しく、昨日の夜もあまり食べてないのだ」


俺が話題を切り替えるように言うと青年も賛同し、食事の有無を尋ねると青年は嬉しそうに喜びながら俺の申し出を受け入れる。


「では結構ガッツリとした物を出しても良さそうですね」

「それと昼食に移動中でも軽くつまめる物を頼めないだろうか?」

「…移動中となると…久しぶりにカレーパンなんていかがでしょう?」

「おお!ありがたい。できればバーガー系もいくつかくれないか?」


俺はメニューを考えながら言うと青年が昼食も頼むので今から作るのと被らないように確認すると青年は喜んでリクエストしてきた。


「分かりました。では朝食はヘルシーなパンにしましょうか。揚げ物や高脂質の物ばかりを食べすぎると健康に悪いので」

「うむ。ゼルハイト卿に任せる」


俺の提案に青年は頷いて一任するように言うので、俺は最初の一品として侯爵のおっさんに出した食パンのサンドイッチを出す事に。


「…こちら、本当は一口大に切って突き出しとして出すものなんですが…今日は一品として提供いたします」

「ほう、あの一口サンドか。…やはり美味いな…しかし…切らずにそのまま食べると、ボリュームが、意外に…」


…スライスした食パンに生ハム、スライスチーズ、トマトの輪切り、レタスを乗せ…


マヨネーズをかけた後に更にまた生ハム、トマトの輪切りを乗せて上からもう一枚のスライスした食パンで挟んだサンドイッチを出すと青年は素手で掴んでかぶりつき、ガブガブ食べながら感想を呟く。


「次にガーリックトーストとトマトのコンソメゼリーを」

「…コレは…匂いも味も尖っているな。しかし美味い。このゼリーもアッサリとしていてとても良く合う」

「ありがとうございます」


二つのサンドイッチが無くなったところで男向けの料理を出すと青年は匂いを嗅いで一口食べた後に感想を言い、スプーンでゼリーを食べて満足そうな様子を見せる。
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