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青年期 278

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…昼食後。


「…リデック居るか?」

「おう。…なんかあったか?」


ドアがノックされたと思えば多分クラスメイトであろう確認の仕方をされ、許可を出すと二人が部屋に入って来るので用件を問う。


「あー…俺らそろそろ帰還する事になってな」

「だから別れの挨拶に来たってワケだ」


クラスメイトの一人が報告するように言うともう一人が会いに来た理由を話す。


「はあ?なんだその今生の別れみたいなセリフ…別に戦場に行くわけでもねーのに」

「いや、だって今の時勢だと次に再会するのはいつになるか分かんねぇし」

「その時にみんな生きてるかも分からんし」

「いや頑張って鍛えて生き残れよ。死ぬ気で鍛錬すれば強くなれるだろ」


俺が縁起悪いな…と思いながら言うとクラスメイト二人は微妙にバツの悪そうな顔をしながら返し、俺はツッコむように発破を掛ける。


「まあ頑張るけどよ…」

「もしなんかあったりやべーと思ったら俺の領に来い。ローズナーやガウなら安全だし、実力次第では部隊の隊長とか任せられるし」

「「いいのか!?」」


微妙な顔のままなんとも言えない感じで呟くクラスメイトに再就職先を斡旋するように提案すると二人とも食いついた。


「俺のところの軍は完全実力主義だから能力や適性があれば直ぐに出世できるぜ?元々俺自身が腕っぷしで成り上がってるからな」

「…そうかぁ…分かった。考えとく」

「確かにリデックのところだと他のトコとは違いそうだ…」

「他のクラスメイトとかにも会ったら言っといて。知り合いや友達がつまらん事で死ぬと面白くねぇし」

「「分かった!」」


俺の説明にクラスメイト二人は心が揺れてるかのように呟き、伝言をお願いすると二人の返事が被る。


「ああ、あとコレ」

「…なんだコレ?…お菓子?」

「…クッキーか?」


俺がふと思い出して弟が作ったクッキーの余りが入った袋を取り出してテーブルの上に置くと、クラスメイトの二人は不思議そうに見た後に中身を確認して尋ねた。


「弟が作ったやつで悪いけど…今から帰るんだろ?オヤツとして持ってけ」

「弟って…エーデル・ゼルハイト?料理とかすんのか?」

「へー…あのエーデル・ゼルハイトがねぇ…ん?もしかして…お前、失敗作だから俺らに食わそうってんじゃないだろうな?この量だと結構な量だぞ」


最初に俺の手作りじゃない事を前置きして言うとクラスメイトの一人は意外そうに驚き、もう一人も意外そうに呟いた後に何かに閃いたように疑って聞いて来る。


「ははは、まあソコは食べてのお楽しみって事で。要らんなら返せ」

「俺は貰うぞ。多少だったら失敗作でも問題ねぇ」

「…まあリデックが食べられないモノを渡すわけがないか…じゃあありがたく貰っておく」


俺は笑って曖昧に誤魔化すように返した後に返却を求めるとクラスメイトの一人が受け取る事を告げ、もう一人もさっきのは冗談だったと示すように呟いて受け取った。


「…団長、ちょっといいかい?」

「ん?」

「じゃあ俺達はこれで」

「じゃあな」

「ああ」


女性がドアをノックして部屋に入って来るとクラスメイトの二人は手を振って部屋から出て行く。


「…知り合いかい?」

「学生時代のクラスメイト。まあ友達かな」


卒業してから初めて会ったけど…と、俺は女性の疑問に答える。


「へぇ…」

「で?何かあった?」

「ああ、馬が新しく5頭産まれたらしくてね。その内の一頭が珍しく真っ白い色をしてるんだって」

「へー、アルビノかなんかかな?」


意外そうに呟く女性に用件を尋ねると特に緊急性の無い報告だったが、確かにここら辺では白い馬は珍しいので俺は意外に思いながら予想した。


「で。珍しいから団長に名前を付けて欲しい…って事になってね」

「馬の名前なんてどうでも良くない?適当に白馬とか雪白とか白毛に関する名前付けたら?」

「そんな適当な…でも『雪白』は良いかもしれない」


女性の提案に俺が適当な感じで返すと呆れたように呟きながら挙げた名前の一つを取り上げる。


「どうせ俺は駄馬でも名馬でもなに乗っても変わらないからな…」

「まああんたからしたらただの移動手段でしかないからね…しかも敵の馬を奪って補充も簡単に出来るときたもんだ」


結局変化魔法使えば素体の馬の質は問わない…的な事を思いながら呟くと女性は微妙な顔をしながら理解を示すように返す。


「なんなら変化魔法を使えば俺自身が馬になれるから移動手段としても必要無いっていう」

「…ああもうめんどくさい…とりあえず白い仔馬には『雪白』って名前を付けるよ?」

「ん。それでお願い」


俺がボケるように言うと女性はため息を吐いて話を終わらせるように確認し、俺は了承して任せた。


「…そう言えばさっきの友達に何かあげてなかったかい?」

「ああ、エーデルが作ったクッキーをあげた。そろそろまた貰えそうだから」

「あんたの弟さんって噂では忙しいって聞くけど意外と料理する時間はあるんだね」

「時間の使い方が上手い。俺が教えたはずなのに俺はソレを実践し切れてないんだよね…悲しい事に」


部屋を出て行く前の女性のふとした疑問に俺が教えると女性は意外そうに返し、俺は弟を褒めるように言った後に反省するように呟いてため息を吐く。


「ははっ、なんだったか…ほら、あんたが前言ってた…言い易し行い難し、ってやつかい?」

「『言うは易し行うは難し』だね」

「そうそれ」

「…俺には必要無い事とはいえ耳が痛い…」


女性が笑いながら弄るように俺が前言ったことわざを思い出そうとして曖昧な感じで言い、俺が訂正すると指を差して肯定するので俺はまたしてもため息を吐いて呟いた。
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